広告2.0 次世代Web広告は業者間でユーザのWeb行動履歴がシェアされる!?

AdWordsを叩いた日

広告は嫌いだ。だが、広告があってくれてよかったと思うシチュエーションも存在する。以前ET研にて徳力さんが『ネットリテラシーの高いユーザには自動ネット広告フィルタリング機能が備わっている。私はGoogleAdWordsなんてまずClickしない』と言っておられたのを思い出す。私も同様で、ミス・クリックを除くと、生まれてこのかたAdWordsをクリックしたことは一度もなかった。

が、この度家族の依頼で大量のデジカメ画像オンラインプリントをするにあたり、業者選定にAdWordsをClickしまくったのである。きっかけはkakaku.comだった。kakaku.comでの最安値がL判1枚8円だったのだが、もっと安い業者はないかなとキーワードを色々ためしながらGoogle先生と戯れていたところ、ふと『デジカメプリント1枚6円』の広告が目に飛び込んできたのである。

これまで私は、広告を出す業者=最低でも広告費分が原価に上乗せされている=高い=価格以外の面で付加価値を打ち出さざるをえない=最安値業者にはなりえない、という先入観を持っており、価格重視で買い物をする際には広告を出していない企業を如何に探し出すかで最安値に近い選択ができると考えていた。しかしながら、今回はたまたま"ネットプリント""オンラインプリント"といったキーワードの単価が安かった為か、ほぼ最安値と思われる業者が広告を発信していた。

結果、AdWordsを介してプリント業者と私の見事なマッチングが成し遂げられたというわけだ。ちなみに印刷した写真の枚数は実に890枚! 大した金額ではないが、個人客としては相当な金額を落として行ったはずだ。

古くはアスキー・インターネットフリーウェィ(古ッ!)の頃から『無用な広告なんて幾ら出したって見ねぇよバーカ』と言いつづけて来たのだが、いやいや今回のマッチングはなかなか見事だった。すべての広告がこんなにタイムリー&キャッチーならいいのだが。

不要な広告を見せないようにするために

とはいえ今回はあくまで偶然だ。大手プリント業者の広告主が大金を突っ込み、単価は高いがクオリティの高いプリント業者ばかりでAdWordsが埋め尽くされていたならば、私は一切Clickしなかっただろう。何かをしたい、何かが欲しいと考えているユーザの、もう1段掘り下げた要望(例えば価格重視なのかクオリティ重視なのか納期重視なのか等)をうまくサルベージし、広告主とマッチングさせる仕組みが欲しいところである。

ひとつの案は、kakaku.comで「価格が安い順にソート」したユーザには安売り広告を、「リボ払い可能」にチェックを入れたユーザにはリボ払い可能な業者からの広告を、といった風に、サイト内におけるユーザ行動と「ユーザの潜在欲求」の関係性を明確にした上で広告営業を行うことだろう。ありがちなところだが、1社の判断だけで行えるというメリットはある。

だが究極的には、どこのサイトでどんな行動をしたか、といった情報を多数のWebサービス企業間で共有し、『ヤフオクトヨタ・カローラを落札してkakaku.comでカーステレオを価格順にソートしたユーザが、Googleでスピーカーについて検索すると、カローラ用カーステレオ用スピーカーのローエンドモデルを価格勝負で販売している業者の広告が出る』といったことが実現されるべきではなかろうか。

プライバシー問題は勿論、ライバル業者に客が流れる危険性などもあり、政治的な難しさはあるものの、テクノロジー的難易度はそう高くないはずだ。具体的には、A社とB社の提供情報を用いてG社がマッチングさせた広告によってC社から売りが上がった場合、G社からA,B社に対してそれぞれ報酬が支払われる...という多段AdSenceのようなモデルになるのだろうか。いずれにせよ、情報を出したら出しただけ還元される、さらにそれがまわりまわって自社の売り上げにも貢献する、というようなエコシステムがうまくできあがれば、Webサービス業界の水平分業化がさらに進み、さまざまなビジネスチャンスが生まれてくるのではないかと思った。


うーん、面白そうなので実験サービスとして検討してみようかな。


※Ad innovator books第一弾の「テレビCM崩壊」を読んでいろいろと考えた結果をエントリにしてみた。たまには紙メディアもいいもんである。

テレビCM崩壊