サブブランドとメインブランドの狭間で 〜どうしてPanasonicはeneloopブランドをぶっ壊したのか〜

まず、本エントリーの執筆にあたってPanasonic関係者1名たりとも話を聞いていないので、すべて推測と妄想と予想で書かれている空想科学読本みたいなもんだと思って読んでほしい。

元ネタはこのへん『新しいeneloopのロゴデザインが酷すぎると話題に痛いニュース)』など多数。
パナのブランドまわり予備知識はこっちで。

で、まとめBlog界隈や観測範囲のヲチャー達の論点はだいたい一致していて

  1. eneloopというすごくいいブランドがあったのにこれを蔑ろにするとは何事だ
  2. eneloopという定着したブランドを捨てると売上悪化するだろうが
  3. パッケージのデザインがかっこわるくなった
  4. 買収しました自慢みたいに感じるよね

えーと、まぁ4は論外として1と2、ちょい3について。

サブブランドって本来的には使い方がすごくむずかしい。このBlogを読んでくださるようなアイアムビジネスマーン(シャキーン) アイライクニッケーイ(ジャキーン)みたいな人は全日本人の多数派ではない。いまや単三形ニッケル水素電池なんてものは中学生からシニアまで誰もが買う、歯磨き粉や整髪料レベルの商品カテゴリになったと言える時代。そんな一般的な顧客からみて、eneloop三洋電機が結びついている人は少数派だったろう。笑い話だが、Panasonicが出していたコブラトップっつぅ超絶懐かしいラジカセを中学・高校時代愛用していたけれど、まさかそれが松下電器産業株式会社の製品だなんて大学二回生になるまで知らなかったからねw まぁ個人的な無知の話はさておき、あそこまでブランドネームを前面に押し出すと、本当に誰が作っているかわからなくなり、ブランドだけが独り歩きしていって当該商品カテゴリはものすごく強化されるんだけれど、コングロマリット的超大企業でやってる意味がなくなる。つまり、eneloopが売れまくって認知されまくった結果、GOPANが売れる、Gorillaが売れるという話になってほしいわけである。

確かに定着したブランドを差し替えると変えると顧客が離れる可能性はいくばくかある。しかし、圧倒的な市場シェアを握ってしまった後であれば、これを変えてメインブランドの訴求に使ってやろうというのはなかなか良い方法ではあるのだ。圧倒的シェアを持っているということは市場の大半がブランド名なんてどうでもいいと思って買っている層であり、パッケージデザインで半ば自動的にかごに入れるぐらいとなっているはずだからだ。

わかりやすい話で例えよう。今日から平和堂のロゴがヨークマートのロゴに変わったとして、これは嫌だから、これは疑わしいから他の店(イオン等)に行こう、とはならない。ちなみに小ネタだが、平和堂ヨークマートセブン&アイHD)のロゴは酷似していてどちらもスーパーマーケットなのだが、平和堂セブン&アイHDの傘下企業ではなく、れっきとした独立企業である。


読者の皆さんが当事者にならないと話が理解しづらいというのなら、逆パターンをイメージしてみるといい。いつも使っているトマトケチャップ、どこの会社が作っているか知っているだろうか? 『デルモンテ!』と答えた人はeneloop三洋電機が結びつかない人と(食品業界においては)同レベルだ。パッケージをよーく見てみると、キッコーマンと書いてあるはず。でも、デルモンテトマトケチャップのパッケージがデザインそのまま文字だけ明日からキッコーマントマトケチャップに変わっても、多分人は気づかずいつものデルモンテだと思って買う。普及したブランドとはそういうものだ。トマトケチャップにおいてはカゴメとハインツがいるので話がややこしくなるが、実質的にデルモンテトマトケチャップが日本国内シェア90%というような状況であれば、上述した例は説得力があるはずだ。eneloopはいま、そういう状況なのである。

