エレベーターの閉じる/開くボタンのUI改善 〜日本マーケット向けの決定打は『ひらく』ボタンの撤廃だ〜

fladdictさんところで話題になっていた『エレベーターの閉じる/開くボタン、間違って押す。あそこのUIはよくない』という話。いろんな人を巻き込んで、こういうUIなら閉じる/開くを押し間違えないぞ、というUIアイディアコンテスト状態に。なんて面白いことやってるんだ俺も混ぜろ!ってことで考えてみたのだけれど、どうにもデザインを提案しているみなさんの方向性が皆して『ひらくボタンを目立たせよう、大きくしよう』という方向に。詳細はこちらのNAVERまとめ参照

........なんでやねん!と。100回言いたい。

何十年と使い込まれたエレベーターを見て、とじるボタンのほうが明らかに押されまくって印刷がかすれたり、傷だらけになったりしているのをみんな知ってるだろうに。ひらくボタンは緊急性が高いから目立たせようという話なんだろうけど、だったら故障時の緊急呼び出しボタン(係員と電話するアレ)のほうが100倍緊急性が高かろう。


そもそも根本的な話として、ひらくボタンはどういう時に使うのか? それは閉まりかけのドアに無理に入り込もうとする人を助けてあげるときや、先に入った人が後からくる人のために開けて待っているというシチュエーション。でもそれって、エレベーター利用者全体のUXを悪化させていると思うわけですよ。そもそも駆け込み乗車(乗籠?)は危険だからやるべきじゃぁない。また、Aさんが先に入って、歩みの遅いBさんのために開けたまま状態を延長することは他の階で待つユーザのUXを悪化させる。ひらくボタンが存在することによって悪化するUXはもっとある。駆け込み乗車しようとするCさんを先に乗った(こちらも急いでいる)Aさん見限るケースもそうだ。Cさんとしては『あ、あいつひらくボタンを押さずに俺を見捨てやがったな』と感じるし、Aさんとしても『もしAさんが間に合ったら、ここでひらくボタンを押さなかった私を恨むだろう。でも私だって急いでいるからあなたを待ちたくはないのだ....』と心おだやかではなくなるはずだ。


そこで、最高の解決策として『ひらく』ボタンを撤廃してしまう。こうすることで、AさんBさんの事例はそもそも存在しえなくなる。Aさん+Cさんの例においてCさんは恨む対象がなくなるし、Aさんも『Cさんを助ける手段がないからしょうがないよね』となる。いいことじゃないかと。


そんなことより何より、大多数の『とじる』ボタンを押すユーザ、という立場にたったとき現状のUI設計はだめすぎる。閉じるボタンを押してから閉まり始めるまでのタイムラグがユーザーを不快にし、結果として『とじる』ボタンを連打しながら『ちっ、おせぇなぁ....』と感じてしまう。これはよくないUX。


というわけで、急いでいる状況でエレベーターにのって1秒でも早く目的階にたどり着きたいという多数派日本人のためのUIを設計してみた。
エレベーターの閉じるボタンUI改善案



このUI設計は下記のような流れで行われた。まず、現状の洗い出し。

  1. とじるボタンとひらくボタンを押し間違える(fladdictさんの元ネタで、最重要な要改善UXと設定)
  2. とじるボタン/ひらくボタンの場所がわかりにくく、認識して押すまでに1テンポ遅れて不快
  3. とじるボタンを押してからドアが閉まり始めるまでにラグがあり、何度も押してしまう(イライラする)
  4. 自分は急ぎたいが、駆け込み客のためにひらくボタンを押さないと悪者扱いされる恐れ

そこから改善案を出していく。まずはUIを作る前に何をするかのリスト出し。

  1. とじるボタンを目立たせる
  2. ひらくボタンを撤廃
  3. とじるボタンを押したことを明確にフィードバック
  4. ボタン操作から操作完了までの間に時間がかかる処理は、残り時間を明示

守るべき実装仕様を確認し、齟齬がないか確認。

  1. 日本語が読めない・色弱・視力が弱い・車椅子といったハンディキャッパーにとってのUX悪化がないか → ひらく撤廃はむしろシンプルで良い方向
  2. 危険性はないか → 駆け込み乗車は危険。このUIは駆け込みを抑止する。挟まる人が居ても怪我はしないようエレベータ側にFailSafeが仕込まれている

実際のUIに落としこみ、確認....という感じか。階間移動中に閉じるボタンをinactive状態で保持するかどうかは結構悩ましい。一応ドア閉まりきったらactiveに戻す仕様で作ったけれど、目的階についてドア開ききるまではinactiveのままというほうがフレンドリーかなぁとは思った。ここは微調整のエリアですな。