ホンダのカーナビはWeb2.0的 〜ハードウェアメーカはWeb2.0のダークホース〜

今日はまじめに本Blogの基本コンセプトである本業であるビジネスモデル策定,新規事業領域開拓についてカキコ...って懐かしい言葉だなぁをぃ(ぉ


Web2.0(関係ないがうぇぶとぅーぽいんとおー、と読むと英語できるひとっぽくてかっこいい。Sillicon Valleyで話したWeb関係会社の連中は皆こう呼んでいた。うぇぶにーてんれい、うぇぶにーてんぜろはドメスティック臭ぷーん)企業がそれぞれ抱えてる悩みってのはある程度はっきりしてて、基本的に広告モデル以外の収益構造をなかなか作り出せないことにある。


Googleは広告モデルだけで約20%もの利益率と50億$を超える売り上げを達成しているではないか」という反論が聞こえて来そうだが、結果論ではダメなのだ。ゼロから始めるとなると、どの段階で広告モデルで単黒が可能となるか、およそのシミュレーションができなければならない。


中規模以上の企業で事業企画・商品企画に携わったことがある人なら誰もがわかっていることではあるが、起案時に必ずなんらかの計画を提出する必要があり、その計画に現実性がなければそう簡単にGoは出ない。

gooは果たしてWeb 2.0なのか?(Impress Watch)
http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/web2/2006/02/16/7234.html

―率直に伺いますが、gooはWeb 2.0的であるとおもいますか?

村井氏
 そうですねえ(笑)。はっきりいうと、会社としてはWeb 2.0企業ではないとおもっています。例えばdel.icio.usとか、日本でははてなのように、いわゆるWeb 2.0的なサービスをポンポン作ってリリースするようなことはできないですよ。我々はまず、社内で「それは儲かるのか?」「いつ黒字化するんだ?」という解を持ってからでないと、何もできません。


Impressのgoo担当者のコメントだが、まさにこの通りなのである。これは何もNTTレゾナント社に限った話ではないのである。Gooの事例の場合はまだいい。彼らの会社は大きく重い事で有名なNTTグループとはいえ、ハードウェアが伴わないネット上で完結ビジネスであることも事実であり、万が一ダメダメな新サービスを作ってしまった場合でも、割と少ない被害額(開発費と多少の機材の償却)で撤退することもできる。

これがソニーや松下といったハードウェアのからむ大企業となると、下手な企画を通してしまうと、こんな落ちこんな落ちになる可能性も否定できず、エグゼクティブとしてもよりディシジョンを慎重にせざるを得ないという事情がある。


ましていわんやトヨタやホンダといったお客様の命を預かる企業においては、その何倍も企画が通り難いのが現状である。まぁ当たり前といえば当たり前なんだが。


少々脱線してしまったが本題に戻ろう。


つまりハード屋さんで商品企画を通すのはネットサービス屋さんほど容易ではない。仮に広告収益を柱とするようなハードウェアの企画を提出した場合、収支曲線のシミュレートが難しく、またストーンエイジパーソン(直訳してくれ)を納得させる確証に乏しく、そんな商品はGoサインが出ない、という結果が待っている。


だが、ストーンエイジの脳みそは「ブツを売る」という使い古された、それでいていまだ世の中の主流である売り方なら理解することができる。この売り方であれば多少無茶な企画でも通るところが、ハードウェアメーカーの強いところでもある。ネットサービス企業で「端末を売るんです!」といったら途端に企画書の屍が堆く積みあがることだろう。餅屋は餅売りしか想像しづらいのだ。


ふぅ。ここでやっと、表題の説明ができる。Web2.0サービスとハードウェアを意図的にマッチングさせて誰もが認める大成功となった例を1つ挙げよう。


ホンダ車の純正カーナビゲーションシステムだ。


「フローティングカーシステム」なる仕組みが搭載されており、「ユーザの好意で」「利用者みんなの」「特定区間の走行時間を」「自動でネット上のサーバに吸い上げ」「サーバ側で渋滞情報という形に変換して」「無料で」「みんなに還元する」という、なんともWebサービス(じゃなくて正確にはネットサービスだが)+集合知によって新しい情報価値を提供してくれているのである。んでまたこの機能が欲しいということで純正ナビを指名される方が大変増えたらしい。<フローティングカーシステム詳細>
http://premium-club.jp/PR/technology/tech1.html


集合知を使っていたらWeb2.0というわけじゃない」「意図的な(集合知への)参加じゃない」「OpenAPIじゃねーからmashupできねー」とかまぁ反論はいっぱい聞こえて来そうなのだが、「集合知を活用した」「Data is next intel inside」なサービスであることは確かである。集められるデータは緯度経度情報,速度,固体識別用コードなどのメタデータのはずなので、渋滞情報以外にも活用できるかもしれない。いいアイディアが生まれてくれば、自社内mashupが完成し、よりWeb2.0くさくなってくることだろう。


というわけで、ハードウェアメーカーが気合を入れてネットを利用した集合知サービスに乗り出すと、結構すごいことがそこかしこでおきるかもしれない、と思う次第。ホンダのインターナビ・フローティングカーシステムは無償提供されているが、サーバ運営には多大なコストが掛かっているはずだし、ハードウェアはそう簡単にパッチを当てられるものでもないから開発・テストも手間がかかる。勿論「広告モデルで全部賄います」なんてほらも通用しない。それでもインターナビを世に出せたのは、モノ売りで収入を得ることが常態であるハードウェア製造業だからこそだろう。


…とっても大事なことを言い忘れていた。このサービス、ハードウェアメーカーが売るハードウェアに集合知収集の仕組みを組み込んだことで「ユーザの意図的な集合知への参加ではない」点がとっても重要である。


モヒカンな方々はこういうのを嫌い、やれ個人情報が吸われている*1だのなんだのと叩くが、マスコミに一喜一憂し"みんなになりたい"と日ごろ思っている一般人からしてみれば、「なんかしらないけど便利にしてくれる」「なんかしらないけど安心らしいよ」ってな仕組みはすんなりと受け入れてしまう。


そして、そんな無邪気な彼らが日本の人口の大半を占めており、質より数が重要な集合知サービスを見つけて、大手ハードウェアメーカーが本気で仕掛けててくるようなことがあれば、それこそGoogle大先生が太刀打ちできないようなすごいデータベースが出来て、それがないと生活できましぇん、なんてことになってしまうかもしれないのである。




……まぁ、私もそうしたいからこそ、安月給の大手電機メーカーを辞めていないのだが。

*1:ホンダのサービスはイヤならOFFにできる