ACER ASPIRE oneを試す 〜動画もOK! 1台目としても使えるミニノートPC〜
先日、MIRAI〜ネットとがジェットの融合〜というイベントにパネラーとして出席させていただいた折、日本ACERの方から『持ってないなら一度使ってみてください』と、ACERのミニノートPC(ネットブック)であるACER ASPIRE one(MODEL:AOA150-Bb1)を譲渡いただいた。5万円もするものを頂いてしまって大変恐縮ではあるのだが、だからといってレビューに反映してはACERの担当者様も読者の皆様も本意ではないだろう。
というわけで、モニターではなく譲渡頂いたからこそできる(?)要素も含めていつもの徹底レビューを進めていきたい。
ネットブックってぇもんについて
AsusのEeePCが代表的だが、7〜9インチの液晶にATOMまたは同等クラスのCPUを搭載、5万円前後の価格で販売されている小型軽量格安ノートPCのこと。搭載CPUはATOM270でグラフィック機能はオンボード(Intel945)、メモリが1Gbyteというのが各社基本スペックとなる。これに液晶サイズとストレージサイズ、バッテリー性能、WiFi性能、そして外装デザイン・ユーザインタフェースの違いで各社の色を出している。
その中でも選択をわける大きな要素は「HDDかSSD(フラッシュメモリドライブ)」かの違いだ。ASUSとDELLはフラッシュメモリ、ACER・TOSHIBAはHDDだ。
マーケットリーダーであるASUSが最も挑戦的で、EeePC-901Xでは無料20GbyteのWebストレージと802.11n対応WiFiを内蔵し、標準添付バッテリーで8時間以上ものバッテリ持続時間を誇る。反面、EeePC-901XはストレージをフラッシュメモリとしているためOSといくつかのアプリをインストールしてしまうと、それだけでストレージがいっぱいになってしまう。勿論、OSのサイズを低減したり不要なアプリを消して省スペース化することができるスキルのある人はいい。アプリケーションのメインがWebアプリであるというような人もまたしかりだ。
ただ、普通に『小さいけど普通のパソコン』として使いたい人にはEeePC-901-Xをはじめとする、20Gbyte以下のストレージでは"ちょっときつい"、というのが現状だろう。32Gbyteあればほとんど問題ないレベルまでくると見ているので、次の世代ではフラッシュメモリタイプとHDDタイプのミニノートPCの差はさらに狭まるかもしれないが。
ネットブック各種のなかでASPIRE oneの位置づけ
一言で言えば「無難」。スペックシート上特に秀でただ性能は持っていないが、必要十分な機能が搭載されている。一部他社ミニノートPCに搭載されているBluetoothや802.11n(11gは搭載済)などはないが、普通に使うぶんには特に問題ないだろう。多き目のキーボードと160GのHDDによって、"普通のパソコン"として使えるよう開発されたことが見てとれる。
それゆえか標準添付バッテリーを使っての長時間駆動は考慮されておらず、長時間使う時は別売りの6セルバッテリーを使ってね、という形になる。6セルバッテリーは9000円が相場のようだ(下記リンク参照)。
使ってみた感想
サイズ・UI
EeePCも使ったことがあるのだが、比べ物にならないほどキーボードが打ちやすい。キートップ幅17mmもあるためだ。EeePCと比べると明らかに幅がある。タッチフィーリングは一般的なノートPCのそれと大差ない。キーボードについて1点だけ気になるポイントは「FnキーがCtrlキーの右側にあること」だ。これまでThinkPadやLet's Noteなど左がFn、右がCtrlという体系に慣れていただけに厳しいところ。Fnキーはレジストリ変更やキー入れ替えユーティリティでは入れ替えることができない*1。レッツノートなど、PCによってはBIOSでFnとCtrlを入れ替える機能があるのだが、残念ながらASPIRE oneにはそれがない。大した変更点ではないと思われるので、BIOSアップデートに是非とも含めていただきたいものである。
随所で言われているトラックパッド(タッチパッド)の使いにくさは評判どおり、あまりよくない。UI的に右手1本で操作できる形状になっていないからだろう。通常パッド下方にボタンがあれば、右手親指でクリック、人差し指または中指でトラックパッドをなぞることができる。だが、ASPIRE oneのトラックパッド形状ではこれができない。親指は左クリックボタンに届かないのだ。左クリックについてはタップによるClickしか日常的には使わないようにすれば問題はないのだが、右クリックを解決するいい方法がない。Macのように2本指タップで右クリックができるユーティリティなどが提供してほしいところである(特許面とかがややこしくて難しいってのは理解できるんだけども、あくまでいちユーザーとして)
トラックパッド関係ではもうひとつ課題が。パッド左右にあるクリックボタンのタッチが異常に硬いのである。調べてみると他にも同意見の方が多い。その昔使っていたレッツノートのT1,R1も結構硬かったが、使い込むうちにやわらかくなってきたので経年劣化に期待(?)したいが、現状1週間使ってみたところではさして変わらず。少々ダブルクリックがやりにくかったりするので気になる人は注意。
また、同クラスのミニノートPCの中ではダントツに薄い。最薄部xxミリといった記述を見るが、個人的にはあの記述が嫌い。大事なのは"最厚部"のサイズである。ASPIRE oneのカタログスペックにある29mmというのは最厚部だ。勿論MacBook AIRの最厚部20mm以下という数値には及ばないが、コンパクトかつ薄いというのは想像以上に小さく見えるものである。
