ソフトバンクのボーダフォン買収で端末メーカーへの影響はあるか?

先日のEmerging Technology研究会の席上にて、質疑応答時にモデレーターの渡辺氏が振られていた話題がこれ。立場上、会でのディスカッションは遠慮させていただいたが、Blogで書きましょうぞ、というわけ。もし期待されていた方がおられましたら、先週末に書きますと明言しておきながら遅くなりましたことお詫び申し上げます。

海外メーカー端末による日本市場席巻はありえない

ソフトバンク(Vodafone)がサムソンやLG,ノキアモトローラといった海外製端末をグローバルに採用してコストダウンをはかり、低価格を武器に国内市場のミッドレンジ端末市場を席巻する、というシナリオは確かに議論の題材としては面白い。だが、Vodafoneも馬鹿じゃないのだから、Softbank傘下にならずとも彼らはこの選択肢が取れたはずだ。現に初代Vodafone3G端末はノキアモトローラの端末をいくつもラインナップに加え、UIを世界統一にしようと意気込んだ。


だが、ET研の席上でも話題になっていたとおり、日本市場は携帯電話ビジネスにおいて最先端を突っ走るテストベッド市場であり、市場が求める端末のクオリティはグローバルで展開されているそれとは明らかに異なる。非接触ICカードワンセグ放送といったドメスティックな専用機能の実装が必要なことは勿論、キーレスポンス、UI設計に至るまで、全てに高いレベルが要求されるのである。考えてもみてほしい。公共交通機関の中で、居眠りをしていない人のうち7割が携帯電話でメール打ち or JAVAゲームをし続ける国など、世界中どこをさがしてもありはしないのだから。

結果Vodafoneの試みは失敗し、ノキア製端末が1機種、マニア向け・ビジネス向けに残るのみとなったのは皆様ご承知のとおり。


シャープ、三洋、NEC、松下といった携帯端末メーカーは、海外市場でことごとく惨敗しており、キャリアの庇護を受け続けて競争力を失った*1彼ら国内メーカーは、当分の間世界市場での競争を戦い抜くことはできないだろう。また、海外メーカー製端末がグローバル展開によるコストメリットを既に受けつつあることも事実だ。

だが、「日本の携帯端末メーカーが海外での競争力を失った」という言葉は一面を取れば正しいが、逆の立場から見れば「海外の携帯メーカーは日本での競争力を持っていない」ことも、これまた正しいのである。海外製携帯電話の参入障壁は、日本の携帯電話ユーザーが無意識に作り出した壁であるとも言えるだろう。

崩し所があるとすればブラウザ周りか?

ソフトバンクの参戦により、大きく変わりそうな予感がするのはYahooのコンテンツがどういう形で取り込まれていくか、この1点に尽きるのではないだろうか。

そんな中、HTMLブラウザ周りについては国内端末メーカーもノウハウを持っておらず、DoCoMo端末はほぼ全てNetFrontau端末はOpenwaveをただただ言われるがままに搭載しているという状態だ。


ソフトバンクによるYahooコンテンツの提供により、携帯電話を使ってよりWebを活用するユーザが増えるのであれば、ブラウザ及びブラウジング用UIまわりの実装や特許で差別化できた端末メーカーが1歩抜きん出る可能性は否定できない。また、日本の家電メーカーだからといって1歩も2歩も先を行っている領域ではないため、このあたりを橋頭堡に海外メーカーが攻め入る構図も無くは無いが、現実味は薄いだろう。

*1:メーカー毎の意図的な対象顧客層分けによる住み分け強要&自ら仕様決めが出来ない環境に起因する開発力の低下