iPhone+AppStoreは本当にAU+EZアプリより優れているのか?

iPhoneネタ(特に日本向けiPhone関係)なんて腐るほどあるから...と書かずにいたんだが先のMXTVがらみのエントリで触れちゃったしここでアプリケーションプラットフォームについて少し語ってみるのも悪くなかろう。

で、iPhone+AppStoreはDoCoMoiアプリやらAU+EZアプリ(BREW)より優れているのか?という「優れてる」なんて見方によってどうとでも取れる、意味のない振りをしてみる。まーなんていうか一部の人たちの間ではiPhoneSDKがヒートアップしてるようだが、それってEZアプリ(BREW)と何がちがうんだろうか。配布には審査が必要だけど割と低いレイヤーを叩ける言語で書ける、アプリの課金代行やってあげる、って意味ではAUのモデルとほぼ同じ。もしかしたらダウンロード一発課金のみで月額課金とかはできないかもしれない(もし現実ならAU比で退化)。iアプリのようにメモリをバイト単位で削りながら職人魂でくみ上げる、なんて面倒くささはないのかもしれないけれど、SDKの出来がいいんです!だけではプラットフォームが優れていることの理由にはちょっと弱い。

あと、これはDoCoMo比の話だけれど勝手アプリを許可しない、って方針はどうなんだろう。Appleは昔から"Open化"という思考とは正反対の選択をすることが多かったので驚きはないが、これが吉と出るか凶と出るか。フリーソフトは公式サイト経由でフリーで配布してあげるよ、という点だけが今の日本のキャリアが持つ3rdパーティアプリ取り扱い基準と違うところか。



とまぁこんな感じで「みんな騒いでっけどAppStore+iPhoneSDKなんてAU+EZアプリ(BREW)と変わらんやないの」と冷めた目で見ているのだが、期待している点が2つだけある。1つははAUDoCoMoSDK設計やアプリ審査の段階でいろいろと縛りをかけている『電話帳など端末内データを自在に用いたアプリ』や『複数のWebサイトが連携するようなマッシュアップ系アプリ(ex. 価格比較アプリなど)』でよく出来たものが多数登場し、ブレイクするというケースが成立する可能性がわずかながら残されているということ。もう1つは、マルチタッチディスプレイを用いたキラーアプリが登場すること。これもDeNA社やmixi社のようにマスを狙う会社は5-60万台売れないと見向きもしないし、iPhoneでしか楽しめないバージョンと他キャリアバージョンを両方開発するとも思えないので期待薄ではあるのだが。

視点をユーザーではなく開発者に移すと話は変わってくる。世界中で何千万台と売れる(予定の)iPhoneが共通のアプリプラットフォームを採用している、という点では"アプリ開発者にっとって"魅力的な仕組みであることは間違いない。これまでもNokia用にアプリを作ればそこかしこの国で利用してもらえる可能性があったわけだが、AppStoreという万国共通の仕組みを通じて配布・課金代行までやってくれるというのは大きいはずだからだ。

ユーザー視点で見た場合、英語圏のユーザーやスペイン語圏のユーザーにとって、これはすばらしいアップサイド要件かもしれない。アプリ開発者は率先して(利用人口の多い)英語やスペイン語に対応したバージョンを作るため、当該言語における潜在的アプリ開発者の数がどんどんと膨れ上がるはずだからだ。ただ、利用人口が少ない日本語のアプリを、世界中の人々がじゃんじゃん作ってくれるということにはならない。だから、先のAU+BREW時代と何が変わるのかいまいち見えないというわけだ。



AppStore構想を聞くたびに、独自のアプリ配布プラットフォームを設け、独自の高度なアプリ(ゲーム)の開発ができるSDKを提供し、泣かず飛ばずで終わったNOKIAのゲーム機風ケータイ「N-ゲージ」を思い出してしまってならない。