WiFi搭載デジタルフォトフレーム SONY CP1 〜DLNA経由の利用が便利な一品〜

ソニーが出しているデジタルフォトフレーム VGF-CP1をご存知だろうか。ソニーでフォトフレームというと、DI部隊*1が出しているS-Frameと呼ばれるシリーズのものがイメージされるが、あれは一般人向けの普通で面白みのない製品。よくできてはいるけどね。

今回紹介する製品は、VAIO部隊*2が発売した無線LAN搭載デジタルフォトフレーム、VGF-CP1である。

特徴は何といっても"WiFiを積んでいて、宅内にあるルータ経由でネット上にある写真群をスライドショー表示できること"に尽きる。Picasaフォト蔵に対応しており...なんて平凡なレビュー記事はITmediaでも参考にしてもらうとして、ここでは家電製品としての仕上がりを商品企画・マーケティングの観点から見ていきたい。

前提条件としてこちらの記事あたりで基本機能を把握しておいてほしい。簡単にまとめると

  • WiFi搭載でPicasaフォト蔵の写真が見れる
  • DLNA対応でホームNW内の写真が見れる
  • 音楽も再生できる
  • 写真にニュースなどのRSSフィードを重ねてみることができる
    • プリセットはYahooニュースだが、RSSに対応していれば何でもOK。はてブホッテントリなんかを重ねることもできる
  • ブラウザを積んでいて(いちおう)Webが見れる

ってとこ。

ハードウェア・ソフトウェア

IMG_4952何で家電メーカーはリモコンをけちるかね。手が触れるところが一番質感として大事だという考え方はいつ大手家電メーカーからなくなってしまったんだろうか。ちなみにCP1についてくるリモコンは、写真をみてのとおりどこにでもある「薄型・最安値タイプ」だ。クリック感がほとんどなく、押したつもりが押せていない、ということがよくあるタイプ。ごく普通の一般家庭であるウチにも3つもあったぜよw せめてAppleTVなどに付属するリモコンと同じぐらいは作りこんでほしかった。

シビれるぐらいの画質チューニングが効いた美しい液晶パネルによくできたフィルターをかけてあり、黒の沈み込みが美しいパネルについてじっくりと話をしたいところだったのに、原価500円もしないような部品でこういうことを言われてしまうと折角の評価に傷がつくだろうに。

それからちょっと業界トークちっくになってしまうが、液晶TVの切れっ端で安いのはわかるが16:9液晶をフォトフレームとして売るのはどうなのよ、という話もあり。Panasonicは16:9撮影ができる16:9CCDを搭載したカメラなどを製品化しており、自社商品全体で16:9を押していこうというのが伝わってくるが、ソニーはそのあたりの戦略が明確でないだけに、デジカメの基本比率である3:2か4:3といったところに対応したサイズとしてほしかったところだ。もっとも、カーナビ用などで数がはけるため7インチワイドが安く手に入るという背景もあるわけでそう簡単な話ではないことは理解しているのだが。

外装は透明度の高いアクリル素材を贅沢に使い、プラスチック部もお金のかかっているテカり感のある塗装仕上げでヤスモノフォトフレームとは異なる高級感を出している。ここまでやるなら一部インジケーターに白色LEDを使ってほしかったが、そういったところに無駄金をかけられないのが大手家電メーカーの悲しい性。ま、白は高いからねぇ...。IMG_4968

ただ、1点だけフォローさせてもらうと、スライドショーする際のトランジションやメインメニューのGUIをきっちり作りこんでいるあたりは流石大手メーカーの貫禄。AIPTEKやポラロイド、KODAKといった「適当にありものを中国で買ってきてブランド名つけて売ってます」ってなメーカーとは違う凝ったつくりのソフトのため、先に述べた16:9前後の横長液晶サイズであっても、それほど違和感なく写真をスライドショーさせることができる。

商品企画&マーケティング

ちょっと迷走したかな、ちょっとてんこ盛りにしすぎたかな、という感は否めないが国内メーカー初のWiFiフォトフレームとしてはよくまとまったなという印象。

対応フォトサービスがPicasaフォト蔵だけというのが、家電メーカーのしがらみの多さを体言していると言えなくもない。実際、ニコンの MyPictureTownがフォト蔵にのみ対応していて、PanasonicのTVもPicasaのみに対応しているところから、業界の状況を察していただきたい。Flickrは? mixiは? なんて言っても無駄なのだ。現時点では。

