「知の世界の再構成」が為される「ブログと総表現社会」で人類はボーグ化する!?

遅ればせながら梅田さんのWeb進化論を読んだ。個人的にはやりモノは嫌いだ。あれがいい、これもいい、こんな楽しいモノもあるんだぜ、と友人知人に教えて回ることを人生の楽しみにしている私としては、常にイノベーターかアーリーアドプター*1であることを望んでいるのだろう。

「Web進化論」については梅田さんの個人的ネットワークだけでもイノベーター層の領域を補って余りあり、さらにそこに数え切れないほどのアルファブロガーが含まれていたことで、アーリーアドプターって誰よ?という程のスタートダッシュを決めてしまった。結果、買うに買えなくなってしまったのである。発売日に買って、2,3日後に布教活動を開始したところでイノベーターはおろかアーリーアドプターの称号すら貰えない書籍。きちんとアンテナを張ってる友人知人に教えたところで「ああ最近ネットで話題のアレね」といわれてしまうのが落ちである。

でもまぁ、同業者やBloggerの皆様とのコミュニケーションの都合上読まないわけにもいかず、RTCカンファレンスVol.10の知らせもあって読むことにした。

そして「Web進化論」を読み終えて思ったことは、「(検索やソシアルサービスによる)知の世界の再構成」が為される「ブログと総表現社会」がより一般に浸透すれば、人類はボーグと化してしまうのではないか、という事。*2

ボーグ(Borg)は、スタートレックシリーズに登場する、機械生命体の集合体(初出は、新スタートレック)。ボーグに所属する生命体のことを「ドローン」と呼ぶ。ドローンには個人という概念がなく、集合体という共有意識を持ち、その一部品として扱われる。

<中略>

同化という特殊な方法で仲間を増やす。同化とはヒューマノイドの体内に、ドローンが「ナノプローブ」という極小機械を注入する方法である。同化されたヒューマノイドはすぐに全身にインプラントが出現し、個人という意識がなくなり、集合体の一部となる。集合体には、全体の支配者として女王が存在しており、各戦艦には独立した女王が存在している様に見えるが、各女王は次元を超越して存在する一人の支配者の影に過ぎない。

<中略>

ボーグは同化していない種族を見つけると、すぐに同化する手段に出る。彼らが同化をする理由は、非の打ち所のない完全なる生命体を目指しているからであり、同化により新たなテクノロジーを吸収していく。 ただし文明のレベルが高くない種族を無視することもある。


日本語版Wikipedia ボーグ より

では、某Blogなどをネタによく行われている単語の入れ替えをしてみよう。

ボーグ(Borg)は、総表現社会に登場する、人間の集合体。ボーグに所属する生命体のことを「ドローン」と呼ぶ。ドローンには個人という概念がなく、集合体という共有意識を持ち、その一部品として扱われる。

<中略>

同化という特殊な方法で仲間を増やす。同化とはソシアルブックマークサービスやソシアルネットワークサービスを用いてヒューマノイド脳内に「このコンテンツは良い」「この考え方は悪だ」という暗示を吹き込む方法である。同化されたヒューマノイドはすぐに脳内に固定概念が出現し、個人という意識がなくなり、集合体の一部となる。集合体には、全体の支配者としてアルファブロガーが存在しており、各戦艦には独立したアルファブロガーが存在している様に見えるが、各アルファブロガーは次元を超越して存在する一人の支配者の影に過ぎない。

<中略>

ボーグは同化していない種族を見つけると、すぐに同化する手段に出る。彼らが同化をする理由は、ビジネスや趣味において話題を共有できる集合体を目指しているからであり、同化により新たな"知"を吸収していく。 ただし知識のレベルが高くないと思う種族を無視することもある。


((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

こんなベタベタな顔文字を使うBlogにはしまいと思っていたのだが...ちょっと方向性が変わってしまったようなので修正して真面目なネットコミュニティ論に移行。

「(検索やソシアルサービスによる)知の世界の再構成」が為される「ブログと総表現社会」が、一部のネット先進者層や、分別あるできた人によって使われるうちは、このスキームで利用者全体が恩恵を受けることができるだろう。まさに今この瞬間がそんな状態にあると思う。「知識のレベルが高くないと思う」種族を取り込もうとしない辺りも*3。そして、利用していない人たちを知識面で引き離して行くことになるだろう。ディジタルデバイドの典型である。

