WOMマーケティングを実施したから "ネットに悪評が溢れた" という論理は間違っている
ソニーのヤラセBlog事件みたく、マーケティング手法そのものが適切ではなかった場合を除いて、ネガティブなこと書かれちゃ困るからWOMマーケティング/コミュニティマーケティングはやめよう、という考えはちょっと違うんじゃない? という意見。
「口コミマーケティングやりマース」「Bloggerにモノ配って評価書かせマース」「Bloggerイベントやりまーす」なんて話を最近よく聞く。そんな中、「うちの製品についてひどいことを書かれたらどうするんだ!」という指摘の声は、お偉方からいつも上がってくる。現場の連中だって少しでも否定的な意見を持つ者は必ずそう言ってくる。「リスクの大きさに対してリターンが云々」だとかなんとか、ね。
だが、製品そのものについて「使いにくい」だとか「デザインがいけてない」みたいな否定的な意見を言うことができる人たちは一億二千万人....とまでは言わないが、ネットを使えるすべての人たちにあることを忘れてやいないだろうか。まぁBlogを開設できるスキルがある or mixi等コミュニティサイトへの書き込み権限持ってる人数としても2000万人は下らないはず。ダメな物を作ったらそりゃぁ叩かれても当然だ。自信が無い商品を売ろうとするべきではない。
何が言いたいかというと、「製品そのものに対するネガティブ評価がネットに書かれる」というリスクは、結局のところ製品の出来が悪ければ自然発生的に起きるし、良ければ起きない*1。クチコミマーケティングを行うから起きるリスク、ではないのである。
つまり、"ネガティブ評価リスク"は、企画そのものではなく製品そのものによって左右されるはずなのだ。*2
また、Bloggerを集めての講習会(説明会)などで社員が壇上に上がり「ポジティブに書いてもらえるだろうと期待する機能/性能」などをプロモーションすることで、ともすればネガティブなエントリーを上げていたであろうユーザがポジティブなコメントを書いてくれるかもしれない、という点も忘れてはならない。
この商品の画質は正直なところ某社さんの某製品とくらべると良くない。だが、小型化すると○○ノイズの問題が発生し、画質が落ちることは設計上の常識。小型化と画質は常にトレードオフの関係にあった。今回弊社の製品では世界最小を実現したため確かに画質は犠牲になっているが、これだけ小さいにも関わらずここまでの画質を確保できているということは業界では画期的な技術なのだ。
なんて説明をすることができれば、「画質悪杉。糞製品決定。 〜このスレは終了しますた〜」なんて書くタイプのユーザでも、もうちょっとマシなことを書いてくるはず。イベント用に機器を十数台用意するコストや運営コストをさっぴいても*3十分に魅力的だと思うのだ。
おまけ
あと、よくある中間管理職的意見が「2chやBlogで勝手に悪評を書かれることは無視していい」「神聖かつ皆が見る自社Webページから悪評ページへのリンクは例えTrackBackといえどまかりならん」というヤツ。
オフィシャルWebにある情報は美辞を並べ立てた宣伝ページにすぎず、本当に欲しい情報がそこにはないことを、ユーザーは知っていながら企業側管理職は「それでいい」と言いつづけているのが現状である。
Webを彷徨い、悪評含めてたっぷりとReviewを吸い上げてから、熟考の上購買に至る"AISCEAS"パターンで行動するユーザが増えてきていると言われてもう2年以上経つ。しかしながら、Webマーケティング活動を本業とするような人を除くと「ネガティブな情報も含めて様々なエンドユーザの意見が書かれている製品」と「オフィシャルな(当然ポジティブな)情報しか見つけられない製品」では前者のほうがこういったユーザの信頼度を勝ち取りやすい、ということを胸を張って言える人はまだまだ少数である、というのが現実ではなかろうか。Webとは縁の遠い企業の管理職も、早くこういった変化を知り、認識を変えていっていただきたいものである。
広告が氾濫するこの時代、オフィシャルWebでユーザが本当に知りたい情報は「スペックシート」ぐらいなのだから*4。