処理速度 〜フルHDのMPEG2-TS、幅1280のDivXやH.264も問題なし〜
EXCEL、WORD、PowerPointについては十分に動く。当たり前だがFirefoxやIE7も同様。気になっていたのは動画再生性能なのだが、こちらが思った以上にパワフルであることがわかった。
DVDは言うにおよばず。1280×768のH.264圧縮動画は問題なく再生できた。1920×1024(フルHD)のMPEG2-TS動画も問題なしだ。ただ、1920×1024のH.264動画は流石に再生できず。
Atom N270ってこんなにパワーあったのね、とちょっとびっくり。もともとACER社からモニター利用のオファーを受けた際「CPUパワーがないんでしょ? だったらメールとブラウズ、IRCぐらいにしか使わないからHDDなんて160Gbyteもあったって意味ねーじゃん」と思っていた。が、意外や意外、ごりごり使えてしまうのであのアプリも、このアプリも、と入れて結局結構HDD容量を食っているというのが現状。
拡張性
メモリが(公式には)1Gから増やせない、といいうのはいささか不満。1.5Gに増やしている人はみかけるが、2Gにするとエラーが出て起動できなくなるという報告がちらほら。2Gにできたという報告はみかけたことがないので、多分できないんだろう。
ウイルス、スパイウェア対策プログラムはメモリを食う。最初からインストールされているマカフィーをUninstallしてNOD32を使うなどの省メモリ対策を行えば、1Gでも十分使えるので色々とググってみてほしい。
外部入出力端子にHDMI/DVIがないのは個人的には惜しいポイント。外付けディスプレイはフルHD(幅1920)に対応していて、しかもフルHDのMPEG2-TSを難なくデコードできるスペックを持っているだけに、普段はネット端末として活用、週末は撮り貯めた動画をテレビにつないで見る、という用途に使いたかったためだ。まぁこのへんは欲を言えばきりがなく、光デジタル出力もほしくなるしリモコンで操作できるような受光部なんかもほしくなってしまうので、音声は2chで映像はアナログRGB接続ではあるが、1920*1200の高解像度でもって外付けディスプレイ(含むPC)に出力できるASPIRE oneは必要十分な性能を持っていると言えるだろう。
ACアダプタ問題の解決法
さて。このレビューを穏やかに書けたのは、ある改造を施したから。貸与品ではこういうことはできないから、譲渡いただいたから可能なレビューとなる。
ASPIRE oneのACアダプタはとっても小さく、モバイルノートPC用として(大きさだけは)申し分ない。ただ、添付されるACケーブルが問題だ。びっくりするぐら太く、曲げにくく、長いのである。狭いバッグのなかで、ACアダプタよりもコードのほうが容積を食ってしまう。しかもミッキー型3ピンコネクタなので簡単に他機器のものと差し替えるというわけにもいかない。もっとも、この問題は随所で議論されており、対策方法もほぼ確立している。
ACケーブル対策方法とめ→ ttp://civic.xrea.jp/2008/11/09/aspire-one-ac/
- 3PINケーブルの切断加工
- 長さあたりでの容積消費がでかい、という観点では純正と大差ない(必要長が非常に短い場合はこれでOK)。あまり長く伸ばす必要がないなら最善の選択肢だが...。
- 3PIN-2PIN変換コネクタを使う方法の欠点
- ACケーブルとACアダプタを接続したままの状態での全長が長くなる。抜いてから巻けばいいのだが、ぱっと仕舞う際に不便
- 社外品ACアダプタ購入
- 高い
- L型コネクタを購入
- かばんに入れる際、取り外さないと場所を食う。必要長が短くなる、テーブルタップにおいて他ポートと干渉する、垂直壁面以外のコンセントへの取り付けが少々きつい
で、キャズムを超えろ!なりの対策方法は『ACアダプタ側のガイドを削って一般的なメガネACケーブルが刺さるようにする』である。
意外に知られていないが、ミッキー型コネクタのミッキー耳に当たる部分の端子はメガネ型コネクタと同じ太さ。ガイドさえ削ってやれば。メガネ型ケーブルが刺さるというわけだ。ミッキー顔に当たるアース芯が丁度ガイドの役目を果たしてメガネの溝にきれいにはまるので、ずれて外れるといったこともない。
こんな感じで削る。削る前の形状はこちらを参考
削り終えるとアース線がガイドの役目をはたしてぴったり。
※リューターはダイソーでも売ってる(600円)のでこの機会に買っておくと、色々と工作するときに便利。
まとめ
サブノート、ネットブックとしては勿論有能だし、特にPCに深い興味を持っていない人ならメインPCとしても十分使えるものだということがわかった。トラックパッドの押しにくさは如何んともしがたい課題点ではあるが、慣れれば十分に使えるものではある。ファンレスにこだわる人はファンがあるとだめと言う意見もあるが、個人的にはファンがついていてよかった。ファンレスは上面または底面から熱を逃がすため、ひざか手のどちらかが熱くなってしまう。これが結構レッツノートで夏場辛かったので、ファンで熱を逃がしてくれるという仕様はありがたい、というわけだ。
よいと感じたところ
- ミニノートの中では外観に高級感があり、かっこいい
- ミニノートの中ではキーボードが打ちやすい
- メインPCとしてそれほど問題ではないぐらいの処理能力
- 薄い(29mm)
- 底面が熱くならないのでひざの上で長時間駆動させてもOK
- 十分なHDD容量(160G)があり、色々なアプリやデータを入れられる
- WiFiの物理的ON/OFFスイッチがついていること
よくないと感じたところ
*1:ホットキー機能が使えなくなる