ネットにおける著作権問題は道路におけるスピード違反と同等になりつつある

色々考えていたら涼宮ハルヒの壁紙になってしまったこの論題に再トライしてみる。昨今、YouTubeの興隆やWinnyの蔓延などもあり、著名なブロガーの口からも『総表現社会,ネットによる場所を問わない流通が可能な社会において、コンテンツに対する現状の著作権の考え方そのものが古いんじゃない?』という発言が飛び出している(或いは飛び出しかかっている)。

テレビ番組のYouTubeへのアップロードなどはその典型とも言える。そりゃそうだ、テレビ番組の著作権まわり、特に私的録音(録画)に関する定義が為されたのははるか数十年も昔の話。私的録画したテレビ番組をボタン1つで世界中の人に無料で送信できてしまうなど、想像もつかなかったろう。

これってどこかで見たような話だなぁ、と峠道を愛車で飛ばしながら考えたのが、制限速度とスピード違反の関係である。300馬力の市販車が誰でも気軽に買えるような価格で販売され、ABSやVSDといった止まる・曲がる性能を向上させるメカニズムが飛躍的に進歩する中、大半の一般道の制限速度は50km/h(最大60km/h)のまま。ほとんどのドライバーは制限速度プラス20〜30km/hを巡航速度として設定している状態だ。高速道路についてはさらに酷く、大半が80km制限という中120km巡航するドライバーが後を絶たない。

著作権違反は犯罪だ。スピード違反も犯罪である。皆、スピード違反する程度の罪悪感で、ネットでシェアリングされる著作物を視聴する、そんな世界になりつつあるような気がする。良いか悪いかは別にして。


少し脱線するが、先日の涼宮ハルヒネタで私がアニメ好きであることを暴露してしまったわけだが、ネットが無かった時代の涙ぐましいエピソードを1つ紹介したい。知ってる人は読み飛ばして欲しいのだが、funsub(ファンサブ)についてだ。詳しい事はこのあたりの解説に譲るが、要はネットなき時代のファンによるコンテンツP2P国際流通である。80年代当時、「日本アニメ(ディズニーのアレとは異なるモノ)」は日本でしか入手できないコンテンツであった。これを楽しみたいがための米国アニメファンのために、在日米軍基地のアニメファンが軍の輸送網を使ってビデオカセットテープを米国に送り、カリフォルニアの拠点に集約、ファン達の手で英語字幕が付けられ、ダビングして増産、さらには書面で注文を受け付け、米国中のファンにテープを郵送していたというのだ。勿論こんな事が行われているなんて事実すらほとんど知られることのなかったマニアックな流通手法であり、著作権問題として取り沙汰されることも少なかった。

こんな苦心をしていたのはいまや昔、時は21世紀Internetイヤッハー状態である。YouTubeだけでなくBittorrentWinnyと、地域限定コンテンツを楽しみたい当該地域外の人間にとっては天国のような状態になりつつある。そりゃぁ問題視もされる。でも、いまさらやめられないというのが現状であろう。20年前のレーシングカー並みのグリップを誇るタイヤを履いた300馬力の車を与えられて、50km/h制限の道を50km/hで走れというようなものである。

特に難しいのは、視聴権利を与えられている番組のネット上での再送信についてだろう。先日NHKがスプー動画の削除をYouTubeに正式依頼したとのニュースは記憶に新しい。でもちょっと待ってほしい。俺、NHK視聴料払ってるぜ!? 視聴料を払っている=NHKのコンテンツを視聴する権利がある、と捉えるなら、不特定多数に対する公開はNGやもしれないが、視聴料を払っているユーザ同士でのシェアリングは許されるべきではないのか。...まぁ現状の法の下では許されないのだが、このあたりに理不尽さを感じるわけなのである。

恐らくだが、解決策は課金の有無を判定する認証システム(於:有料放送コンテンツ)と、広告ビジネスまわり(於:民放コンテンツ)にあるのだろう。広告ビジネスまわりで可能性がありそうなのでは、プロダクトプレースメントといった新し目の手法や、古き良きテレビショッピングといったところか。テレビショッピングの「いますぐお電話!」ではないが、番組中に表示されるURLをクリックすれば商品紹介ページへ遷移できる仕組みを作り『これに対応してくれればウチのコンテンツは自由にUPしてシェアしてオッケーですよ』なんてトコロが出てくるかもしれない。或いは映像とは別に広告フィードをくっ付けて配信するなど。勿論映画のように著作権ガチガチにせざるをえないコンテンツも残り続けるのだろうが、少なくともテレビ放送については、シェア推奨の方向に進むしか道が無いように思えてならない。もっともキー局は既得権益から離れたがらないようなので、YouTubeなんかよりももっと強烈な、何か彼らが真っ青になるようなサービスをぶつけてやらないと、重い腰を上げないとは思うのだが。

コンテンツはひたすらにコピーされまくって見られ(使われ)まくってこそ価値が高まる、そういったコンテンツの作り方が求められて行くのだろう。皮肉なもので、YouTubeに頭を悩ましているキー局にとって最大の収益源であるCM提供元企業&電通博報堂は、YouTubeで自分達のCMが世界に発信されることを内心喜んでいるに違いない。

http://www.youtube.com/watch?v=_JWqH6BxBdU
そう、例えばこんな企業とかが...。