デザイン重視のPCはなぜ出ないのか!?

Appleに慄くメーカー....か?

またタイトルに!?が復活....センスが無いのは承知のうえだ。
AppleのBootcamp提供により、各所で「旧Wintel陣営のPCベンダーからAppleがシェアを奪うのでは?その切っ掛けになるのはデザイン性」なる記事を見る。遅れた頃にやってくる事で有名な日経ビジネスあたりでは2,3週間後ぐらいにネタにしてくるのではなかろうか。『国内PCメーカーはAppleの攻勢をどう凌ぐか』なーんてタイトルで。
個人的には大したユーザ移動は起きないだろうし、起きて欲しくないと思っている。特に根拠があるわけではないが、ナンバーポータビリティでユーザ大移動が起きる起きない論に似て、マスコミだけが騒ぎ立てるという結果になるのではなかろうか。
至極個人的な思いとしては、理系出身男児にとって、全てのハードウェアはスペックが重要であり、スペックを追い求めるが故に自然と形成されるデザインこそが至上のものと思いたい、というのもある。銃器やF1マシン、戦闘機や工事用機械のように。

スペックは足りてるという事になぜ気づかない!

それはさておき、これだけPCがコモディティ化してきたのだから、国内PCベンダーのどこかからか、『デザインPC専門ブランド』みたいなものが出てきてもよさそうなものだが、なぜ出てこないのかを少し考えてみたい。

ネットやPCに詳しい世界に住んでいる方なら100もご承知だろうが、一般人*1にとってPCで行うほぼ95%の作業は3年前のPCでも十分に行える。

明らかに一般人ではない人へのアンケートでも、上位5位までは3年前のPCでも十分事足りそうな用途でPCを使っている。6位以下には動画編集、プログラミングといったマシンパワーを必要とする用途が多いが、多数派では決して無い。また、逆に一般人が多そう(年齢層,サイトの内容から推測)なアンケートでは、5位のゲームを除いて*2全てにおいて「メモリさえツンデレPentium III - 1Gで十分」な用途が主である。

とはいえ、インフォプラント・ジャパンインターネットコムの調査によるとPC購入の際に大半の人はスペックと価格を重視する傾向がある。まぁ、お金を出して購入する商品において価格を重視しないなんてことはありえないので価格については横へ置くとしても、「PC購入時に最も重視するポイント」にデザインと回答したユーザが実に男性0.03%・女性0.01%というのには驚かされる。調査時期が古い(2000年末)とはいえ、ユーザの意識はそう変わっていないのではいだろうか。何方か新しい調査結果をご存知であれば教えて欲しい(重視するかどうか、ではなく第一の判断基準とするかどうかについての調査結果が欲しい)。

「デザインを考慮に入れる」ユーザがほぼ90%もいるのに、結果的にどれもこれも似たようなデザインの商品ばかりが並ぶPCコーナーを見るにつけ、何でデザインで攻めるメーカーがいないんだ?という疑問に駆られる。PCを作ってる部署の連中と話をすると「だってほとんどの人はスペックで買うもの。あとはブランドと価格だけど、唯一無二のスペックがあれば価格が高くてもOK」と口をそろえて言う。

ユーザーさん、騙されてんぢゃない?

いや全くそのとおりだろう。デジカメの画素数といっしょだ。スペックが低くてもOK、なんて記事は、PCメーカーが主要な広告主である現状、各PC雑誌は扱えない。また、ネットメディアを見てみても、パワーユーザー対象のメディアがほとんどで、そうなるとどうしてもスペック重視の記事構成となる*3。結局ギョーカ9みんなでグルになって、PCはスペック重視で買わなきゃだめですよと言う空気を作り出しているのだろう。一般人はいつその事に気づくのか。気づいた時、MACかどうかはわからないが、デザイン重視のPCへどっとユーザーが流れ、価格重視PCとデザイン重視PCの2極化が起き、一部マニアックなユーザ層向けにのみスペック重視PCが残るという構図になるだろう。時計・洋服やインテリア類などはずっと前からそうだったが、ここ数年で自動車と携帯電話がこの構図へと落ちた。次はPCだろうというわけだ。

