Chumby日本語版発売決定記念・家電の商品力を開発者コミュニティが決める日がくるか!?

先日Infinit Venture Summitというイベントにて、ちょっとしたUnconferenceに出席させていただいた。Unconferenceってのは海外の Conferenceではよくあるんだけど、カンファレンス会場で識者がブレストする、みたいなやつ。パネルディスカッションの超超アットホーム版というか。10人〜20人ぐらいの人が車座になってあーだこーだ議論する。

で、そこのネタは「Web2.0の次は?」みたいなベタな話だったんだけど、シンクーの池田さんが振ってくれた話がこれ。

今後、世の中はシンクライアントに向かうのか?
そのような中で端末サイドの役割は?
ユーザーにとってのネットの使い方の変化はいつぐらいに、どのようになるのか?

ソニーUSAの本間さんが振ってくれた話はこれ。

アメリカでは最近、ハードウエアを絡めたベンチャー企業が目立っ
ており、
しかも技術オリエンテッドではなく、サービスセントリックなアプローチが
見られます。

シンクー社ではネット上の情報を検索する、PCにインストールするローカルアプリを作っているので、Webベースアプリ or ローカルアプリといったそのへんの話を振られたつもりだったんだろうけど、本間さんの話に絡めて私が振った話はやっぱりというかなんというかChumby(笑)

ハードを絡めてベンチャーで、ローカルかネットかそのへんどっちよ?的なネタだと今これが一番面白いんじゃないかなぁと思ったので。以下、いろんな会社の社長さんとかがいっぱいいる前で不肖私めが色々と話した内容。自分で言っていて「おー、言われてみればそうだなぁ」って思ったのでBlogにメモ(www 人に話すとか文章に書くって、ものすごく自分の思考が整理されるのでおすすめ。



まず、Chumbyってのは何か。意外に一言で説明しているメディアが少ない。タッチディスプレイとWiFiとスピーカーがついた『ネット接続型次世代目覚まし時計』というか『ネット接続型次世代デジタルフォトフレーム』みたいなモノ。ネット上にあるいろんな情報(天気とか株価情報とか)を好みに合わせて画面に表示することができる。$175、直販オンリー。北米のベンチャーが作ってる。日本では買えない(この時点では。6月12日に代理店より日本発売アナウンスあり)。

Chumby のアプローチで面白いのは、うまい具合にユーザーにプラットフォームを開放したこと。プラットフォームの開放ってのは言葉では簡単だけどやり方がすげー難しい。組み込みLinuxのプラットフォームを提供して「この端末を自由に弄繰り回してください」といっても難しくてほとんど誰もやらない。PCがあても OSを作る人なんてほとんど現れない、ってのに近いかな。

あと、ハードの上に乗っかっているソフトが収益源になっている場合なんかもあって、そこをユーザーにコントロールされると収益モデルが立たないってパターンもある。これは大手メーカーによくあるパターン。中身のハードはほぼ同じでソフトだけで上位モデル、下位モデルなんてのを作っていると、ユーザーに上位モデル同様のソフトをインストールされてしまうと、上位モデルが売れなくなる、ってパターン。翌年のニューモデルはガワを変えてソフトをチューンして、ハードはほぼ一緒で出す、なんてパターンもこれにはまる。

で、Chumbyはどうすごかったのよ、という話にもどると「ミドルウェアとしてWebエンジニア界に普及してるFlashを挟み、そこから上のレイヤーを公開したこと」 「さらにそのアプリを誰でもChumbyオフィシャルサイトに掲載でき、誰もがそのアプリを活用できるようなPlatformとした」ことに尽きる。Chumbyの場合は下位レイヤーもGNU v2に準拠していて片っ端からソースが公開されているのだけれど*1、ここをいじろうという猛者は少ない。だが、Flashは違う。ActionScriptはいまやHTML,Javascriptに次ぐぐらいに開発者人口の多い言語となったし、今後も拡大する方向にある。

正直なところ、ChumbyによるFlashの実行は若干もっさりとした動きだ。i.MX21プラットフォームの上でネイティブアプリを走らせれば、iPhoneもびっくりのさくさくUIが動く。さくさくUI をネイティブ層のすぐ上で動かすことで有名なUIEJapanのだーれかさんに頼んで作ってよーといえば相当なもんができてくるであろう。それほどCPU 自体のパワーは(家電としては)高いものがある。

だが、Chumbyが取ったアプローチは「開発者数」と「開発しやすさ」を重視して開発者コミュニティを囲う、という戦略だった。そのため独自SDKの公開や特殊なミドルアプリではなく、もっさりした動きかもしれないがFlashを、という選択をしたのだろう。Flash積めばYouTubeとか見れるからいいじゃん、じゃいっそFlashから上を公開にしねぇ?的な軽い乗りだったのかもしれないがw

本題: 家電の商品力を開発者コミュニティが決める日がくる!?

さてここからが本題。前置き長杉。個の時代、と言われ趣味嗜好が多様化してきているこの時代、メーカーが出すいくつかのアプリを積んだとあるハードウェアが万人受けするというパターンがはまりにくくなってきている。先の東洋経済の記事にも少し書いてもらったが、メーカーは特定のユーザーにフォーカスした商品作りをするようになってきている。

そんな中、新しく出てきたPC的アプローチとして、プラットフォームをOPENにし、ユーザー主導で多種多様な特定趣味嗜好のユーザーに向けたアプリケーションを開発させることで、あらゆる趣味嗜好のユーザーに対して特定ハードウェアを売ることが可能になる、というビジネスモデルが家電においても始まりつつあるなぁという印象を受ける。

そうすると、開発者がある程度ついたハードが勝つ、という図式がCEにおいても成り立ってしまう。PCケータイの次にこのへんがくるのはTVかカーナビだと思っているのだが、この世界が来てしまうと何が起こるかというと、購入時の商品比較において『Panas○nicのテレビはS○NY のテレビよりやすいしキレイだけど、ベンリなアプリがないんだよねー』という意見が出てくるわけだ。PCでゲーマーやインストール型アプリ大好きユーザーがMacは買えねぇ、って言ってるのとおなじように。また、ケータイゲームを楽しんでいるユーザーがDoCoMoから離れられないように。


最後にちょっとしたおまけ。


アプリ開発が簡単であるということは、タイアップモデルの開発なども容易になる。例えば最初っからみくみくダンスアプリだとかみくみく関係ニュース表示アプリだとかがインストールされた「萌え萌え初音みくみくVer Chumy」なんてものが簡単に作れてしまい、クリプトン社から発売、なんてことができてしまう。まぁそこまでぶっ飛ばなくても、ユーザーアプリの幾つかをインストールして外装を変えれば多チャンネル展開は簡単だ。engadgetならぬ"変ガジェット"が結構出てくるんじゃないかなぁ。個人的にはツインテールがついてて、緑色で、液晶に「はちゅね」の顔が出てくれるChumbyならほしい。イヤマヂデ....

*1:Flashが絡む部分はライセンスの都合だろうか公開されていない