「TV2.0」第4回テレビとネットの近未来カンファレンスに思う、テレビとネットを隔てるキャズム
「TV2.0」カンファレンス第4回に行ってきた。
悪天候で飛行機が遅れて冒頭20分は聞けなかったのだが、その後の内容を要約すると...
- 個人が勝手にメタデータ作る
- それってオフィシャルメタデータより親近感があって購買に繋がる
- でもTV業界は勝手データやそれにより広がる世界(CGM等)には興味なし
- ・・・でもでも、やっぱりCGMとTVが融合したら何か出来るんじゃね?
という感じ。結論を求める方向性の会ではなかったこともあり、いくつか具体例など出しつつ「さぁこの先どうなるんでしょう、乞うご期待」といった終わり方。
さて、ここからは感想。
梅田さんの言葉を借りると「ネットの向こう側」ではいろんなサービスがあり、それらを用いるユーザがたくさんのメタデータを紡ぎだし、彼ら自身のために活用する、というエコシステムは現状うまく回りだしつつあると思う。これは事実として受け止めねばなるまい。
カンファレンスの席上では、このシステムから生まれ来るデータをどう活用してマスメディア(特にTV)のありかたを変えてゆくか? が議論されたわけだが、それって大切なワンステップをすっ飛ばした議論ではないだろうか。
抜けてると思ったのは 「ネットの向こう側」だけで回っているエコシステムが、本当に一般人まで巻き込んだエコシステムになり得ますか? そうなるために越えなければいけないハードルは何ですか? という議論のステップだ。キャズムを越えか否かは一番大事なフェーズである。え? Blogとかってもうキャズム越えてるんじゃない?って? 越えてませんよ、全国民を分母で見たら。これは壇上で放送業界向けコンサルタント(プラットイーズの中のひと)も言っていた。「マスコミってのは文字通りマスが対象なので、母数のケタが違う」と。まさしく分母は1億人なのである。何百万というブログがあっても、やっぱりキャズム理論で言われていたような16%の壁は遠いのである。
本題に戻ろう。つまるところ、大事な、それでいてとっても難しいステップをどうこなすかではなく、
「マスメディアが『あちら側』を信じて考え方なり仕組みなりを変えてくれればそのハードルを越えられます」
という持論をベースにその先の話をしているように思えてなんか頷けなかったのだ。勿論それができればすんなりとキャズムを越えて受け入れられるかもしれない。だがそれって団塊の世代のオヤジ達に「電話の時代じゃないんです、電話するならSNSに書け」って言ってるぐらい難しいこと。
放送局ではGRPを重視する。これが流通の基準。
放送局の営業担当者の責任分解点はGRPを確保した時点まで。
局、広告代理店、ユーザがぐるになって作ってきたルールでそう簡単には変わらない
とは、既出のプラットイーズの中の人が語ってくれた放送業界の内情。だから、私としては放送局(とか広告代理店)を変えるんじゃなくて、彼らが変わらないと負け組みになってしまうような仕組みをいかに考えて、作って、回していくかが重要だと思うわけです。
そういう意味では、会の主催者側である「メタキャスト社」を個人的に注目してきた。ただ、彼らも攻めあぐねているように思うのは、やっぱり「PCを使いこなせるネットユーザ」と「そうでないテレビ視聴者」との間に広がるキャズムがあまりに広く、深いからではあるまいか。
もしかすると、なんらかのハードウェアを絡めて攻めるしか、このキャズムは埋められないかもしれない。メタキャスト社やはてな社のようなメタデータをWeb2.0的なアプローチでネットの向こう側の人たちから集め、それをうまく使ってこちら側しか見ていない人たちの生活を変えて行くのだ。Web2.0なるBuzzwordに踊らされるわけではないが、面白い物を作ればそれが既存の販売流通チャネルで扱っていないものであっても、驚異的なスピードで口コミならぬネットコミを通じて広がる時代だ。何もメタキャスト社に何百億円という設備投資をして液晶テレビを自社生産せよと言っているのではない。ちょっとした小物ハードウェアとWeb2.0サービスを組み合わせることで、キャズムを越えるための光が見えてくるんじゃなかろうかと思うのだ。
てなわけでどうですか、ネットのメタデータをうまいこと活用して既存TVや既存DVDレコーダーに頭出し指令を送ったり、見てるTVの情報がネットから落ちてくるようなMFD付きテレビブログリモコンとかそんなあたりから攻めてはみませんか、メタキャストさん。
※まぁこんな例は橋本さんの言葉を借りると"ベタ"なわけですが...。本業の関係上Blogでは「その手があったか!」という"ネタ"は出せないわけで(w あしからず
あーあと、個人的にめちゃくちゃ残念だったのは、楽しみにしていた橋本さんのトークネタが、先日行われたオーバルリンクのカンファレンスで使われた物と7割がた*1同じ内容だったこと。CNET渡辺さんが絶賛していたので事前に読んでいただけに、残念だった。
次回は新ネタを期待したい。
*1:うろ覚えだが、P1〜P7(厳密にはP2は口頭説明),P11,P12,P14が使われていた模様