コンテンツをリアルで持つ満足感と,バーチャルで持つ省スペース&ユビキタス性、あなたならどっちを取る?

冒頭の問いに戻ってみたい。リアルのコンテンツをネット配信可能なよう「データ化」することで得られる「省スペース性」と「ユビキタス性」そして「検索用容易性」。これらのメリットは「所有欲」や「リアルならではのその他の良さ(CDなら音質,本なら一覧性)」に比べると魅力のないものなのだろうか? 少なくとも私の楽曲とコミック利用というシーンにおいては、データ化されていることのメリットが、リアルであることのメリットより遥かに高いのである。私はそうは思わない。ITmediaオルタナティブブログ 伊藤さんのエントリにて「CDも本もなくならない。本当にほしければ形ある品を買う」旨のことが書かれていた。

。「CDも本もなくなることはない思う」と。ネットが供給するコンテンツだけが生き残るなんてことは、絶対にありえないと私は考えています。私も、よく音楽配信サービスを使って楽曲をダウンロードするし、こうやってブログも書いたり、他のブロガーの記事にもよく目を通します。でも、本当に欲しい紙ジャケCDはお金を出して買うし(買い損ねた紙ジャケCDはヤフオクで探すこともしばしば)、本も毎月10冊以上は買います。

http://blogs.itmedia.co.jp/itoman/2006/06/post_b469.html

まぁでもリアル書店なりCD販売なりのマーケット縮小はするわけで。ジャケ付きCDが欲しいのは一部音楽マニアだけになる可能性は大だ。「CDが出たってレコードはなくならない」と言った人がいたように、実際レコードはいまだなくなってはいないが、一般の人の目から見ればなくなったといってもいい状態だ。「メールが手紙を駆逐することはない」と言った人もいた。こちらも個人間の連絡を取り合うための手紙は実質消滅したに等しい。唯一年賀状を除いて。コンテンツ・マーケットの大半を占めるライトユーザにとって、音楽は「聞けりゃいい」 映像は「見れりゃいい」 本は「読めりゃいい」のではなかろうか。音楽と本のライトユーザである私は、実際そのように感じている。

このあたり、iPODの日本における普及を見てもよくわかる。『圧縮音源なんて持ち歩くために致し方なくしてるだけで、家ではやっぱりいい音で聞きたいからCDを聞くよ』というのは一部音楽好きな人の意見でしかなくなりつつあるのが現状だ。そうでないユーザにとってはCDをとっかえひっかえする面倒臭さや、瞬時に目的の曲を探せる検索性、何百曲もの楽曲に対するシャッフル再生の実現など、圧縮音源化してiPODなりPCなりに突っ込んでしまうことで得られるメリットのほうが遥かに大きいはずだ。

話を紙メディアに移すと、こちらはまだまだ紙(リアル本)でしょうという意見が大半だが。だが、私は実体験として紙を捨てつつある。ことコミックに限ってではあるが、オートシートフィーダ付きのスキャナで取り込み、元本は捨てるという生活にシフトして以来、コミック本の必要性を感じなくなりつつあるのだ。仕事柄ノートPCは肌身離さず持ち歩いており、そこには100冊以上ものコミックが雑誌1冊ほどの重さ・大きさの中に収納され、いつでもどこでもバッテリさえあれば表示可能な状態となっている。これは体験してみないとわからないかもしれないが、驚異的な省スペース性とユビキタス性を実現している。どんなに頑張っても普通のビジネスバッグではコミック3冊を持ち歩くのが関の山だろうが、こうしてスキャニングしておけば出張先ホテルだろうが新幹線の中だろうが何十冊でも読みたいときに読みたいだけ読めてしまうのだ。しかも、オフィスや自宅など大型PCディスプレイのある環境に行けば『元の本よりデカイ画面で読める』というおまけつきだ。首を痛めつつ下を向いて本に視線を落とす必要もない。大きくリクライニングするワークチェアに体を預けながら読めるのである。元本を捨ててしまって後悔していないか?と言われれば、まったくしていない。唯一のデメリットは「所有欲」が満たされにくいことと、電源がないと読めないことぐらいだが、バッテリーが12時間も持つノートPCもあることだ、後者はそれほど問題になるとは思えない。

冒頭の問いに戻ってみたい。リアルのコンテンツをネット配信可能なよう「データ化」することで得られる「省スペース性」と「ユビキタス性」「検索容易性」。これらのメリットは「所有欲」や「リアルならではのその他の良さ(CDなら音質,本なら一覧性)」に比べると魅力のないものなのだろうか? 少なくとも私の楽曲とコミック利用というシーンにおいては、データ化されていることのメリットが、リアルであることのメリットより遥かに高いのである。

リアルコンテンツも持っておいて、データも併せ持つ、すなわちCDを買ってリッピングしてmp3と両方を持
ち、場面によって切り替える使い方がBESTであって、mp3だけじゃCDのメリットを補えないけどCDだけならmp3のメリットはリッピングによって享受できる、だからリアルコンテンツが強いんです、という反論がありそうだが、私はそうは思わない。結局CDのメリットが所有欲だけなら、リッピングする手間や購入時のコスト(送料あるいは電車賃)などまで考えると『データのほうが便利でクオリティ的にも普通の人にとっては十分』であれば長い目で見ればデータだけでいいじゃない?って世界が来るのではと思うわけである。

え、映像メディアはどうなんだって?

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