家電業界内部から見たCES2009雑感 その2
もうCES2009のことなんて忘れて世間の注目は PMA2009に移っているころではあるものの、レポートがその1で止まったままだと居心地がわるいので簡単ではあるがその2を書いておきたい。「家電業界内部から見たCES2009雑感 その1」では大手ブースを中心とした概要を伝えたので、ここでは個別の会社の細かな商品で目についたものをPickupしてゆきたい。
Android搭載ハードウェアのODMというビジネスは成立するか?
Touch Revolution社のブースではAndroid搭載non-handset-deviceをdemo。ケータイではなく、家庭用機器としての Android端末だ。UIがケータイ向けと同じあたりはご愛嬌だが、このあたりのカスタムが進めばこのマーケットは面白くなるかも。下記Touch Revolution社のWebにてDemoVideoを見ることができ、映像の最後でODMについて触れている。ちなみにこのデバイス、624Mhzの Xscale系CPU(現Marvel)で動いているとのこと。バッテリでの長時間駆動はちょーっと荷が重い、かな?
$300で 2009/Q3に登場とのことで、ODMのMOQ(Minimum order quantity)はいくつなんだい?と聞いたら1万台orz いまどきそりゃねーべよ。まぁでも昨今のAndroidOSに対する大手企業の無駄な盛り上がり感を見るに、小さい案件相手にしてられないぐらい人気がある、という状況なのかもしれない。
ソニーの"Flip潰し"はビデオカメラ市場にどんな影響を与えるのか
「MHS-CM1 Webbie HD」と、縦型モデル「MHS-PM1 Webbie HD」を発表した。価格は、MHS-CM1 Webbie HDが199.99ドル、MHS-PM1 Webbie HDが169.99ドル。同製品は、低価格のハイビジョンハンディカム。メモリースティックPRO Duoを別途購入し、16GBで1,080ピクセルのハイビジョンムービーを340分録画可能だ。
http://www.rbbtoday.com/news/20090108/56902.html
今アメリカで売れているビデオカメラは、SONYやPanasonicじゃなくAiptekやFlipといったメーカーの品。それなりの画質で低倍率ズームしか搭載しないが、HD(720pや1080p)の動画が撮れて小型軽量、PCフォーマット(MOV等)だからYouTubeにもさっとUPできる、というシロモノ。このへんはみたいもんのいしたにさんあたりのレビューを参考にしてもらえばわかるが、とっても良い出来のため、十数万円するソニーやパナソニックのハイエンドビデオカメラ市場をずりずりと侵食しているというわけ。
こういうパターンにはまると、大手家電メーカーは「ツブシ」と呼ばれる商品を突っ込んでくる。目標価格と目標スペックだけを置いて企画し、儲からなくてもいいからその市場を潰すための商品。CES2009に出品されたWebbieがそれにあたるが、果たしてこいつの投入は北米市場におけるFlipやAiptekを駆逐し、市場を再び大手メーカーのハイエンドビデオカメラ一色に戻すことができるのか?
....ま、たぶんできないんだけどさ。といってもこういった小型フラッシュメモリ型HDカムのトップシェアは取るはず。だからといって競合他社が死に絶えることはなく、この種のデバイスの存在そのものを消し去り、高価格帯商品にゆり戻しをかけることがたぶんできないだろう、の意。
ちなみに「ツブシ」かそうでないかを判断する良い方法は、競合品が猛威を振るっている市場以外に投入されるかどうかを見ること。まだハイエンドなカメラが売れまくっている市場にこいつを突っ込んでしまうと、平均販売単価がガタ落ちしてしまう危険性があるからそうそう突っ込めないはずなのだ。勿論「市場が求めていない」という可能性もあるので一概には言えないが、人類みな兄弟(ぉ FlipやAiptekの便利さを知った不況下の日本人はこういうデバイスに手ぇ出しちゃうと思うけどねぇ...。
前置きが長くなったが、WebbieでFlipが駆逐されるのか、はたまたFlipやAiptekが生き残るのか。 Aiptekは駆逐されるかもしれないけど、Flipほどの割り切りのよさはSONYには難しいので、FlipはWindowsに対するMac的な位置づけとして生き残るんじゃないかなぁというのが個人的見解。静止画機能を捨ててUIを簡素化したり、ボディカラーをオーダーメイドできたりといったスキモノが喜ぶ対応をFlipを提供するPureDigitalTechnologies社はよくわかってる。
※CESなんかに出てこないあたりもFlipのCoolなところ...(w
有線LAN→超低消費電力無線→電池駆動デバイスへ情報配信、というデバイスの可能性
前々から出てはいるが、これから結構くるんじゃないかなぁと見ているのがコレ。
http://www.lacrossetechnology.com/weatherdirect.php
ネットから天気予報をダウンロードして時計形デバイスに配信するという、バカみたいに単純なハードだけれど、子機(ディスプレイ側)を乾電池駆動で2年間交換不要とするために、有線LANで受けた転記情報を低消費電力無線(Zigbeeみたいなもん)に変換して子機に飛ばすための親機(Secure Weather Gateway)を組み合わせるというテクニックを用いている。
これは低消費電力の実現というだけでなく、難しいWiFiのセットアップを不要とすることができるかなり頭のいい解決策。さらに、室外温度を計測するユニットも簡単に追加することができる。勿論室外ユニットも単三乾電池で2年間稼動する。
で、さらに詳細なWeather Alertがほしければサブスクリプションモデルで課金せよ、というパターンにはめている。なかなかうまい。日本だと天気予報に加えて「占い」と「交通機関障害情報」なんかがハマりそうだと直感。
テレビを見ないPC普及国におけるHDDレコーダーの最終回答はNetgear EVA-9000か
あんまりメディアに取り上げられていないのは、2008年末に発表されていたからかもしれないNETGEARのEVA-9000。こいつはAppleTVの進化版と取っていい。デザインを除いて。
細かいところはEngadget USの記事に譲るが、ユーザーが交換可能なHDD(一般的なSATA3.5インチが使える)と、およそPCで扱う動画ファイルのほとんど(マトリョーシカだってOK)をサポートするCodec setを備え、YoutubeやNetflixがStreaming配信するHD動画を受信することができる。これらのオンラインサービス用には専用の GUI(like as apple TV)が用意され、リモコンで簡単に操作することができる。ちょろっと使わせてもらった感じではAppleTVのYoutube機能よりよっぽどよくできていた。
こういうPCペリフェラル系メーカーのGUIは糞、というパターンがこれまで多かったけど海外メーカーはこのあたりに金をかけはじめているのがよくわかる。iriverとかその筆頭かな。
2009年春には出るらしいこの端末、ネックは$400という価格。でもPCが普及していてそれほどTVを見るわけじゃない国(ex. USA)ではこの値段でこの端末はもしかするとありなんじゃないかと思うところもあり。
さて、これを見て市場がどう反応し、それによって競合他社がどう動くか。興味深い。
※タイトルは"最終"と"EVA"を組み合わせたかっただけ(ぉ