直材費UPする新機能を既存商品に搭載する商品企画の通し方

※本エントリはいつものキャズムを超えろ!とは違い、未推敲の走り書きです。

キャズムの向こうはサザンクロスシティ!? みんなの理解をもらうのは例えトキ様でも難しい

「ああそれね、わかっちゃぁ、いるんだよ。でもね...実際に製品にするとなると、ね...」

一昨日行われた百式田口さん主催のBRAVIA会議には出席できなかったが、おそらくは参加者のブレストで出てきたアイディアの大半が議論し尽くされたものだろう。そして、その中のいくつかは、実際に効果的な手法であることもわかっている。一見すると実装が簡単そうに見えるのもわかる。でも、でも...という技術者・商品企画者の心の声を、冒頭の一文で代弁してみた。

色んなしがらみがあって実装できないというのもそうだし、オマケ的に既存商品に機能プラスするだけではユーザーに理解してもらえないけれど、大量生産大量販売という輪廻の中においては、その程度の実装方法しか許されなかったりする。これが今の巨大化してしまった家電メーカーのつらいところだ。商品の主要購入者は市場の大半を占めるレイト・マジョリティかラガードであり、そこをターゲットにするには価格と数量(を捌けるかどうか)が命。となると必然的に『キャズムの向こう側にいるユーザーにアンケートをとって、大半が"ほすぃ!"という機能以外には物理コストはかけられません』というディシジョンになる。キャズムの向こう、それはトキ様ですら理解されない世紀末のサザンクロスシティだというのに、だ。

最近ネット家電・先進的デジタル家電についての記事で一番面白いのは日経BP(日経エレクトロニクス)の下記ブログ記事だ。

「どのメーカーの技術者も一度は考えたと思いますよ。ただねぇ,実際に製品として出すためにはいろいろ…,あるんですよねぇ」
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20080514/151672/

結局のところ、実際に製品と出すためのしがらみをどう超えるかが先進的な商品の商品企画の全てだといってもいい。

そんな中でもSONYはよくがんばっていると思う。リモコンに2.4Ghz帯無線を採用したり、アプリキャストのサーバ維持費を払ってみたり、何かの種になればとBrancoを始めてみたり。まぁ実際のところはPanasonicのDIGAも相当がんばっていて、リモート録画予約の機能などが相当進化しているのだが。*1



物理コストってのは、ソフトウェア開発費ではなく機器1台あたりに乗ってくるチョクザイ費(直接材料費)のこと。カメラをつける、WiFiをつける、Bluetoothをつける、といった話は「超巨大アップデート」であり「目ん玉飛び出るほどの原価UP」と認識される。500円〜1000円するかしないかぐらいなのにw それどころか、LEDを1個増やす、USBコネクタを1個つける、というレベルでも頭ごなしのNGが出かねない。

Bluetoothでケータイの写真がTVで見れるようになる? WiFiでその番組に関する情報を取得できる? オーライ、わかった。じゃぁあんたのお母さん(推定50代)に、言葉だけで聞いてみてくれ。そのうえで「その機能に5000円払いますか?」ってな。

いやそんなひとはターゲットじゃないですから...と言ったが最後、大手メーカーの商品には当該機能が載らない。気合の入った商品企画マンなら、当該機能を歓迎する潜在顧客がxxxx人いる、ということを何がなんでもデータかきあつめて商品リーダーに突きつけるわけだけど、いざ集めてみるとこれが集まんない。ユーザー予想以上に「十万人が5000円UPを許容してくれる機能」ってのは少ないのだ。


でも、それって聞き方が間違ってる、というのが私の持論。お客様は1つの機能に5000円を払うわけではないからだ。WiFiを積むことによってあれもできる、これもできる。じゃぁそれら機能が5つあるならそれを列挙してお客さんに「これ5つつくんですけど+5kを許容できますか?」って聞いて来いってのも、これまた違うと思うのだ。

何が言いたいかというと、既存製品に5つ機能を追加するんじゃぁなくて、それら5つの便利な機能が載った新しい商品を1つ創造する、という視点でやらないといけない、ということ。そしてそれら5つの新機能がある前提で、デザイン、マーケティング、UIなどを作りこんでゆく。そうして出来上がった商品はold generationの商品より1万円高いかもしれない。でも、さっきの5千円は出せなくても、この1万円は出せるという人が多いはずだからだ。



おっと、じゃぁ1万円高くても買ってもらえますか、なんて書面アンケートで聞いて回っても絶対にだめ。そこが商品企画の難しいところで、結局のところ「これはいける」と誰かが判断してプロトタイプまで仕上げてしまうしかない。そこまで出来ないと、従来なかったものをユーザーが評価することは難しいからだ。

iPod touchが出てくる前に「でかいディスプレイを積んで、タッチで曲が選べて...そしてタッチ操作に最適化して全てを作り変えた新しい音楽&ビデオプレイヤー。でも価格はnanoの2倍!」なんて言ってもほとんどの人は購入意欲を示さなかっただろう(このBlogを読んでくださっているような一部の濃い人は別)。


だからいま、Appleが面白いし、Nintendoが面白い。個人的にはソニーVAIO部隊が面白い。VAIO部隊が面白かった時期はちょっと前に過ぎ去ってしまった感があるのが残念だが、VAIO ルームリンクやらWA1やら、面白い商品を文字通り"世に問うて"いた。


とっても残念だなぁと思うのは、ソニー家電部隊とVAIO部隊の間の隔たりが大きすぎることだ。VAIO部隊と東芝家電部隊、という組み合わせならVAIO部隊が切り開いた一筋のニーズに家電部隊が切り込んでブームにしてしまう、という動きが可能だと思うのだが。



まぁ、お隣の韓国のようにサムスン一色、といったベタな展開ではなく、日本の家電にはこういう不文律があるからこそ面白い、ともいえるのだが。

結論

あ、表題の結論を忘れていた。

  • 「新しい商品ジャンルを1個作るぐらいの大きい話にする」
  • 「動くものをつくり、ちゃんとかっこいい外装も付けた上で、Face2Faceでユーザーアンケートする」


それってめっちゃ大変じゃん!ってのはよくわかる。でも、すでに使い方とかユーザーからみた「想定価格帯」が決まっている"既存商品"に対してやるってことは、つまりそれぐらいのパワーをかけんしゃい、という話である。

あとがき

たまに殴り書きをすると楽しいw これぞブログって感じ。

*1:まぁ東芝EPGのネット配信なんかをやってるし、SHARPは独自TV向けポータルとかをやってるので、全くやってないという話ではないのだが。東芝GMLから訴訟(http://www.gemstar-multimedia.com/news_press_release_101707.html)されてるからやめるかもしれんしねぇ...。