「曲作って声乗せて広める手法の簡易化」と「趣味嗜好の多様化」の同時進行が音楽分野のテールを持ち上げ、結果ヘッドの母数を食ってく

意味不明なタイトルだが、先のエントリー「加速度的に「ミク曲+歌ってみた」がプロコンテンツの領域を侵食する、趣味嗜好多様化社会」への補足として読んでいただきたい。

先のエントリで言いたかったこと

ようはプロコンテンツが深いところに刺さりにくくなって、そのへんをネット発曲がフォローしてる感じってのが現状認識。プロコンテンツが深く刺さりにくくなったってのは昨今のJPOPがダメだからとかそういう話ではなく、趣味嗜好の多様化によってテレビ・ラジオ・メジャーレーベル&店舗流通といった従来の流通手段や制作手段ではカバーしきれなくなってきて、ロングテール現象じゃないけどテールのほうに比重が行ってヘッドが落ちざるをえなくなってきてるなと。

で、テールといえばこれまではインディーズだったわけだけど、インディーズはそもそも楽曲総数を生み出すいい仕組みがなかったうえに、検索機能とレコメンデションの仕組みもあまりいいものがなかったのでそのエリアをフォローしきれてこなかった。

対してミク(Vocaloid)+ニコニコはじめとしたネット加速装置は楽曲総数を生み出すいい仕掛けになったし、視聴者の母数・熱量やコメントシステムなども楽曲総数を引き上げる効果が出てるように思う。結果、ボカロ+ニコって組み合わせではインディーズがフォローしきれなかったプロコンテンツ(メジャーコンテンツ)が刺さりきれない層をフォローできつつある。しかもその仕掛けが、ノウハウの共有や一部楽曲のメジャー化による認知度向上などを絡めた母数の増加などにより、加速度的にうまく機能しはじめてきているなぁと感じている。

・・・という現状を見て「加速度的に「ミク曲+歌ってみた」がプロコンテンツの領域を侵食する」って書き方をしたのだが、なかなかうまく意図が伝わらず歯がゆい限り。

オリコンランキングがニコランキングに変わっただけというのは確かにそうなんだけど、「誰でも簡単に楽曲を作成・公開できてそれなりの歌が乗ってバイラル的に広がっていく仕組み」と「趣味嗜好の多様化」が同時進行することで、テールが持ち上がってヘッドの母数を食っていく流れになってきている、しかもそれって結構加速度的じゃない?テールがいい勢いで持ち上がってきているよね? ということを伝えたかったのだ。現テール(ミク曲+歌い手)がヘッド(アンジェラ、東方)と入れ替わるわけではない。が、母数は変わらない(か、むしろ落ちている)ので、テールを持ち上げた人たちはグラフの左側からしか流れようがない。実際ブックマークコメントなどで「最近メジャー聞かなくなったよね」とコメントしている方などが相当する。この現象をもって侵食と表現したわけだ。

意味不明っぽいけど図を貼っておく。見やすいようグラフはあえて極端にしてるので絶対値への突っ込みは遠慮願いたいところ。左側がちょっと減ったぶん、右側を押し上げるって流れを表現したかった...が...センスねぇw。

趣味嗜好多様化前の音楽フィールド↓
趣味嗜好多様化前の音楽フィールド

趣味嗜好多様化後+ボカロ&ニコニコみたいなものが普及した先の音楽フィールド予想↓
趣味嗜好多様化後+ボカロ&ニコニコみたいなものが普及した先の音楽フィールド予想

トラックバックへの返答

というわけでトラックバックに個別に返答しておきたい。

まあ、音楽がアニメとテレビからしか入ってこない人の意見だな、と思った。<中略>チャットモンチーとか東方神起とかアンジェラアキとかがしっくり来ないからってボーカロイドなんだよっていう。そこの飛躍が全く理解出来ない。
asian plastic dialy

趣味嗜好多様化でメジャー上位に来ているものでしっくりこない人が増えてんじゃない?という意見提起からはじまり、テールのほうを見ると面白いものが”すごい数”あるよ、という状況が面白い。ということを伝えたかった。メジャーがダメな人にはボカロが合う、というわけではないが「多様化」と「数」を合わせるとよさげな解(気に入った物が見つかる確率UP)がありそうだよね、と。

あと、VOC@LOIDはあくまでボーカルまで含めた作曲ツールであり、声は誰かが当てればいいとみているので、本題はボカロというよりはボーカルをイメージさせられる作曲ツールと多数の歌い手がマッチングされる環境にあるかなと。蛇足だが、個人的にミクの機械音声は奇跡的に調教された一部曲以外は好きではない。ボカロ好きの人には申し訳ないが。だから”ボカロ+歌い手”とタイトルにも入れたんだけどなぁ...とちょっと愚痴気味w

私の両親が仮にボーカロイド大好きになったとしましょう.それで,ボーカロイドがプロがやっている領域を食ったのかというと,全くそんなことはなくて,新たな価値が創造されたと見るべきでしょうね.J-POPに興味がないという事実に関しては何ら変わりがないのです.

