ハードウェア・スタートアップをが陥りがちな罠は『作りはじめてから、練って練ってよりよいものにしようとする』こと

スタートアップにおいてプロダクトのアイディアは練って練って練りすぎてペースト状になるまで練ってからさらに練って、というやりかたが推奨されることが多い。特にソフト業界では、プロトを作っては壊し作っては壊しで練り上げる手法が推奨されがち。ハードウェア・スタートアップのみなさんはこのメッセージを悪い方向で捉えている人が結構いるなーと感じる。

ハードウェアはね、そんなことをやっていたら5年経ってもモノが出ないよ....。練るのは作り始める前まで。そこまでは好きなだけ練ればいいと思うが、練っている間に同じものを作られても知らないよ、と。逆に、ハードウェア初級者はプロトを作ってみるまで何が出来上がってくるかイメージできないことが多く、これを冒頭のメディアや講演会でよく踊るフレーズ『練りまくれ』が悪い意味で相乗した効果を出してしまって、モノが出ない。

言葉は悪いが『割り切り能力』がハードウェアスタートアップの経営者には求められる。本当にみんなが思っている以上にハードウェア、とくに小型デジタルデバイスの設計・製造は簡単になった。その結果何が起きるかというと、さっさとやらないと誰かがすぐにやっちゃうよ状態になっているのが今。簡単になった=コストがかからなくなった(あくまで以前と比較して)=ぱっと作ってダメなら次モデルを作ればいいって所まで来ているので、まずは割りきって課題という課題をバッサバッサと割りきって、触れるモノを世に出してから考えれば良い。

ゴールが階段の100段目にある、ということが明確にわかっているケースはハードウェアスタートアップにおいて稀だ。まぁこれはソフトもそうかもしれないが、量産ハードを作ったことがある人しか、いまあなたがいるのが45段目なのか55段目なのか、じつはまだ30段目なのかはわからない。もっともこれは経験者に見てもらえば30分のヒアリングでいまどこかは教えてもらえるのだが。



まぁ何を言いたいのかというと、あれこれ試作しては練りなおしてまた試作して仕様追加して、なんてやってると死ぬよ、ということ。ターゲット価格と合わないなら仕様をバッサリ落とすとか、あーこれも追加したいなーって思ってもバッサリ『次モデルでやろう!』と割り切ったり、そういうのが秒単位のジャッジでできるチームは伸びるよなーといつも思って見ている。

こだわりは大事だけど、モノを作り始めてからやっていると間に合わないよ、という話。



※これを読んでいるCerevo社のみんなはあんまり気にしなくていいです。なぜなら何度もモノを作っているチームなので、どこまでなら『走りながら練れる』か?を熟知しているから。上で書いたのはハードウェアスタートアップ1年生(初回製品量産)の方における話です。