RTCカンファレンス Vol.10 アフターレポート

詳細は「休むに似たり」で議事録が上がっているし、後日PODCASTも公開されるはずなのでそちらで。PODCASTも公開されていますのでそちらで。

このBlogも結構見に来てくださる方が増えてきたようなので、まじめに家電メーカーの人間として面白そうなところをPickUpしてみたい。

WebサービスAPI公開はコンセントのようなもの

質疑応答にて質問者から出たコメント。質問の意図は「API公開しておいて後からそのAPI使うのは有料化します、ってビジネスをされたら怖くないか?」という物だったが、このAPI公開=コンセントってのは非常に的を得てるなと思う次第。そして「API公開してどう儲けるかについて確固たるモデルはまだ確立されていない。試行錯誤の状態」なのではないかとの議論もあった。

家電業界にあてはめてみると、「規格の標準化」に近い議論だなぁとふと感じた次第。何でもかんでも独自仕様を作るSONYApple、標準化で攻めるMicrosoft,TOSHIBA。Openにして儲けるには確固たる特許やデバイスなどが無ければ難しいし、Closedにしておくとそもそも普及しないしいつだれがOpen攻勢をかけてくるかわからない。どちらが儲かるか、という結論はハードウェア界でもケースバイケースだ。

ただ、ハードウェア界と違って、アジア各国による低コスト攻めに遭いにくい、特許によるビジネスが成り立ちにくいという特性があるため、Web界でのOpen化における勝負所というのは、だいたい決まってきているように思う。

  • 確固たる利益構造を確立した別サービスがあり、Open化したサービスがその確立されたサービスへ繋ぎこめるかどうか(Google Maps)
  • 物販・オンラインゲーム等直接ユーザからお金をもらうサービスかどうか(Amazon)

実質コレぐらいではなかろうか。
うーん、じゃぁ次は...ネット銀行のOpenAPI化かっ!?
怖ッ!

機動戦士νインターネット3.0 〜逆襲のこちら側〜

http://ceonews.jp/archives/2006/03/rtcvol10.html
主催の近江商人JINさんも取り上げておられるが、グループディスカッションの席で参加者から「こちら側の逆襲」がそろそろあるのではないか、という意見が出た。2.0論はバブル化しており、はじけた後にこちら側の逆襲があるのか、あるとしたらどんな逆襲なのか。

私個人としては「そんなものはない」という意見。

Web2.0の盛り上がり方はバブルかもしれないが、潮流としてはまだまだはしりの状態。小康化することはあっても消えることはなく、バブルが弾けたとすれば水面下でどんどんと侵食して行き、ある日当たり前になっていることだろう。本当の意味での逆襲がもしあるとすれば、行政・司法による介入というイレギュラーなケースぐらいではなかろうか。


だが、こちら側がWeb2.0の流れを巧みに取り入れ、今Web2.0企業と言われている企業から利益やユーザを奪い取ってしまうことはあり得る。でもこれって「こちら側の逆襲」ではなく、「こちら側だった企業があちら側へ攻め入って来る」事だと思うのだ。そうなった時点で戦場はこちらでもあちらでもなくなり、こちら側・あちら側という議論そのものが意味をなさなくなる。Yahooがテレビをつくり、家電メーカーのテレビがネットと融合する。仁義無き戦いが今始まろうとしている事だけは確かだ。

戦いの肝は「集合知のコントロール

Web進化論で一番興味を持った部分は?という会場全体への問いのなかで、意外なほど沢山の参加者が、集合知を上げた。梅田さんの本を読んでいても、Web2.0企業を研究していても、確かに全ての概念の根底には「多数の参加」「群集の英知」「協力して何かを為す」といった要素が存在している。みんながWebを作るからこそ検索の意味があり、みんなで作るからこそオープンソースがなりたつ。みんなでコミュニケートするからSNSが成立し、みんなで買うから物販のロングテールが成り立ち、みんなが見るからAdSenceが活きる。

「みんな」をどうコントロールするか、「みんな」の力をいかに引き出すか。

この点を抑えられないと、ビジネスが成り立たない。そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。「みんな」を良く知る大手ポータルサイトや大手オンラインゲームベンダー、そしてマスメディア。彼らはこの先数年間でとっても強いポジションに移動できる可能性を秘めているのではないか。

そして私が属する家電メーカーという業種は、個々のユーザとの対話が大変に少ない。危機感を持って行かないと、あっというまに「メーカー」から「ベンダー」へと転がり落ちてしまうかもしれない。

そして、把握できていそうで出来ていないように思う、携帯キャリアさん。
うかうかしていると土管屋に逆戻りしてしまうから、気をつけろ!(長井秀和風に)