デザイン重視PCの可能性

というわけでやっとのことで本題。日本国内のPCメーカーで、SONYはある程度デザインに気をつけて製品をリリースしているが、あくまで「価格とスペックの兼ね合いを最重視した上で、価格が跳ね上がらないようにしつつデザイン部門にやりたいことをやらせた」程度のものだ。家電メーカーの中の人としては、マスマーケティング商法におけるデザイン部門の厳しい立場は痛いほどわかる。それは商品を眺め、軽くバラしてみるとすぐわかる。デザインを向上させるがために構造を複雑化させたり、高価な素材を使ったりというアプローチは許されていないのだろう。ましてやデザインを追求して消費電力がUPするなど言語道断である。LEDの普及で多少はやりやすくなったが、例えばブランドロゴが7色切り替わりつつ浮かび上がるようなギミック、全面ぼんやりと青く光るキーボード、などは言語道断というわけだ。

どこかのタイミングでどこかのメーカーが面白いことをやってくれると期待している。が、悲しいかな日本の家電メーカーで「今」それが出来るメーカーはどこにもないような気がする。

意外なアプローチとして、ファッションブランドやデザイン家具メーカーあたりが、台湾あたりのPCメーカーからBTOマシンをOEM調達し、自社のデザイナーに外装をデザインさせて

PRADA-PC

とかやってくるんじゃなかろうか。『外装には0.2カラットのダイヤを大胆にも4つあしらい、ピンクゴールドのコーティングを施した春らしいデザイン』なんて売り文句のPCが109で売られる日が来ちゃったりして...。携帯電話では以前、三菱電機がファッションブランドの4゜CとコラボレートしてD505i PREMIUM-EDITIONを出したが、そんなケースも出てくるかもしれない。どうでもいいがTifosiとして心突き動かされないAcerFerrari-Editionなんて駄目すぎる前例は要らない。ドライカーボン天板で定価5万UP、なんて博打には出てもらわないと。

まぁサポートの事とか考えると家電メーカー・PCメーカー以外が参入するというケースはあり得ないとは思うのだが、Appleの攻勢に対して日本のPCメーカーが何かデザイン重視PCを出してきてくれないかなぁとちょっとだけ期待してしまう。冒頭でデザインPC否定派だと明言したものの、どれもこれも同じデザインばっかりで何をやってるんだ日本の家電メーカー! と思っているのもまた事実。多分、社内でも同様の事を言っている人間は多数いるのだろうが、ディシジョンメーカーとなる人間は「今」のことしか見ていないのだろう。家電メーカーの株価が復調した暁には、こういったトライアルも仕掛けて行ってほしいものである。

でもひょっとすると『購入後のサポートは○○電気までお問い合わせください』なんて張り紙をつけて本気でやりだすファッションブランドがあるかもしれない。

最後にわりと詳細なアンケート結果をFreeで提示しているサイトがあったのでリンクしておく。ご参考迄

参考URL:http://c-news.jp/c-web/pdf/pressrelease/press050223.pdf

*1:言葉の定義は常に曖昧となるのでここで厳密に定義。「CPUとRAMの違いがわからないひと(或いはラムって何か知らないひと)」「会社としての『はてな』の存在を知らないひと」「『FTP』って何のことだかしらない」以上3つの条件のいずれか1つを満たす人を、ここでは"一般人"と定義しよう。適当な定義だが、30歳独身女性でipod持っててwinnyって怖いよねーなんて言いつつMAC使ってるような人はだいたいこのへんに入るはず(ぉ

*2:本格的にやるのであれば4位の音楽画像の編集管理もパワーが必要だが

*3:昨今は静音・省電力という切り口も多いが