日米トイレ比較でユーザーインターフェースについて考える

CESやらMacWorld、某Blogで有名な会社なんかをやらをぐるぐる回ってやっとこさ帰国したのだが、2,3日以上北米に滞在するといつも思うことがある。

便所のUIが優れてねぇ

非常に小さなことであっても、UIを劇的に向上させることができるのはWebだろうが家電だろうが同じこと。そういう意味では日本国内のトイレは本当によくできていると感じる。そんなわけで、今日は米国のホテル、飲食店などのトイレで決まって「日本に比べるとUIがよろしくない」と感じたポイントを列挙してみたい。


まず第一に、小便器の上に鞄を置けるスペースがないっ!
手提げ鞄持って行ったらどないせーっちゅーねん。

と思って回りを見渡してみると、なるほど日本ほど手提げ鞄を持っている人は多くない。でも紙袋を提げている人などもいるわけだ。じゃぁそういう人たちはどうしているのか? 床に置いているのである...。それを不衛生だと感じないのかもしれないが、ちょっとした棚を作るだけやん... 胸板と壁の間に鞄を挟みこみ、壁に寄りかかるような変な姿勢での用足しを強いられたのはいうまでもない。

おっと、女性にはわからないネタで申し訳ない。男性は立ったまま小用を足すが、チャックの開閉などに両手が必要となる。そこで国内の男性用トイレには胸ぐらいの高さのところに幅15cm程度の台が取り付けれており、鞄などをそこに置き両手をフリーにしてチャック操作が可能となる設計になっているのである。


そして、トイレットペーパーホルダーに「紙切り」がついてなーいっ!

ちょっとしたふたをつけるだけで、片手でも容易にペーパーをカットすることが可能なのに、それがない。ラスベガスのStripにある正価で300ドル/泊 近くする高級ホテルのトイレにも無い。勿論、無くても死なない。ほんのちょっとした利便性なのだが、無ければ無いで大変困るのである。おそらく、トイレットペーパーのセット方向が日本とは逆*1なので、紙切りを付けようがないのだろうけれども。何で逆なのかは謎。


大便ブースに服掛けフックがなーーーいっ!

これは一部トイレにはあったので、すべてにおいて無いというわけではなさそうだが、やはり無いところが多い。和式と違って裾が床を擦るってケースは少ないだろうが、コートを羽織ったまま便器に腰掛けるとあーんなことやこーんなことが起きてしまいそうで不安になるはずだ。寒い地方ではなくとも、鞄を持っていたらやっぱり困る。服なり鞄なりを掛けるフックの設置はほんの数百円の投資だが大きくユーザビリティを向上させるUI改善と言えるだろう。


あとは、あのマドンナまでもがネタにしたウォームレット(あったかい便座)。ご多聞にもれず、やはりまったくといっていいほど設置されていない。雪降るシアトル、吹雪のヴォイシーではこれが超絶に辛かった。当然のことながらウォシュレットも無い。まぁこのあたりはコストや衛生観の違いなどもあるのだろうが。


最後に雑感だが、日本同様のノータッチ・トイレは、空港やホテルなどではかなり普及してきているように感じた。手でレバーを押して水を流す便器や手で蛇口を捻らなければいけない手洗い場などもまだまだ多かったが。以前は「別にアメリカ人はそんなこと気にしない。日本人が潔癖症なだけ」といった意見もあったようだが、どうやらノータッチトイレの普及を見るにつけ、潜在的ニーズ(英語でいうところのunmet needs)はあったようだ。ところが、まだまだ普及していないのがジェット・タオル(ドライヤーみたいなので乾かすアレ)。コストが高いのか、エコの精神がないのか、はたまたなんかふき取れてない感じがして気持ち悪いのかはわからないが、unmet needsは高そうなので、あっという間に導入が進んでしまうかもしれない。


こうやって便所UIをまじめに見てみると、北米ではそんなことは気にしないと言われていた部分がいつのまにやら気にされるようになっていて、便所先進国日本のUIが取り入れられていたりして面白い。キーボードがあるからいいじゃん!とみなが言っていたが、いつのまにやら文字入力しないUIが主流になった...みたいな話はよくある。集団の意見に耳を傾けるのもよいが、お客様は目の前に見えていることしか言葉にしない。UIに限らずだが、企画屋はみんなが馬鹿にするようなことでもTry&Errorを繰り返し、常に新鮮なフィールドを開拓し続けなくてはならないのである。

5年後にはアメリカのトイレにペーパーカッターが付いていたりして!?

※現地の人数名に聞いてみたら一様に「あまり気にならないけどどちらかといえばNoTouchのほうがいいよね」とのこと。まぁ日本人もそうだわな