mixiがキャズムを超えるための最終兵器としてMVNOによるケータイ融合という手はどうか

今日は、会員増加ペースが伸びないmixiの状態を見つつ、IPOによる資金調達を鑑み、今後彼らが取って来るであろう戦略を推測してみたい。なぜ今IPOしなければならなかったのか、資金調達が示唆するものや如何に!? といったところだ。

少し前のことになるが、大西宏のマーケティング・エッセンスにて「mixiキャズムにぶち当たって足踏みをしている」という刺激的なエントリがUPされていた。alexaのトラフィックや会員増加ペースを見て、キャズム*1に向かって激走を続けてきたが、あまりの溝の大きさに急停止して周りを見回しているという状況とでも言おうか。

alexaのサルベージに掛かるような人は一通りmixi使いになっちゃったもんだから、そこから先の(alexaなんて絶対にInstallしないような)人たちが幾ら増えたところでalexaなんかじゃわかんねぇよ、という意見もあるだろうが、会員増加ペースが鈍化していることは確かなようだ。

というわけで、タイトルにもあるようにmixiIPOによって得た資金でmvnoによって携帯電話業界に参戦し、mixiの機能と携帯電話機能を融合させるような作戦を取ってくるのではないか、という仮説を立ててみた。なぜ彼らはmvnoという手を取る可能性があると考えたのか、そうなったとしてどんなサービスが提供されるのか、収益モデルは?といった観点からそれぞれ斬ってみたい。

中高年に訴求してもしょうがない!?

確固たる根拠もなければインサイダー情報でもないが、中高年にSNSの魅力を説いてわかってくれる人がとても少ないと感じたことが第一の理由だ。社内で『オジサンにSNSの魅力を一言で説明するとしたら、どうする?』という問いを投げかけられ、幾つかの答えを返したのだが、自分の中でどれもしっくりこなかったというのもある。「バーチャル同窓会」「いつも同窓会メンバーと繋がっていれる感覚」「ネットを通じて新しい趣味友達が簡単に作れる」「リアルの友達と四六時中繋がっている感覚(でも非同期で快適)」などなど、キャッチフレーズを幾つか作ってみたものの、リタイアしたシルバー層には少々魅力的かもしれないが、30代〜50代の男性層に響く言葉にはどうも思えない。主婦層に訴求するというのはあるが、そうなると対象デバイスはPCよりも携帯だと思った次第である。20代以下となると、PCユーザのほとんどはmixiを利用しているだろうし、やはり携帯ユーザを取り込んでいくという作戦がベターなのではないか、と。GreeKDDI連携なども、案外根底にあるものはこういった30代以上のユーザに対する閉塞感からくるものだったりして。

ヘビーなmixiユーザは情報のプッシュを望んでいる?

mixiの魅力のひとつが、新着情報のMyPageへの集約による、多数の友達、複数の趣味カテゴリに対する非同期コミュニケーションを可能としたことであるのは周知の事実だが、ヘビーユーザーは高頻度なコミュニケーションを効率的に可能とするツールとして利用していたりする。

具体的には新着メッセージや日記へのコメントは携帯メールに転送、1時間に1回以上のペースでMyPageにログオンして新着日記チェック、といった使い方だ。知り合いの高校生はこのような使い方をしていてびっくりしたのだが、そこまでするなら、携帯の待ち受け画面がmixiのMyPageになっていて、リアルタイムで更新される、なんて世界が彼らにとっては理想なのだろう。というわけで、ことヘビーユーザにおいては携帯とmixiの相性が大変良いと考えたのである。

MVNOによってmixiケイタイが実現すればどんな使い勝手になる?

具体的な機能イメージに落とし込んでみよう。

  • 日記へのコメント,コミュニティ最新書き込み追加,メッセージ受信などそれぞれ起こるイベントによって異なる着メロが鳴る。
  • マイミクの日記更新は更新者ごとにこれまた着メロやLEDパターンを設定することができて、彼氏の日記が更新されたらすぐにチェックするけど友達の日記はあとでまとめてチェック....なんて使い方ができるようになる。
  • 同一キャリア内でメルアド交換すると、mixiにもワンボタンで誘えるようになる
  • mixiに「アドレス帳」機能が搭載され、携帯電話側のアドレス帳とリンクする
  • マイミクリストからアイコンを選んで電話をかける、メールする、などの操作が可能に
  • ケータイメールはmixi内メールボックスに保存され、ケータイメールとmixi内メールの境界がなくなる。PCの前にいるときはPCで、ケータイの前にいるときはケータイでメールの受け・書き両方が可能で、Webベースでやるので同期問題も起きない(地下にいるときなどは同期できないが、電波が入るところに移動した時点で同期されるイメージ)

超べんり。マジ欲しい(笑) まじめに資料起こして大学生とか高校生に『こんなミクシーケイタイあったらほしい?』アンケートでもやってみたいぐらいだ。

で、その投資コストはどう回収する?

miximvno参入することで、端末とサービスのシームレスな連携ができてサービスの価値がよりいっそう高まるというメリットは確かに大きい。しかし、それと同じぐらい重要なのが「課金決裁システム」を同時に得ることができる点だ。プレミアム会員以外の会員に対しても、簡単に小額決裁を行うことが可能となるわけだ。

というわけで、以下のような回収モデルを考えた。

  • そもそも仕組み上パケット定額制でなければ成り立たないため、そもそものARPUが高く、まずはここで回収
  • 現在でも行われている企業が運営するオフィシャルコミュニティへのEC機能提供,B2Bで金を吸い上げる
  • モバオク対抗としてSNS内個人売買の運営。契約情報やmixi内資産(過去の日記、友人関係)を人質にとることで安全・安心個人売買サイトを売りにする。手数料は安全な分少々ボリ気味(ぉ
  • これらによるアクセス増で広告単価を吊り上げ


IPOに伴う資金調達だけでここまでできるとは到底思わないが、こういったビジョンに向けて確実な一手から攻めてくるのではなかろうか。少なくとも、ソフトバンクがヤフー・ケータイで同種の手法を取るケースと比較すると、ケータイでのWebコミュニケーションに慣れたユーザを抱え込んでいる、また彼らの友人知人という潜在優良顧客を射程に収めているmixiのほうが、こういったサービス展開をしやすいのかもしれない。



...短期的には。


Vodafoneそのものを買っちまった上でヤフオクまで持ってるソフトバンクは、少し長い目でみさえすれば、断然強いよなぁ...。ま、ヤフオクやらDaysやら、きちんと各サービスを連携させた上で魅力あるヤフーケイタイワールドを構築できるプロデューサーがソフトバンク,ヤフー内に居ればの話だが。それぞれのサービス(Auction,Days,etc...)をそれぞれ何十人何百人という単位で運営している大手企業では、この調整が恐ろしく進まない。結果各組織の既得権益をそれなりに保持しようとして煮ても焼いても食えないサービスが出来上がってしまう、という落ちは十分に想像できる。その点mixiであれば割と少人数でさくさくと物事を決めて、携帯端末からサービスまで全部含めて便利なmixiワールドですよーーー、という訴求をうまくやってくる可能性はある。


仮説で盛り上がってしまったが、さてさてどうなることやら。


以上

※Yahooも同じことができるはず...というのは以前書いたこちらのエントリを参照

*1:大西さんのBlogでは"淵"と書かれているが、同じものを指している