アクトビラの悲壮、メーカーサイトの意外な健闘

二月一日よりテレビ向けネットサービス、アクトビラ(acTVila)が開始された。直接ではないが立ち上げに絡んだ身としては大変言い辛いことだが...マトモに使えたもんじゃない。が、罵ることが本エントリの目的ではない。なぜ使いにくいか、どう改善すべきかレビューしてゆきたい。

運営側の自己満足コンテンツを出すな

アクトビラボタンを押してからポータル画面が出切るまで10秒近く。しかも最初に表示される画面はテレビの大画面一杯に『2月1日、アクトビラ・オープン!』の巨大文字だけ。どこの高橋メソッドだよ...。いきなりFLASHが全画面で流れだし、10秒間止めることもできず、再生終了後に『ヨウコソ』なんて表示される理解不能サイトと大差ない。さらに言わせてもらえば、もうテレビも買って、LANも繋いでトップページ見れてるんだから、オープンしてることは自明の理。いつオープンしたかなんて情報はユーザには一切関係のない、運営側の独り善がりメッセージでしかないのだ。

トップページは毎日来たくなるようなインフォメーションWindow+ナビゲーションメニューであるべきなのだ。天気予報とニュース・ヘッドライン、最寄り駅の時刻表を並べたGoogle Personalized Homeでいい。なぜこんな簡単で誰もができそうなことができないのか。

目的コンテンツ到達までの必要時間を短縮せよ

悲壮はまだまだ続く。設計者がTVブラウザや利用者のネット環境の特性を考慮していないことだ。上部にメニューリストが並び、右カーソルキーだけでメニューを切替えられるUIはなかなかに家電的。だが、一番右の項目にフォーカスを当てるにはカーソルキーを連打しなくてはいけない。

さらにわるいことに、フォーカスが一瞬でも合うと下位コンテンツを読み込み始める。ご想像の通り、それぞれの下位コンテンツはデザインだけを重視して作ったと想像される、CSSやらJSやらゴリゴリ使われたリッチページ。結果、メニュー切替えに(TVやSTBの機種にもよるが)2秒近くかかり、一番右の項目にフォーカスするのにかかる時間は10秒近くかかることも。ありえない。

■□□□□□□(デフォルト)
   ↓
6回右カーソル押下
   ↓
□□□□□□■

まぁこんな感じなわけだが、マトモにTV版ブラウザ使ったことがある人間なら、デフォルトフォーカスを真ん中に持ってくるでしょ、普通*1

□□□■□□□(デフォルト)
   ↓
3回右カーソル押下
   ↓
□□□□□□■

メニューを多段構成にすればもっと操作数は減る。同社にはUI専門家は常駐していないのだろうか。UI素人の私でもこれぐらいはすぐに思いつくというのに。せめて、左キーを押せば一番右に遷移するぐらいはしてほしいものだ。もっともそれがわかりやすいかというと甚だ疑問であるが。ほとんどのLow IT literacy userは今までどおり右を押し続けてアクセスするだろうから。

恐らくメニュー右側にコンテンツを供給しているコンテンツプロバイダーから、今後テレビポータルサービス株式会社に対してクレームが叩きつけられることだろう。あなオソロシや....である。

必要情報への最短パスを提供する為にはパーソナライゼーションが必要

一番びっくりしたのは、acTVila対応テレビをはじめてセットアップした際、個人をパーソナライゼーションするような情報を何一つ聞かれなかったことだ(郵便番号のみ)。いつのWeb1.0ですか状態。

結果、家族の誰が見ても同じ画面が出てくることになる。IT系ニュースを見ようと思ったら、毎度毎度同じ操作(メニューをたどってIT系ニュースサイトまで行く)を繰り返す羽目になる。

俺が使ったら俺向けの情報がぱっと出てくるトップページ(Google Personalized page, or My Yahooみたく)をどうして作れないかなぁ...。そうしておけばコンテンツマッチ広告も差し込みやすくなり、ナショナルクライアント以外の広告主からの広告商材も取り易くなる。広告の効果測定だってきっちりできるようになるわけで。

ちなみにPanasonicのテレビではacTVila化する前はTナビというサービスを利用することができた。Tナビもまぁ使いづらくはあったわけだが、パーソナライゼーション&パーソナライズド・ホームを提供していた点では大きくリードしていた。Panasonic TVユーザの中にはacTVilaになって受けられるサービスの質が下がったと感じる人も少なくないはずだ。

更新情報通知手段は?

更新情報通知手段がないのはツラい。お気に入りに入れたメニューが更新されたらTVの電源ランプが点滅するとか、何かもうちょっと手はないの? という感じ。パーソナライゼーションしていないがゆえにトップページで「○○さん、更新ありますよ」と通知するわけもいかないという...。

「飽く扉」まであと○○○日

とか言われないよう手を打ってほしいものだ。

動画を始めるらしいが...

公式アナウンスでは07年秋から動画配信サービスを開始するそうだが、このノリではテレビ局に色目を使って番宣動画を流すぐらいが関の山だろう。そんなんじゃぁ誰も飛び付かないのはドガッチの失敗で皆学んでいると切に願いたいものだ。

意外にがんばってるメーカーサイト

最後にメーカーサイトについて少し取り上げておこう。アクトビラトップメニュー右端にTVメーカーロゴ(SONYやらSHARPやら)があるのだが、ここをクリックすると機器メーカーが作ったサイトに遷移することができる。

各メーカーの商品紹介サイト程度かと思いきや、Panasonicが提供する「パナソニックTVスクエア」内では音声読み上げに対応したWeb型RSSリーダーを提供していたりと、荒削りながら面白そうなコンテンツも出てきている。

用意された数百のフィードからしか選択できないとはいえ、音声読み上げ型RSSリーダーを使ってBlogを読むというのは、実際リビングルームで使ってみるとなかなかどうして捨てたもんではない。通常のWebではウザいだけのBGMも、リビングでTVを使って、というシチュエーションであればむしろ心地よいというのも新しい発見だった。

このあたりはもっとacTVilaの前面に出てきて欲しいものである。

*1:そもそもカーソルキー操作ってどうよ、Wiiリモコンにしろよと言いたくなる気持ちをぐっと抑えて、既存のカーソルキーだけでもこれだけ便利にできるのに、できてない。なんだかなぁと思うわけですよ。