スタートアップのPR戦略バナシその1「プレス発表会のやりかた・手順書」

10/31にとある発表会をやるんだけれども、その関係でちょうど今週はごちゃごちゃとやっていたところなんで、メモがてら。
7/1 13時から発表会をやると仮定しよう。だいたいCerevoがいつもやるやりかたはこうだ。

Timeline

  1. . 5/1頃 こういう記事のタイトルで掲載して欲しい!というタイトルをきめる
  2. . 5/5頃 当該タイトルだと文中にどんな写真が入るか考えて、想定解をきめる
  3. . 5/5〜6/30 チームの開発風景やら何やらを眺めながら、おっ、これは想定解の写真になりそう!というシーンを写真に収める
  4. . 6/1頃 社内で発表予定日(6月31日)を決める
  5. . 6/14迄に何をどうやって発表するか、場所・時間など全部決めておく
  6. . 6/15 プレスの皆様&リリース投げ込み窓口に対して一斉Email
  7. . 6/16 どうしても来て欲しい重要メディアの担当者には社長個人アカウントから連絡(Message、ケータイメール、電話、LINE、FB Message、Linked in等様々)
  8. . 6/25-6/27 取材対応FAQをつくる
  9. . 6/27 事前取材プレゼン資料FIX
  10. . 6/28 事前取材DAY(関係者は終日予定をあけておく) ※親しい記者さんはできれば1日目に
  11. . 6/29 事前取材DAY(関係者は終日予定をあけておく) ※怖いメディアさん、怖い記者さんは2日目に
  12. . 6/29 当日の配布資料FIX
  13. . 6/30 当日のプレゼン資料 FIX(事前取材の内容・質問を踏まえて調整)
  14. . 7/1 発表会当日


いくつか重要なポイントを解説していこう。

記事タイトルを自分で決める?!

記事のタイトル決定権は記者・ライターさんにしかない。が、それをある程度コントロールできるのが発表側である。商品企画の責任者か、マーケの責任者か、はたまた代表取締役かはわからないが、当該商品の方向性について主導権を握っている人がタイトルを考えに考えて想定する。こう書いてもらったらバズるんじゃないか、こう書いてもらったら仕入れ数量が増えるんじゃないか、こう書いてもらったら人材採用がうまくいくんじゃないか、など。今回のリリースによって会社が得たいものは何かを考え、タイトルを考える。本当は、タイトルだけではなくリード(見出し文)まで考えるのが理想だ。WebMediaではリードがつかないところが多いけれど、付いているところを見て勉強すればだいたいリードとはなにかが理解できるはず。ちゃんとリードが入っているWebメディアといえばITmediaが有名ドコロか( 革新的な製品を作り続ける――パナソニック出身者が立ち上げた家電ベンチャーの新戦略 )。こちらの記事だと

家電やロボット、自動車などさまざまなモノづくりの分野でベンチャー企業が躍進している。2007年創業のCerevo(セレボ)もその1つだ。インターネットと連動するさまざまな家電の開発によって注目を集める同社社長の岩佐琢磨氏にインタビューした。

というくだりがリードだ。リードはだいたい150文字以下だと思ってもらうといい。


ちなみに、この作業はほかのどの作業よりも難しいので執筆業経験があるスタッフを入れてやることをオススメする。
タイトル「1日3秒でOK! 劇的な歯磨き時間短縮を実現した’超電磁歯ブラシ’とは」
リード「元歯ブラシメーカーXX出身のXX社長が起こしたスタートアップ、XX社。怠け者の社長が毎日歯ブラシできるようにと考え、ABC技術を応用して実現したのが'超高速振動による歯磨きの高速化'である。」


150文字という制限がかかると、そう多くは書けない。また読者の目を引きたいと思うと魅力的なタイトルじゃないとだめだ。経験がないうちは、実際にITmediaやImpressといったWebメディアのスクリーンショッをと撮って、画像合成して自分で作ったタイトルを入れてみるといい。

違和感なければ、このタイトル、リードとなるようにプレスリリースの文面を作っていく。社長が元歯ブラシメーカー勤務であったこと、社長が怠け者だったんですよーという具体的事例、ABC技術についての説明、他は3分かかるけどこっちは3秒なんだぜってのをひと目でわかるような動画なり写真なり、などなど。

この順番で作り上げたプレスリリースは、取材にこないで記事を書いたとしたらもう自分たちで想定した表題にしかなりえない。もちろんそのものずばりのタイトルをつけてくるメディアさんなんてほぼありえないんだけれど、基本的には想定どおりの内容となることは間違いない。

