ニッポンでGoogleは一般化するか?

近江商人JINBLOGにて1週間前にこんなネタが取り上げられていた。"あとで書く"フラグを立ててきたので責任をもってエントリを...ってな冗談として、現在一部ユーザの間でBuzzとなっているGoogle Waveが、一般人,たとえばこんな人やこちらのエントリの最後で取り上げているような人に対して普及する、そんな可能性はあるのか、ないのか、そのあたりをちょっと考えてみたい。

毎回リリースのたびにブログスフィア中が震撼するGoogleのサービス群が、実はネットの外に出ればまったくひよこであることを再認識させられますね。MapのAPI提供やAdsenseのセルフサービスのようなモデルの斬新さや、GmailやGoogleCalenderでのAjax等インターフェースの斬新さに目を奪われすぎて、本質的なマーケットサイズと4Pバランスという目線を以って見ていかないとインターネットサービスへの正しい評価は下せない、ということを思い出さされます。
http://ceonews.jp/archives/2006/05/google_2.html

JINBLOGの元ネタになったHitwiseによると、北米市場においてGoogleは検索の雄であるが、EmailやNews,Finance,Mapといったサービスにおいては実に全てシェア10%以下であり、検索以外はダメダメであると斬っている。確かにその通りなのだが、なぜか? そこが気になるポイントである。私は何につけてもなぜなに君であり、勝手に想像してでも理由を付けないと物事をしっくりと理解できない生き物なのである。

トップページが濃すぎる

...なんて大仰な小見出しをつけてみたものの、答えは簡単だ。こちらのURLを見てみるといい。これじゃぁ検索にしか使えないよね?普通。恐らくだが、このBlogの存在を知り、奇にも日々閲覧してくださっているような方々は、今この議論において"普通"にカテゴライズされる人ではない。"格闘家"なのだ。自分の目的を持ち、意欲を燃やし、情報の取得に対して攻撃的な人々。

インターネットとは縁も所縁もない業界で仕事をしていて、ふとプライベートで何か知りたいことがある、あるいはふと暇な時間にTVも面白くないんで『インターネットを点けてみる』なんて状態にいる人は、言わば休日午後に部屋着でまったり紅茶をすする一般市民であって、それに対してGoogleのトップページってのは上半身裸でファイティングポーズを取った筋肉ムキムキの格闘家が『Hey you! どっからでも掛かって来やがれ!』と手招きをしている状態なのである。

『いや、いいから』
『「掛かってこい」って、そんなつもりねぇし』

勿論、GoogleのトップページはPersonal化してカスタマイズしてやれば途端にモーニングを着た白髪の和やかな老紳士コンシェルジュへと変貌させることも可能だが、そのためには一度は例のムキムキマンと戦う必要があるのである。

無駄な情報を出さないポリシーが癌

Googleのポリシーは情報検索において無駄を一切省くことだろう。だが、そのポリシーが仇となり、格闘家以外を遠ざける。そうすることで目標達成を至上命題とする多数の格闘家からは受け入れられたが、格闘家に憧れて門を叩いた新米ストリートファイターに対して"Web検索"以外の機能を知らしめる可能性を削ってしまったのである。


http://search.yahoo.co.jp/search?p=honda&fr=top_v2&tid=top_v2&search.x=1
http://search.yahoo.com/search?p=honda&fr=FP-tab-web-t334&toggle=1&cop=&ei=UTF-8
http://search.yahoo.com/search?p=mcdonald&ei=UTF-8&fr=FP-tab-web-t334&x=wrt

Yahooはこのあたり実にうまい。"ホンダ"でYahooJapanを検索すればホンダの株価が見れるし、"mcdonalds"でYahooUSAを検索すればYahooニュースのマクドナルド関係ニュースへのリンクが張られる。格闘家にとっては無駄でしかなく「余計なもん出すなって。ニュースみたいときはニュースサイトから行くわい!そんなもののために余計に2行もスクロールさせんな!」という主張が今にも聞こえてきそうであるが、その主張を聞かざるを得ない=主要顧客が格闘家、という状況が今のGoogleの弱さなのだろう。

格闘家以外の人を対象にするのか、しないのか そこが問題だ

だがしかし、格闘家だけでなく一般市民もGoogleの提供する各種Webアプリを活用するような世界がここ1年以内に来たとすると、それってGoogle最強じゃん!? YahooとかMSNとか終わっちまうんでねぇの? という理論がJINBLOGのコメント欄で上原さんの言う『バブリ感』を煽っている。

「みんなが使えばすごい」ものを作っちゃったんだけど、一部の人しか使ってくれません('・ω・`)ショボーン

ってのが現状なわけである。でも、格闘家が求めるものと一般人が求めるものは違う。俺はプロテインなんて食う必要はないし、鉄アレイも不要だ。ジョギングはしたほうがいいのかもしれないがorz  『みんなが使えばすごいものを、格闘家が使いやすいように作りました』というのが事の本質なのではないかと思うわけだ。これを『みんなが使いやすいもの』にするタイミングで格闘家には多少なりとも使い辛くなる可能性があり、そのアンビバレントをどのように処理していくのか、それが今のGoogleが持つ課題なのだろう。

JINBLOGのコメント欄であとで書く宣言をしたのはこの点で、5年後に向けてGoogleがどうやって一般人と格闘家の両立を目指してくるのか、大変興味深い。だが、5年も待ってられる余裕はないだろう。YahooやMSNは、格闘家に酷評されるI/Fを簡単に作れる。なぜなら彼らの現在の主要顧客が格闘家ではないからだ。そういう意味ではソシアルブックマークサービスなり、ソシアルネットワークサービスなり、ユーザ参加型の地図情報生成プロジェクトなりを非格闘家向けに展開することでGoogleが追撃できない領域に逃げ切り、Googleを格闘家向けサービスの領域から抜け出せないようにしてしまうことだって可能なわけだ。1点この仮説に問題があるとすれば、格闘家はせっせとネットで活動するが、その他の人々は受動的である。活動的なユーザを頼りにしたサービスを軸にサービス価値を向上するという観点では、Googleにはまだまだ可能性が十分にあるといえるかもしれない。

あー時間切れ。また後日追記するとしよう。完成するまではHDDに眠らせておいて、あとから追記して掲載する、というスタイルはどうも好きになれないので...。尻切れトンボ感は否めないが、申し訳ないがBlogらしいと割り切って読んで欲しい。