ボーカロイドとか (Relations)

個人的にはid:avenueさんの意見に近い。ただ、1年前なら、あるいは5年前ならメジャーのJPOPに興味が行っていたであろう人がボカロ+歌い手といった領域に興味を持ってしまえば、それは「領域を食った」ということにならないか? と感じる。食った、食わない、侵食した、しないといった言葉のニュアンスによって微妙な認識のずれはありそうだけれど。

昔から年を食えば流行りの音楽には興味を示さなくなる時期が出てくるものだったが、その現象が起こる時期が早かったら? はたまたそもそも流行りの音楽に興味を示さない状態が若いころから続くような人の数が増えてきたら? てゆーか後者に関しては趣味嗜好の多様化によってすでにはじまってんじゃないの? という見かたをしている。そういう意味ではボカロやニコニコといった固有名詞はさておき、誰でも簡単に楽曲を作成・公開できてそれなりの歌が乗ってバイラル的に広がっていく仕組みができたことは、ちょっと長い目で見ると「メジャー領域が食えるパイを減少させた(侵食した)」という言い方ができるのではないかなぁ、と。


つまり、まず「最近いいのが……」とか言うのは年取ってきた証拠というのもあると思うし(自分も含めて!)、探してないからだろう。この人の場合、それをたまたまニコニコ動画とそのユーザーが探してきてくれたという状態だろう。ニコニコユーザーのトレンドが変わればまた「最近いい曲が…」なんていい出すんじゃないだろうか?

りゅんぱっく日記 -やることやって、それから死ぬ- - なんか違和感

ここまでの間に書いたとおりだが、ミク+ニコニコというのは現時点での象徴的なキーワードにすぎないと思っている。「誰でも簡単に楽曲を作成・公開できてそれなりの歌が乗ってバイラル的に広がっていく仕組み」と「趣味嗜好の多様化」が同時進行により加速していくという現象そのものは変わらず行われ、発表者も視聴者も増えていくのではないのかなぁと。今ある固有のもの(ミク、ニコニコ)は変わってゆくが、そういった手法(スキーム)そのものは確立してしまえば変わりにくい。ミクではない作曲・ボーカル乗せツールになっても、ニコニコが第2第3のニコニコ動画のようなもの(Crunchrollとか)に変わったとしても、テールが持ちあがってメジャーよりの人を引きこむ流れは止まらないのではないかなぁと。勿論それでメジャーがなくなるわけではないのでどこかで止まるのだろうけれども。

※あ、ちなみに「探してない」はそのとおりだし、たまたま私の趣味嗜好的にニコニコとそのユーザー達のセレクションが合ってたよね、というのもそのとおり。

オリコン新曲で自分の好みの音楽が見つからないのなら、インディーズがある訳で、そういうところをなんで追いかけないのだろうか? 音楽に出会う回路がなぜオリコンランキングのみ? 初音ミクを経由しないと、アマチュアミュージシャンに目を向けない? そのことを考えると、この記事の結論に対しては、オリコンニコニコ動画のランキングに変わっただけだよなーとと思えてしまう。

音楽に出会う場がオリコンのランキングからニコニコ動画のランキングに変わっただけじゃないの?(artifact)

私個人にとってはおおむねご指摘のとおりかな、という状況。音楽に目を向ける時間もないし興味もないし、そもそもインディーズなんてどうやって探したらいいかもわからない。いくつかのインディーズサイトを見てみたけどカチリとハマる曲がみつけられなかった。たまにあるけど1曲だけ、みたいな。ただ、個人的な部分はあくまで例であり、流れとして「誰でも簡単に楽曲を作成・公開できてそれなりの歌が乗ってバイラル的に広がっていく仕組み」と「趣味嗜好の多様化」が同時進行することで、テールが持ち上がってヘッドの母数を食っていく流れになってきている、しかもそれって結構加速度的じゃない? というのが主張したかった部分である。

あとがき

Blog書き始める前はいっつも読んでたid:kanoseさんのとこで色々突っ込んでいただいたので敬愛の意を込めて返答をしようと思ったら長文になっちまった。私が先に書いたエントリが言葉足らずだった、あるいは文章力がなく伝えきれなかったのやもしれないが、「ネット発の○○は良くてメジャーはダメ」みたいな話を書いたつもりはないので、そこんとこが伝わればいいなー、と。タイトルはちょっと狙っているのでそう見えなくもないかもしれないが。

あと、元エントリはつぶやき的エントリーのつもりだったのだが割と反応があってびっくり。みんな結構音楽に興味あるんやねぇ...。偉そうに書いてるが音楽の深いとこはまーったくわかってない。なのでミク曲なんて所詮JPOPテイストじゃんとか言われても「それって何ですか」状態。音楽ジャンルとかもよくわからないし...。メタルってものが何を指すのかもよくわかってないけどRainmakerのころのFairWarningとかAngraは好きだったなぁ。

そして久々に他のBloggerの意見を引用してあれやこれやと書いてみた。頭の体操的にたまにはこういうのもありかな、と。