Cellphone user's web Sphere略してセルスフィア!? とウェブスフィアは繋げるべきか否か

言葉の定義 〜サービス群だけではない。ユーザ群&サービス群〜

ケータイによってWeb生活の大半を完結させているであろう人向けのWebサービスによって織り成される世界、Cellphone Web Sphere、略してセルスフィア。そして旧来のPCユーザによって織り成される皆さんご存知のウェブスフィア。一部はてブコメントなどで誤解があるようなのであえて「誰によって」織り成されている空間であるかを明確に表現してみた。はてな携帯版,Google携帯版などははっきりいってセルスフィアに含まれない。何故なら使っているのが従来のPCベースユーザだからだ。携帯電話ではなく『ケータイ』でWeb生活の大半を完結させているユーザと、彼ら向けのサービスが織り成す空間を、ここでは『セルスフィア』と定義することにしたい。

参考:http://kokogiko.net/m/archives/001704.html

総務省調査でケータイユーザの実情を推測

で、本題。総務省調査によると、インターネット利用者の6923万人のうち57%がPCケータイ共用であり、その数4862万人。ケータイでのネット利用者6923万人から共用者を除くと、その差の何と2061万人もがケータイのみでWeb生活を完結させていることになる*1。もっともメールを使うだけでも「インターネット利用」の範疇の為、詳細データのP.43を見てもらうとわかるが、ケータイのみ利用ユーザの率が最も高い年齢層は60歳以上となっている。『女子高生なんてケータイばっかいじっててPCなんてさわってねーんじゃねぇの?』というのは本調査データによると誤りであり、10代(13-19歳)の女性は12歳以下を除くと他のどの年代の女性よりも『ケータイのみでしかネットを使っていない』率が低いのだ。

だが、彼ら若年層がケータイをゴリゴリ使っていることに疑いの余地はない。詳細版P.50にパケット定額制加入者数が年齢層別に出ているが、13-19歳がダントツに多いのがわかる。実に6割にも達そうかという勢いだ。残念ながら携帯電話からのネット利用時間とPCからのネット利用時間を比較できるデータはないが、若年層においては『PCも使うしケータイも使う、ケータイにおいてはパケット定額制でゴリゴリ使い込む』というスタイルが浮かんでくる。

ここからはあくまで推測に過ぎないが、ケータイ世代の若いユーザは、PCはケータイを併用するものの、オジサン層のようにPCとケータイを連携させて使うという使い方ではなく、ケータイにはケータイの世界が、PCにはPCの世界が広がっているイメージで使っているのではなかろうか。


参考(簡易版):http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/statistics/data/060519_1.pdf
参考(詳細版):http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/statistics/pdf/HR200500_001.pdf

世界は一つになるべきか、否か

最後に、ネットサービス事業者としては大変に重い、セルスフィアとウェブスフイアを繋ぎこむか否かというテーマに触れてみたいと思う。現状、これら二つの世界を繋ぐかどうかは事業者側の判断にゆだねられている状況だ。繋いでしまった例はmixi、繋がない事を(今のところ)選んでいる例としてモバオクなどが挙げられる。

ノートPCでmixiにアクセスしているところを見た高校生が『えっ!mixiってパソコンからアクセスできるんだ!(驚』という反応をしたのは有名な話だが、SNSのように特定ユーザ群の行動が他の全ユーザから簡単に見ることが出来ない、内部のユーザ群ごとに衝立が立てられているようなサービスにおいては、融合させてしまったほうがユーザ数を稼げて事業的にも美味しい。

しかし、オークションサイトやWeb2.0的なユーザ参加・知識共有型サービスとなると話は変わってくる。入力デバイスの差異やネットにおける常識や価値観の違いにより、ユーザ間の衝突が発生するだけでなく、サービス事業者として一番汚したくない、Wisdom of crowdsの精度が落ちてしまう可能性があるからだ。セルスフィアの連中が賢くてウェブスフィアの連中がアホだとか、その逆だなどと言いたいのではない。所属するユーザの常識や価値観が大きく異なるユーザが混在することで、『みんなの意見は案外正しい』ならぬ『みんなの意見を合せると何が正解なんだかわからなくなる』状態が起きうるのである。DIGGのようなサービスにおいてはトップニュースのジャンルに規則性がなくなり、Wikipediaでは文語と口語が混在してさながら落書き帳の様相を呈するだろう。

これはネット家電がネイティブに接続するサービスを構築中の身として、真剣に継続検討が必要な課題だ。ネットTVやネットDVRなどを『買えばネットに繋がる』状態で売り出すことを考えると、「ネチケット何それぴあで買えるの?」状態のオジサン層がウェブスフィアに大挙として押し寄せる事必至だからである。なまじプライドがあるだけに、ある種ティーンエイジャーよりタチが悪いかもしれないのだ...。

話を携帯電話とPCに戻そう。Web2.0サービスであっても、セルスフィアとウェブスフイア、果ては家電スフィア!? までを繋ぎこんでいくメリットは勿論ある。携帯電話には携帯電話にしかできないサービス(DB)への貢献があるからだ。写真や文章に自動的にGPSデータを貼り付けられるのは携帯電話ならではの機能であるし、大量のテキストを打ち込んだり、画像加工ツールで高度に加工された写真をUPLOADできるのはPCならではの機能だ。例えばFlickr+GoogleMapsのようなサービスを考えてみると、携帯ユーザはごりごりとMap上に写真をマッピングして行き、PCユーザは長文のコメントを付けたり、画像加工して壁紙としてUPしたりすることで、サービス全体の価値が飛躍的に向上する可能性を秘めている。

どうもこのあたりの解はSNSっぽいサービス形態にあるように思えてならない。パブリック・スペースにおけるコンテンツのUPLOAD,シェアリングは割と自由度を奪った形で半ば匿名にて行わせ、より深いコミュニケーションについてはコミュニティなりお友達リストなりで区切ったセミ・パブリックスペースにて匿名性を薄めて行わせてはどうだろう。なかなかこのあたりのバランスが難しいが、ウェブスフィア・セルスフィア双方のユーザ・エクスペリエンスを熟考し、1年以内には何とか結果となるサービスを形にして出したいものである。

*1:実際にはPCとゲーム機併用,PCと携帯とゲーム機併用などの人数分が引かれるので純粋に携帯のみユーザは1921万人。詳細データのほうP.42参照