日本の家電メーカーが出す商品はなぜ”もっさい”のか

もっさい
標 準 語:かっこ悪い・ダサイ
使 用 例:なーんかあれはもっさいよね
意  味:なんかあれはかっこ悪いよね
http://inadani.jp/c13/dt/001265.php

twitterで @shi3z さんと喧々囂々と話していたネタが面白かったので軽くまとめてBlogネタに。

実は日本だけでなく、世界のどの会社も、Apple以外はiPhoneが作れなかった。それは経営者が美的感覚を軽視し、それを磨くことを怠っていたからだ。 by shi3z

というtwitをきっかけに

んー。形状判断を意思決定者がデザイナーあるいはデザインセンスのある社員に権限委譲できればいいはず。大手メーカーはできてないけど。 by warenosyo

なんてふらりと突っ込んだのが運の尽き(笑)

@warenosyo 結局、形状の判断は性能や価格の判断に比べて優先されない。これは最終的には意思決定者の問題。意思決定とは最終的には経営のこと。どんな会社でも社運のかかったような製品は役員プレゼンをするはずでしょう by shi3z

ときて

@shi3z うーん、そうなんだけど、役員が気に入ったものしか作れないなら、日本の家電メーカーは50代の人が気に入る家電しか作れないことになる。まぁ割と相当それが現実なんだけどw でもある程度の規模の会社の役員が判断するのは個人の価値観じゃないはず。できてるかどうかは別にしてw

俺はこいつの美的感覚はわからんが、お前がいいというなら出せというパターンか、あるいは何人中何人のターゲットユーザがいいといってるならGo、というパターンはあってしかるべきかと。女性向け商品とかそんな感じ(PやSHにおける美顔機器とか) by warenosyo

と返す・・・てなやりとりが色々と。まぁ詳しくはtwitterの過去ログを見てもらえればと思うが、デザインと家電の関係について色々面白い問題提起がでてきて、これはReplyしていくだけでBlogネタになるなぁということで活用させてもらうことにした。

脳みそデフラグぐらいの気分で軽く、ね。揚げ足取りでもなければ個人攻撃でもなんでもなく、問題提起に対するいち意見なので悪しからず。視点によって見え方が違うプリズムみたいなもんで多分正解のない話。

日本家電メーカーでもプロトはかっこいい

大枠としては日本の家電メーカーの商品がダサイ、デザイン的に尖ったものがなんで出てこないの?という話。「優れたデザインは結局役員プレゼンの段階で弾かれ、無難で凡庸なものが生き残る」という意見をもらったが、10代女子ロック好きにとって優れているデザインと、55歳男性趣味はゴルフてな人にとっての優れているデザインはこれまた違う。BMW M5をカッチョイイというのはオッサン中心だし、パッソがかわいいというのは若い女の子中心だろう。

このあたり、役員がデザインについてどうこう言うくせにデザインセンスがないから問題だ、という話ではないはずだ。勿論、中には彼らが下手に意見してめちゃくちゃになったプロジェクトの話なども聞いているのでさもありなんなところもあるが、実際デザイン部門や外部デザイナーを入れて作った最初のプロトはめちゃくちゃカッコ良かったり、かわいかったりしてよくできているものだ。

日本大手家電メーカーのデザインでも、コンセプトモックアップは確実に製品よりクールだ。たとえば最近発売されたオリンパスE-P1だってコンセプトモックは結構よかった。縦横比は奇麗に1:2だし、ロゴも目立ちすぎず、上面もアクセサリシュー以外フラット。レンズ全面に無粋なホワイトレタリングが入っていないのもいい感じだ。オレンジの革や青い帯がなければもっとシンプルカッコよくまとまっていただろうが。

でもこれが製品になると、こうなっちゃう。変なラインが上のほうに入ったり、グリップ素材のまわりに妙なリブがついたり、無粋な形状の大型ストラップホールがついたり。

車でも同じで、コンセプトカーはかっこいい。そういうものだ。E-P1の例はまだ頑張ったほうで、実際にはもっとひどい。プロトでは洗練されていたものが、量産品ではとんでもなくダサくなってしまうのはいつものことである。これはインハウスデザイナーの腕がない、育ってないという話ではなく、さまざまな会議・決裁を経て量産品に到るまでの過程の問題である。