てんこもりと言ったのは、多くの機能を詰め込みすぎてしまったがゆえに少々わかりにくい商品に見えてしまっていること。勝手な持論に『何でもできることは何もできないことといっしょ』というのがある。 SDカード内の写真も見れる、ネットの写真も見れる、ニュースも表示できてブラウジングもできる...と、ここまでくると結構おなかいっぱい感が否めない。でも、これは商品企画や技術部門の失策というわけではないと私は思う。

ネット家電はどうしても複雑になりがちだ。それをどうシンプルに、そして「新しいユーザエクスペリエンスとして」見せられるかが共通課題である。量販店の顔色ばっかりうかがっていては、新しいものを訴求するなんてことは永遠にできないのかもしれない。


ネット接続デジタルフォトフレームとして、アメリカのCEIVAがとってもわかりやすい訴求をして、暴利ともいえる課金設定をしているにもかかわらず昨年ぐらいまでは好調な売れ行きを見せていた。ネットサービス部分のコストをペイできない可能性があって自社でネットサービス部を持たず、Googleとウノウに任せっ切りにしてしまった上に、魂をネットサービス会社に売り渡したくないからそのへんの機能委譲(権限委譲?機器への干渉委譲とでもいおうか)をやりきれず、CEIVAほどシンプルなユースケースを提案できなかった....なんてことだったとしたら、大変悲しいことである。業界の雄たるソニーにはこれぐらいは是非ともやってほしいものであるのだが。

※あれ? s○-netフォトとかってどーなったんでしたっけ?www

DLNAがもっとも便利という結論に

商品企画&マーケティングに関する話はこれぐらいにして、Blogなのでちょっとマニアックなネタを投下しよう。

本フォトフレーム(CP1)はWiFi経由でPicasaフォト蔵の写真を引っ張ってこれるという点ばかりがクローズアップされるが、いったいぜんたいどんなマニアックな方がソフトを開発されたのか知らないが(ぉ 、ローカル環境にあるSambaやDLNAサーバから写真を引っ張ってきて表示することが可能だ。DLNAはおひつPCなんかのラインナップがあるのでわかるとして、Sambaってのは相当ヲタだ。

添付CDROMにSONY独自のDLNAサーバプログラムが同梱されているが、メーカー純正ソフトは入れたくないという諸氏も多いだろうし、そもそもCDROMで提供されてもドライブに突っ込むのが面倒という方も多いだろう。


そこでネットで誰でもダウンロードできる、無料DLNAサーバプログラムを使ってみたところ、問題なく動作してくれたので報告しておきたい。具体的にはTVersityとOrbの2種類を試してみた。どちらも特に設定をいじることなくインストールしただけで認識してくれるという簡単さ。ソニー純正とどちらがレジストリを汚すのかは知らないが、よくできているプログラムなので是非使ってみてほしい。


ちなみにDLNAサーバプログラムを入れてCP1を使うと具体的に何ができるようになるかというと、常時起動しているPCやDLNA対応NASが家庭内にある場合、PCやNAS内の写真をCP1でスライドショー表示することができるようになる。Picasaフォト蔵も容量無制限というわけではないし、さらにはUploadにはそれなりの手間がかかる。それに引き換えDLNA経由でローカルHDDの写真を表示できるということは、UPの手間もいらず、容量制限も気にせず*3楽しむことができるというわけだ。

DLNAサーバプログラムは特定のフォルダを監視して、新しい画像ファイルが増えれば自動的にCP1に表示される。私はというと、お気に入りの画像は自動巡回ソフトで落としてxxPictureってフォルダに仕舞い込まれるようにしてあるので、そいつをCP1で眺めて気に入ったやつは壁紙にしてみたり、といった感じで使っている。「写真」をスライドショーするガジェットとしての本来の使い方ではないが、これはなかなか便利なので画像収集癖のある方は是非使ってみてほしい。


ネムイ...。まっとうかつ詳細なレビューはまた後日ということにしたい
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*1:いわゆる家電部隊。一般人向けのデバイスを売ってる部隊なのでつくりはしっかりしているが商品企画・開発ともにあまり挑戦しない。レイトマジョリティ刈り取り部隊

*2:読んで字のごとくPC部隊。小ロット生産でマニアックな商品を作ることができる部署のため、割と挑戦的な商品企画をしてくることで有名。イメージとしてBuffaloのようなカラーを持った部署。流通ルートの関係で原価率が高く、いいものをそれなりに安く出せるのもこの部隊の特徴

*3:当然ローカルHDDの容量制限はあるが、1テラバイトHDDが1万前後というこのご時勢、実質無制限といって差し支えなかろう