問題はその先だ。

一億人もの国民の端々までWeb2.0的なサービスがいきわたり、全ての国民が「ネット上の集団の意見」に耳を傾けなければ怖くて行動できないような、そんな世界が作られてしまったらどうなるか。遊びに行くにも、物を買うにも、結婚をするにも、「ネットのみんな」の意見を聞かなければ行動できないような世界...。あり得ない!と笑うなかれ。「ネットのみんな」を「周りの誰か」に置き換えれば、貴方の周りにも同様に集団の意見がなければ選択が出来ない人は幾人もいるはずだ。そんな人たちにWeb2.0サービスを与えたらどうなるか。
今日のマスメディアに相当するような個人が群集の心理を統制し、場合によっては彼らから「知識のレベルが高くないと思う」種族とみなされてしまうのは、今日ネットを活用している先駆者達かもしれない。そして...

『自分で考える』事なく人生を生きる人たちの大量増加

嫌な響きだ。誰かの思考を知る事で「うんうんそうだよね」しか言えなくなる。「で、貴方はどう考えるの?」に対する答えを持てなくなるのかもしれない。

総表現社会の特定ノードにおける総意」が、誰かしらの手によって統制されるようなことがもし起きてしまえば(権力によるものか、金によるものか、はたまた個人の意思によるものかはさておき)、従来型の社会とは比べ物にならないほど、群集の意思統一化が急速に進み、単一思考国家状態へととんでもないスピードでシフトしかねない。何となく、ナチスドイツの再来を脳裏に描いてしまう。

攻殻機動隊Stand alone Complex 2nd GIGなるアニメーション作品が、近い世界を描いている。作中では、ほぼ全ての国民が、脳内に埋め込まれたチップで常時ネットコミュニティと意思共有する。ネットの中では、集団の指導者的立場の男が国民の思想を巧みに誘導する。また、彼の声がネットコミュニティを通じて聞こえなくなると、群集が混乱するシーンなども登場する。やれ脳内チップだ、ネットダイブだ、何てSF的なものを例に出すのは極端と仰るかもしれないが、既に一部のネット依存症の人々にとっては、攻殻機動隊の世界観に近い所までネットとリアルが融合してしまっていると言っても過言ではない。作品の世界観に興味がある方はこちらのログブックを買ってみるのもいいだろう↓

攻殻機動隊S.A.C.2nd GIG Official Log 1 [DVD]
攻殻機動隊S.A.C.2nd GIG Official Log 2 [DVD]

個人的には、Webサービスによって全ての人がネットコミュニティと融合し、趣味嗜好・思想のロングテール化、ロングテールの尾っぽの部分においての今までになかったような交流が起こってほしいと思っている。そしてあわよくば、背中がどんどん低くなり、尾っぽ全体のかさ上げが起き、マスコミュニケーションなる概念の崩壊を起こさせたい。そうすればもっと面白い会社が沢山あらわれ、面白いビジネスがどんどん興ってくれると思うのだ*4

だが、携帯電話サービスとWeb2.0の融合を考えるにつけ、しっぽがどんどん薄くなって、背中がどんどん高くなる、そんな後押しをしているようにも思えてきた。何か良いブレークスルーはないものか...。



みんなと同じじゃ面白くない!
みんなと同じじゃカッコ悪い!
みんなと違うことがステイタス!


そんな思想を群集に植えつけるようなサービスを考えたい。でも、大衆は「おんなじだけどちょっと違う」がステイタスなんだよなぁ...。

*1:英語の発音が得意でないなら、アダプターよりアドプターと発音したほうが米国人には通じやすい。カンパニーよりコンパニーが通じやすいのといっしょ

*2:英語が出来るひとは英語版WikipediaのBorg解説ページへどうぞ。日本語版の100倍詳しいし画像もある

*3:はてなブックマークで[これはひどい]タグを付けている人達、あなたですよ

*4:米国はこのあたりがとっても強い