デルモンテトマトケチャップがキッコーマントマトケチャップに名称変更してその他キッコーマン商品のブランド強化に寄与させる、ということができないのは、トマトケチャップ市場に強大なライバルが2社いるからに他ならない。デルモンテ名を捨てた瞬間にケチャップ市場でのシェアを大きく失う可能性があるからだ。しかし、eneloopにはその可能性がほとんどない。なぜならばほぼ1社独占といえるほどの市場シェアを誇っているからだ。であれば、変更して他ブランドに良い影響を与えてやったほうが得というわけ。


結果、至る所でPanasonic柄の電池が目撃されるようになり、ブランドが刷り込まれ、そこまで深く調べて買おうということのない商品を買うときにPanasonic製なら安心かなとか、よくわからない、なんとなくな理由によりPanasonic製を選ぶ人が増えてくれる。その"なんとなく"はなるたけサブブランドを抑えてメーカー名を全面に出したコモディティプロダクトが醸造してくれるというわけ。なので、一般的にはコモディティ品ほどサブブランドを避ける方向に行く。ニッケル水素電池って5年前はまだまだコモディティになってはかったのでサブブランドありだったのだろうが、今の普及具合を見るともうその時期は終わったのかなと読む。単にブランド統廃合の手間かかっただけなのかもしれんけどさw

そういう意味....つまり、サブブランドが爆発的に普及して市場を寡占してしまったらメインブランド名に戻して他商品への+α効果を期待する、というアクションが一般的だとすれば、モバイルブースターをやめてパナソニックのモバイル電源ってしたのはちょいとだけ早すぎた気もしますが、英断だったのかなーという気はする。あの件について、業界人は名前がダサいよねという話にはなるんですが、それは先の例に出したデルモンテトマトケチャップがキッコーマンになったらきっとみんなダサいというでしょw それといっしょかなと。 



もっとも、そういう世界は徐々に狭くなってきている。少しでも調べれば豊富に情報が出てくる時代となり、何となくのブランドイメージでものを買う文化は縮小傾向だ。だからこそ、こういう仕事をやっているのであるw

おまけ: LUMIXPanasonicでは異色中の異色

そうそう、一応これ書いておこう。私の知る限り、Panasonicロゴよりサブブランドやプロダクトネームが大きく、目立つよう表示されている商品は今のところLUMIX系だけである。結構面白いので調べてみるとよい。ちなみに国内有名カメラメーカーの製品で前面にメーカー名が出ていないのはリコーのGRとPanasonicLumix系のみである。リコーはGXRでは前面メーカーロゴを復活させていることから、全モデルでサブブランドのみを前面表記しているのはPanasonicだけということになる。だからどーしたという話だけれどw

おまけ2: ソニーのバイオ&エクスペリア系サブブランドについて

ソニーがバイオをサブブランドと設定しているのかプロダクトネームと設定しているのかは知らないが、ここでは仮にサブブランドと呼ぼう。

ソニーのモバイル機器まわりのサブブランドは結構色々あってヲチしていて面白い。ノートPCを中心としたブランドとして知られるが実は1号機はAV編集用デスクトップPCだ。家庭用PC/AT互換機参入、ってことで付けられたサブブランドだったわけだが、その後ノートPC中心とするサブブランドとして確立。一昨年から携帯電話ブランドのXPERIAが合流した中でiPadショックが起き、さぁこれからはタブレットもやらにゃいかんぞとなったとき、気合が入りすぎたのか、『ソニータブレット』として驚きのソニーブランドでの展開を開始。

ちなみに商品名にソニーって入ってるソニー商品って実はめっちゃ少ないのでは?

