RimoリリースでTVが放送波受信機ではなくなる日がまた少し近づ...きますように

アナウンスどおり、はてなの新サービスRimo(リィモ)がリリースされた。Webサービス企画屋系(?)ブロガーとして取り上げないわけにはいかないのだが、複雑な感情が交錯してなかなか筆ならぬキーボードを取れなかった。まぁ雑誌の特集を書いているわけでもないので、思ったことを全てブチまけてみることにしたい。

キャズムを超えるか?大きなパイが見込める『リビング向け脱力系Web2.0

「やっぱ今やるならそれだよなぁ...」というのがまず感じた感想だ。Wii向けだろうがacTVila向け勝手サイトだろうが、とにかくリビングでまたーりと見れる脱力系サービスは、密かに今あつい。受身的Web2.0, あるいは脱力系Web2.0とでも言おうか、集合知(Wisdom of Crowds)によってピックアップされた密度の濃いコンテンツを非能動的ユーザーや、能動的ユーザーの非能動的時間(場所)を対象として届けるサービスである。

とまぁそんなご時世の中、YouTubeの人気動画をだだ流しするサービスときた。詰め将棋を確実に教科書通りに打ってきた、といった感。BlogやSNSと違って受身なユーザー層を想定しているため、広くあまねく受け入れられる可能性がある。ネット接続されたWiiの台数、はてなのプロモーション能力などを考えるといきなり何百万人というユーザを抱えられるサービスにはなりえないだろうが、ブレークした場合は相当パイがでかい。acTVila対応TVのFlash対応モデルが出たり、ブラウザ搭載Apple TVもどきが出てきたりすると、なかなか面白いことになるかもしれない。

「TV局から嫌われたくない企業は参入できない」という参入障壁

複雑な心境なのは権利関係。といっても『はてな著作権違反を幇助している!』なんて声高に叫んで局側に味方したいわけではない。家電メーカーでAV機器まわり、ネットサービスまわりを見ている人間は誰もが『ああウチの家電にYouTubeの映像出せたらなぁ』と思っている。それでもYouTube対応TVなんてのが出てこないのは局との関係があるからだ。

地デジ、BS、CSに加えてYouTubeをチャンネル単位でブラウズできて、EPGを表示するとこんな画面が出てくる。あるいは今日視聴した番組に関連する動画をYouTubeから引っ張ってきて見せるTVや、録画番組の中でYouTubeで話題になっているものを教えてくれるDVDレコーダーなど。色んな面白そうなものを企画しては『ありえねー(w』と潰されている家電メーカーの人間としては、ひじょーに悔しいというかうらやましいというか、いいねぇベンチャーさんは楽しそうで...orz  とチョイ凹みモードに入ってしまうのである。


が、はてなにとってはこれは大変好都合なのだろう。家電メーカーは勿論、YahooのようなWebサービス大手も当分参入できないためだ*1。Webベンチャー各社のなかでも、サイバーエージェントなど自社で動画サービスを立ち上げてしまっているところもこれまた立ち位置が難しく、YouTubeを活用、というわけには行かない。唯一最大にして最強のライバルがいるとすれば、Google御大(YouTube本体)がオフィシャルにTV向けサービスを提供してくる、という可能性ぐらい。さすがにこれをやられるとひとたまりもないだろうが、当面はライバルの居ない領域に居座っていられることは間違いない。

リスキーさとはてなリスクヘッジ

とはいえやっぱりリスキーなサービスであることは確かだ。あくまでYouTubeビデオを流しているだけなので、違法にコピーされた映像が流れたとしてもはてな社に責はない...というのが仮に法務的に筋の通った話だとしても、はてなは違法サイトの片棒を担いでいる、なんて風評が流布されないとも限らない。そういった意味では「はてな」ブランドを捨てて「Rimo」としたことは彼らなりのリスクヘッジ手法なのかもしれない。まぁ、はてなブランドを外した主たる目的は、海外サービス展開にあたって日本語のサービス名はないだろう、というのとWiiでのURL入力しやすさを考えてのことではあると思うが。

いっそApple TVならぬはてなTV

とはいえYouTubeのコンテンツ再生用フロントエンドだけではなかなかマネタイズは難しい。ここはひとつ、専用再生ハードウェアなんて商売に手を出してみるのはどうだろう。Gyaoみたいに再生専用ハードウェアにしちゃうとさすがに誰も手を出さないだろうけれど、IOデータ,バッファローあたりと組んでAvel Link PlayerやLink Theaterの1機能としてAdd onするなら、技術的にも十分に可能だろうし、コスト的にも数千円のUPで済んでユーザ視点から見ても買いやすい。

そりゃぁApple TVが対応してくれるのがイチバンだろうが、いくらエリック・シュミットが同社取締役になったからといえどもさすがに無理だろう。

RimoのUIで足りないものはEPGに相当する画面

最後にRimoを使い込んだ感想&家電メーカー的改善策提案を少し。Blogで『チャンネル選択とNEXTボタンだけの家電的操作』なんて言ってる人たちもいるが、いまどきのTVでEPGが付いてないものなんて存在しない。EPGではないが見れる動画がサムネイル表示でずらーと並ぶコンテンツ一覧表示・選択画面は至急追加すべきだろう。次にどんな動画が出てくるかわくわくどきどき待ってくれるユーザの数は、一覧から選べなくてうぜー!と言って使うのをやめてしまうユーザーの数より明らかに少ないはずだ。

あとは関連動画検索...というか関連動画一覧画面。ざーっと流し見してて、たとえば「はてなの拳 第10話」という面白い動画を見つけたとき、1話〜9話はたまた11話をリストアップして簡単に連続視聴するためのUIがほしくなる。『シリーズ検索』といったボタンを用意し、映像タイトルの行頭から最初のスペースまでを検索キューとしてYouTubeに投げ、結果をサムネイル表示するぐらいのことはしてほしい。さらに家電的というかDVDレコーダー的に振るならば『このタイトルを含む動画が以後UploadされたらMyVideoに自動的に登録する』ぐらいまでは用意してほしいものだ。そんな面倒臭いのは家電的じゃない、といわれるかもしれないが、昨今の家電(DVDレコーダー)はもっとややこしいです、はい。

それでもシリーズ録画機能,EPGといったところは必須機能として広く活用されていることを考えると、前述の機能追加はリビングルームで受け入れられないことは決してないはずだ。




まぁなんだ、色々書いたがRimoには期待している。いずれ放送局の利権なぞ薄れ、TVはテレビ放送受信機ではなくネットやゲームを含めた多様なコンテンツの再生・表示デバイスとなる*2。当然だが放送局はその日を可能な限り遅らせようとしている。残念ながら大手家電メーカーは局に組み敷かれて身動きができない状態だ。X-Dayを1日でも早く実現するためには、YouTubeGoogleといった海外資本とはてなのようなベンチャーにも頑張っていただきたいのである。

*1:EPGデータを用いたサービスなどを提供している為

*2:その中でも大きな位置を放送コンテンツの受信・再生が占めることは間違いないだろうが