それでいいのか!? 量販店展示形態に縛られる家電の"カタチ"や"機能"

先日PMA08*1に行ってきたのでちょっとアメリカ話をば。

アメリカの量販店をたくさん視察してきたのだが、Best Buy, Frys, Circuit City, Walmart 全て三脚穴を使って固定する展示用治具を使っている。当然これら量販店取り扱いデジカメの中には三脚穴がないモデルも存在したが、それらが展示台に載せられていることはなかった。まぁそういうデジカメはほとんどトイデジカメだから展示台に乗ってないという考え方もあるが、こういう細かいことがマーケティング的には結構利いてくるのは何も三脚穴に限った話ではない。

あと、日本のようにACアダプタを繋いだ状態でのデモ機というのがまったくなく、ほとんどがバッテリー駆動による展示だったため展示機の半数以上がバッテリー切れで動作しないという有様だった。バッテリー駆動時間を延ばすのはもちろんのこと、初期出荷状態では自動電源OFFの設定をenableにしておき、その時間を比較的短く設定するというのも北米市場におけるマーケティングテクニックの1つなのだろうと感じた。


ちなみにACアダプタをカメラに繋いでの利用なんてものはほとんどのデジカメユーザーにとって無用のものだが、日本の家電量販店での展示(ACアダプタ常時接続)を考えるとこれを取り除くわけにはいかない。なぜなら"量販店の常識"がACアダプタ常時接続であるとすると、定期的に展示機のバッテリー切れをチェックするという店員のルーチンワークが存在しないことになる。となるとACアダプタの無い機種は電池切れのまま放置されてしまう可能性が高くなってしまい、売り上げに影響するというわけだ。では、"普通使いもしないACアダプタを繋いでの利用"のためにメーカーがかけたコストは誰が払うのかというと、エンドユーザー以外の誰でもない。が、悲しいけどこれ、販売戦争なのよね...としか言えないのが現状だ。

無用なものにお金を払っていただくのではなく、そのACアダプタ用回路なり、コネクターなりによってコストダウンした10円、100円をもっとユーザーの望む部分に使ったハードを作る、そんなアプローチをしてゆきたいものである。


アップルやリアル・フリート(amadana)をはじめとする直営店による展示・販売スタイルをとることで、こういった問題を意識する必要がなくなる。結果、デザイン・機能・商品の位置づけなどを自由に設定することができ、デザイン性を追及し、三脚穴やAC充電ポートを廃したデジカメを作る、などといったダイナミックな商品企画が可能となるわけである。既存製品の枠から抜け出せない家電メーカーデザイン担当や企画担当がアップルを羨むのにはこんなところにも理由があるのである。


このへん話を携帯電話の企画・販売に展開するともっと奥が深くて面白い。nobiさんこと林信行さんの著書「iPhoneショック」にて色々と書かれているので興味のある人は是非ご一読いただければと思う。


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※当然だがACアダプタを接続しての利用や三脚の利用を必要とするユーザーが多数いることは理解しているつもり。あくまでここでは「全てのユーザーが求めているものじゃないよね。でもほとんど全てのデジカメに入ってるのはなぜ?それによって失うものも多いのに」というスタンス。この点のみ誤解なきようお願いしたい

*1:カメラとイメージングの総合展示会 in America。世界3大写真関連ショーの1つ