まぁそれぐらい気合入れて飛び出したソニータブレットの結果がいまいちだったのかどうかは知るよしもないが、翌年モデルから『XPERIAタブレット』にまさかの名称変更。最初は某通信キャリアさんとのお上同士の話し合いでメーカー名を製品に入れるのはやめてくれ的な話だったりしたのかなーとか勘ぐっていたんですが、海外の展示会でもSony tabletの名称をやめてXperia tabletというものだから、これはやっぱりブランド設定で何かあったなと。まぁ平易に勘ぐるならうまくいかんかったんでしょうねと。さっきのeneloopの話とは逆方向ですが、大きな会社であればあるほど本体ブランドで攻めるというのは商品のカラーが薄まることになる。当然、大きな会社とは様々な商品を出していることが多く、様々な他商品のイメージからユーザが勝手に商品のイメージをつくりあげてしまう。

ソニーといえばオーディオ機器という感じのユーザからは、『ソニータブレットってんだから、音にこだわってるんでしょ?』という感じで。そういう方向でハードルを上げて商品を見に行って、そこが拘られてなければ落胆してしまう。本当はソニーといえばレコーダー、というユーザの心を掴みたくて作ってDLNAまわり作りこんだのに!!という裏があったとしても、前述のユーザには伝わらない。で、肝心のレコーダーのユーザーはレコーダーのブランドを冠してないが故に目にも止めてもらえず二兎を追って両方外した的なことになりうる。だったらスゴ録タブレットとかにすればよかったじゃない!というのが現状で、Xperiaブランドで再出発となったんだろうなぁと。あ、レコーダーユーザー向けに作ったとかは例え話で勿論嘘っぱちですよw DLNA周り頑張って作りこんでいたのはしっているけど、あくまでオマケって感じだったし。

eneloopの事例に近いけれど、ちょっと違うところでSonyは最近この業界では珍しい『サブブランドやーんぴ』をやった。それが例に出したレコーダーだ。10年ぐらい続けたスゴ録というサブブランドをやめて、『ソニーのブルーレイ』に帰ってきた。これはちょっと面白い流れ。ちなみにレコーダー業界では、TOSHIBAもバルディアをやめてつい最近『レグザブルーレイ』に名称変更した。こちらはサブブランドをやめたのではなく、ブランド名変更である。レグザブランドとの相乗効果を狙ったものと思われる。

どうしてソニーは無印に戻ってきたのか? は色々と思うところはある。でも、スゴ録は以前からすごく違和感があるサブブランドで、商品にロゴが付かなかったんですよね。そりゃ、日本語はかっこ悪いでしょ、という話なんだけれども。あれだけスゴ録!ってCM打ってたのに商品にロゴなしってのも珍しいケースでしたなぁと。


ちなみにシャープはそもそもDVDレコーダー時代、HDD/DVD時代で出遅れ、AQUOSブルーレイから実質参入してきたようなものだが未だAQUOSブランドで統一のまま。
PanasonicはDVD時代の頭はサブブランドなしとし、HDD/DVD時代最初はHS系の名前だったがすぐDIGAとし、テレビのVIErAと併存を現状も維持。
東芝はRD→VARDIAREGZAレコーダと迷走している感じ。
ソニーClip-onという名機に続く無印(RDR)・スゴ録PSXCoCoonの怒涛4並列時代を過ぎたらスゴ録だけが生き残ってその後"ソニーのブルーレイ"へ。

まとめ

サブブランドなし時代→サブブランド時代→→→またまたサブブランドやめる時代、って流れなのかなーと。ソニーのレコーダーはまさにその流れを通しでやった感じ。SANYOからパナソニックに変わったので違和感あはるが、SANYO電池→eneloop→SANYO電池(社名変わったんでPanasonic電池だけど)となっただけで、この業界よくある話じゃないのさ?というのが個人的な感想である。個人的にはPanasonicがひっそりとD-Snapブランド最後の一品であるポータブルオーディオプレイヤーをディスコンとし、数十年続いたポータブルオーディオプレイヤーを商品群から外したのが残念でならない。最初はカメラだったのにいつのまにかオーディオ機器のブランドになっていた変態プロダクトネームだったのになぁ、D-Snap(www


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