ニッポンでGoogleは一般化するか? 〜その2〜

http://d.hatena.ne.jp/wa-ren/20060603/p1

ニッポンでGoogleは一般化するか?なんてタイトルでエントリを書いたものの、エントリの何処にも『ニッポン』が出てこなかったこのていたらく...orz で、何でニッポンと限定したかというと、日本人って今もらってる情報で満足しちゃってる人、多くない?と思うからなのだ。これは全くの個人的感覚であり何ら裏付けるデータはないのだが、疑うことを知らないというか、皆で同じような情報を共有していたらそれ以上を求めないというか、体質的にロングテールの端っこのほうに興味が無いというか... 何といったらいいものかわからないが、一言でいえば

別にYahooでいいじゃん、不自由しないよ?

というのがニッポンのネットユーザ多数派の意見なのではないかと。勿論技術的にはGoogleのほうが検索でもMAPでも先を行っているとはいえ、日本人は能動的に情報収集する世界とは縁遠いように感じるのである。まったくの仮説だが、もしかすると日本人は少数の高品質なコンテンツを受動的に消費することに慣れきってしまっており、自ら望みのコンテンツを見つけ出して能動的に消費してやろうという探究心に欠けるのではないだろうか。

テレビを例にとると、米国のように安い*1コンテンツを多チャンネルで沢山送り込むスタイルと違い、お金のかかった高品質なコンテンツを両手の指で数えられるほどのチャンネルだけに限定された空間で放送、共有されるのが日本のスタイル。選択の対象は狭まり、能動的に選ぼうという意思が鍛えられることはない。音楽シーンにおいても同じようなことが言える。どのラジオ局も同じような局を流し、何処へ行っても聞こえてくる曲はチャート上位のJ-POPである。この場では、これらが悪いことであるとは言わない。だが、高品質だが多様性のないコンテンツの消費に慣れ切ってしまうと探究心が薄れ、YahooやMSNが返してくる検索結果だけで十分に満足してしまうのではないか? と思った次第である。国民全体の情報に対する探究心を1.3倍に向上させる、なんてことが仮にできたとしたら、Googleはズガンとシェアを伸ばしてくるかもしれないが、そんなことは夢物語でしかない。そう考えて行くと、サーチエンジンストラテジックカンファレンス2006でYahooJapanの井上検索事業部長のキーノートスピーチが非常にインパクトのあるものとして思い起こされる。

YahooJapanはソーシャルサーチを目指す。ゴルフと検索して、あなたが車好きだろうとスポーツ好きだろうと、今のYahoo検索結果は同じだ。ソーシャルサーチ時代には、スポーツ好きの人が検索すればスポーツのGOLFを、車好きの人にはフォルクスワーゲンのGOLFを検索の上位に表示するようになるはずだ*2

前回は"格闘家"と"一般市民"になぞらえたが、探究心のあるなしで分類したユーザ群をそれぞれ比喩すると『狩猟民族』と『農耕民族』とでもなろうか? 今Googleを利用している日本人はまさしく情報ハンターであり、自らの望む情報を取るためにあの手この手を尽くす狩猟民族だ。Gooogleは彼らの愛銃を作るガンスミスである。日々最新の銃器を提供し、ハンターのお役に立つことで会社を大きくしてきた。ただ残念な事に、日本は種類こそ少ないものの美味しい農作物*3が育つ温暖な気候であり、多くの人々は狩猟をせず食卓に座りって米を食う農耕民族であった。そこでYahooJapanはソーシャルサーチという戦略によって『在り物の農作物で美味しい料理を作る手法』を武器に、莫大な母数の顧客に対してビジネスを展開していこうというのである。

こういった論理に対し、前回のエントリでトラックバックを頂いたLife 511では以下のように警鐘を鳴らしている。

よくある議論で「このサービスはすばらしいけど上級者向けだから所詮普及しないよ」というものは短い時間軸では総じて正しいのだけれども、一方で今の中年と未来の中年が同じ「ユーザ」だと思い込んでいる傾向がある。もちろん、よりシンプルでより楽ちんなサービスのほうが普及に確実にプラスになるけれど、1年ごとに市場の世代は1歳だけ代謝して、より「高性能」なユーザに置き換わっているという事実を忘れちゃいけない。

情報探求度という観点からではなく、キーボードリテラシという観点で見ておられるのも興味深い。が、物事一軸だけでは進まないのが面白いところ。日本では10年かけて情報検索サービスのボリュームゾーンがハイ・PCリテラシー層(或いはQWERTYキーボードリテラシー層)に置き換わる前に、ケータイ入力層に置き換わってしまうかもしれない。あるいはまた別のイノベーションによって進化軸が複雑怪奇に捻られて行くやもしれない。3次元,4次元に複雑化して行くようなことがあれば、動きが軽いGoogleにとっては有利な展開となるが、PCケータイぐらいの範囲内で事が進められるのであれば、やっぱりメインストリーム層は農耕民族の方々であり、それすなわちYahooJapanの絶対有利が揺るがないだろう。まぁなんか巨人が1位独走中の巨人賞賛記事みたいな内容でUPがはばかられはするのだが...。

*1:御幣があるかもしれないが、1番組あたりに掛けている金の額は明らかに日本の地上波コンテンツが高い

*2:要約。一字一句メモしていたわけではないので。

*3:TVなどの受動的コンテンツ