携帯専用検索サイト・ビジネスは既にデスマーチに入ってしまっている!? ソーシャル検索が取って代わるかもしれない

刺激的なタイトルで申し訳ないが、GREE主催の「第1回エマージングビジネス勉強会」にて、携帯電話専用検索エンジン運営企業幹部の方によるパネルディスカッションを聞かせていただいたところ『こりゃ業界淘汰までカウントダウン入ってんなぁ』と感じた次第。詳細は各ニュースサイトなどに譲るとして、ざっくりと対Googleという観点でパネラーから出た意見を要約すると『Googleは脅威』『でも検索結果がいまいち』『PC的な調べ物(お店の電話番号など)をするにはいいが、携帯電話における検索行動に即していない』『俺達は人力で検索結果のサイトをスクリーニングしてるから検索結果の満足度が高い』という主張だった。

これらの意見を聞くに、Googleが出てきた頃のYahooを初めとするディレクトリ型検索エンジンやリンク集サイトの主張のようだと感じた。

携帯電話からの情報検索はすぐにそれなりの検索結果が欲しい。PCからの情報検索のように候補を沢山出してその中からユーザーさん選んでね、というアプローチではだめだ

という意見もわからなくはないが、業者がスクリーニングして上位掲載するサイトが本当に"大多数のユーザーにとって良い"サイトなのかどうかは甚だ疑問だ。携帯ユーザの財布の紐の緩さと、ネットリテラシーの低さ*1につけこんで"PCサイトでユーザを集めて携帯サイトで回収する"なんて事が日常化している状況だから良いものの、ユーザのリテラシーが向上するとあっという間に『定番サイトじゃ満足できない』状況が起こるはずだ。

その頃には業者側も今まで以上に携帯向けサイトを重視し、PCサイトだけで運営しているバッタ屋や違法サイトなど猫も杓子も携帯対応することだろう。もっとも、フルブラウザとHSDPA、或いはCHTMLリアルタイム変換などによって携帯側で吸収するというケースも含めて、だが。


結局のところYahoo!YST検索結果をディレクトリ検索結果より優先して表示するようシステムを変更せざるをえなかった理由が『ユーザリテラシの向上』と『検索対象(ユーザの要望対象)の爆発増加』だったように、今はまだ人力を売りにしている携帯専門検索サイトが強い状況ではあるが、『検索対象(ユーザの要望対象)の爆発増加』はBlogブームでとどまる所を知らず、『ユーザリテラシの向上』は既に若年層の携帯ユーザにおいては確実に起こり始めている。

別にGoogle至上主義者でもなければ携帯検索サイト否定派でもなんでもないが、PCサイト,携帯サイト問わずに機械的にそれなりの検索結果を出してくれる検索サービスが生き残り、携帯専業で人力を売りにしている検索サービスが淘汰されるのは時間の問題だろうと、率直に感じた次第である。


ただ一つ、本流にはならないかもしれないが、確実に生き残るであろう携帯向け検索サービスのスタイルがあると私は思っている。それはソーシャル・ブックマークの親モバイル発展型検索サービスだ。サイトの評価をユーザが行い、タギング要素には日時に加え場所が追加され、ブックマーカーの携帯内コンテンツや契約情報によって色がつけられる。検索者は、検索した時刻・場所,および検索者の契約情報と端末内にあるコンテンツの種類などにより、近しいユーザグループによって高評価されたコンテンツが上位検索結果となるわけだ。

Yahoo! Japanの井上氏が言う『ソーシャル検索』の究極系は、彼らがソフトバンクと組むことで実現できる、こんなサービスのことを言うのではないかなぁと思った次第である。契約情報に含まれる生年月日や性別,端末内コンテンツを吸い出して利用するといった時点で『アリエネー(藁』と斬って捨てる人も多いだろうが、テレビで生理用品や化粧品のCMなんて見たくない人にとって、TV局に性別情報を提供することはそう悪い話ではないはずだ。J-POPなんて死んでも聞かない!と主張する洋楽ファンにとって、着メロで検索をかけたら延々JPOPしか配布していないサイトが並ぶことを避けられるのならば、自身の携帯の着メロ・ディレクトリに保存されている洋楽の楽曲情報を喜んで提供するのではなかろうか。

群衆の知恵(Wisdom of crowds)によって作られしDBから、パーソナル・フィルタをかけて情報を切り出す。個人情報をうまくフィルタに取り込むことで、おのおののユーザがDBのロングテール部にリーチすることができる。Web2.0と言うと安っぽく聞こえるが、こんなサーチ・サービスが欲しいものであり、それは今携帯向け検索サービス業者がやっている形とは対極に位置し、どちらかというとGoogle,YahooJapanが目指している姿である。だからこそ余計に、携帯専業検索サービス業者の先行きに不安を感じてしまうのかもしれない。

※とまぁ刺激的なことを書きましたが、あまり知らない携帯専業検索の世界を知る事ができ、また色々な方と話をすることができ、大変面白い勉強会でした。ちよろず。屋島さんをはじめ、関係者の皆様ありがとうございました。

*1:というと失礼だが、いい言葉がみつからない。安いものを高く買わされていることに気づかない状況を指す