問題は「経営陣の美的センスのなさ」ではない

実際問題として大手メーカー上層部がそれほど高いプロダクトデザインのセンスがあるとは思えないし、よしんばあったとしてそれはあくまで特定のユーザー層(50代男性、趣味ゴルフ、車はセルシオとか的なユーザ)におけるセンスであって万能ではない。

経営陣だけの話ではなく『美的センスを判断基準として重要なものにするという文化を会社のポジション的に持てないから』ということ。結論はこうだが、そこに到る流れを説明しないと事実を見誤るような気がしたので補足。

どういうことかというと、社内で美より大事なものが色々と定義されていて、そのための役職・組織が存在していて力関係としてこれらの力が大きいのである。この関係上、プロジェクトによっては美を追求したい・追求すべきとの判断となった場合でも、美以外の要素によって美が阻害されるという苦しい展開が待っていて、結論として美とならないという流れになるわけだ。

じゃぁなんで阻害されるの?美を追求したらいいじゃないという話になるが、そうはならないのだ。

なぜか。大手家電メーカーは大変大きな企業体なので、マスのなかのマスを相手に商売をすることを前提にした組織体系・意思決定機構になっている。Appleのようにニッチを狙うことに慣れていないのである。マスを狙うためには価格勝負をしないといけないし、品質的にもマスクオリティが必要とされる。返品リスクも低減しないといけない。その他様々な「ド・マスを狙うからこそこうしなければいけない理論」があって、それは今のところ限りなく正解に近い。だからこそ大手家電メーカーは高い株価をつけ、安定した事業を行っている(ようにみえる)わけだ。

結果、美を追求したいというデザイナーや尖った商品企画担当者の欲求は叶わず、デザイン妥協してコストを下げるだとか、デザイン妥協して視認性上げるだとか、デザイン妥協して耐久性上げるだとかの話になってくるわけだ。

決裁者にセンスがないというよりは、決裁の仕組みの中においてデザイン以上に優先される要素がいっぱいある、それは企業規模と狙っているマーケットからきているよ、という話。

じゃぁそれが問題なんだからデザイン優先させましょうよ、とPanasonicSharpで実践したら多分会社がつぶれる。そういうものを求めているのは(PanaやSharpが見ている市場規模からすると)一部のユーザーだから。彼らはでかくなりすぎたのだ。

トヨタが全てのラインナップをTVRみたいなデザインにしたら業績急落して消滅の危機に陥ることは間違いない、という話と同じ。

解はないのか?

ひとつ可能性があるとすれば、ソニーがやったクオリアブランドのようなやりかたはあるかもしれないが、難しいだろう。もうひとつの可能性は、これまたソニーにおけるSCEのような独立愚連隊を作って、本社は手を出さない、というぐらいぶっ飛ぶしかないかもしれない。

こういう大手メーカーが『わかっちゃいるけど変えられない』部分を突いて中小の家電メーカーが勃興していってくれると面白い。Cerevoを立ち上げた背景も、今回話題にしたデザイン面とは違うが、ネット連携やネット企業とのアライアンス、ユーザーとのネット経由対話という点で『わかっちゃいるけど(ry』の部分を見出したためである。


まぁメーカーも賢い人たちが集まった集団なので、ええかげんAppleに一部市場をボコられ続けて10年ぐらい経てばちょっとは何かを見直そうという動きをしてくるはず、なのだが・・・。実態としては海外ケータイはすでにNOKIAMotorolaにボコられ終わってiPhone何それ状態になってるし、PC市場はDell HPにボコられまくった後にASUSACERにまでボコられてもういいや状態になっているだけに、本丸のテレビやデジカメにやってこられない限りは動きはないかもしれないが。

あとがき

なんか眠くて最後何を言いたいのかわからなくなってきたので後日加筆修正するかも、です