難しいのはここでキャッチーなワードを作って埋め込むこと。超電磁歯ブラシ!じゃないけれど、何かメディアの人が書きたくなるようなワードを作る。そして、プレゼンやリリースの随所にそのワードを散りばめる。元歯ブラシメーカー勤務、超電磁歯ブラシ、ウルトラスペシャルグレートモーター、まぁ何でもいい。


ちなみに大失敗例はこうだ

タイトル「家電メーカーA社、短時間での歯磨きが可能な新歯ブラシを発売」

いやー、ちょっと、ちょっと!と言いたくなる見出しだけれど、最初にちゃんとした見出しを想定していないとこうなっちゃうのである。気をつけたい。

用語の揺れには気をつける

調理機器と言うのか、クッキングデバイスと言うのか、はなまたスマート鍋と呼ぶのか。ちょっとした言葉の選び方が記事の印象をがらっと変える。『これは調理器具ではありません、スマート鍋です』てなプレゼンから入れば、調理器具を発売!なんてベターっとした記事にはならない。ただ資料やプレゼンの中で調理器具といったりスマート鍋といったり、はたまたクッキングデバイスと言ったりするとどの言葉が使われるかわからないし、その上記者の方がうける言葉のインパクトも弱い。用語えらびとあわせて揺れには気をつけたい。

発表会の時間・曜日

敏腕記者さん・ライターさんは夜も関係者と飲み歩いて情報収集してネットワーク作っていらっしゃる。朝早いのはちょっとねということで、なるべく午後に設定したいところ。あと、大手メーカーのウルトラ大規模発表は株式市場が閉まる15時以降か、午前中というパターンが多い。なので、午後1時ぐらい(13時)がいいってわけだ。

月曜日や連休明けはネタが集中するので避ける。金曜日は翌日が土曜なのでWebMediaに当日乗ったとしてもあんまりビジネスパーソンが見てくれないのでものすごく消費者寄りのリリースでなければ避けるのが王道。ただし、この王道があるため小ネタであっても上位掲載を目指せるというメリットがある。また、一度いいポジションに掲載されてしまえば、通常土日で企業のリリースがくることはないので2日間上位掲載のままキープできるという可能性もある。ただし上級者向けなので、通常は王道にしたがって火〜木を選ぶとよい。

事前取材の重要性

当日13時-14時で発表会をやったら、もっと話をききたい!というメディアの方に出会える可能性がある。もし「もっとききたい」人が5名いらっしゃってそれぞれ30分を割り当てて対応したら、最後5人目の方は発表会終了から2時間待ちぼうけだ。ありえない。

また、メディアによって聞きたいことは結構違う。日経エレクトロニクスの記者さんにとってはどこのチップ(プロセッサ)を使っているかは重要な情報だし、TechCrunchの記者さんにとっては販売スキームとかの話に興味津々だろう。デジカメWATCHの記者さんは具体的な画質についての話しが聞きたいかもしれない。

ちゃんと事前取材に来て頂ければしっかり時間を取って話せるし、事前に記事を9割仕上げておいていただければ、当日発表会の雰囲気写真を貼って載せるだけでも十二分にいい記事になる。もちろん発表会を最後まで聞いていただいての記事というのが一番嬉しくはあるのだが。

取材対応FAQ

これだいじ、めっちゃ大事。ちょう大事。ちなみに書き方だけどまず質問をばばーーーーっと作る。一番いやな質問から作っていく。悪用されたらどうするんですか?みたいな。「A社からも同様の商品が出ていて値段も安い、売れんのか?」ってな感じ。うわー、おまえそれ聞くかよ、ってヤツ。続いて、答えづらい質問にうつっていく。「総開発費はいくらですか」「売上目標台数は」「前モデルの販売台数は結局何台だったんですか」ってな感じで。

言えないことは言わなくていい。裁判所ですら黙秘権が認められている国である。ただ、裁判所と違って黙秘するわけにはいかないので、言えないことはスパッと「ご興味を持って頂いたことは大変嬉しいのですが、XXについては非公開です」と言えないとだめ。記者さん的には痛いとこ突いてやろうぜ感ありありで来るので、スパっと言えないと「XXについて聞いてみたが答えを濁された」みたいな書き方をされると損。ふふふ想定してましたよその質問、だけど言えないんだよごめんねという感じじゃないと。

逆に、FAQを作ればうまい逃げ解答も用意できる。面倒と思わず作るべし。あと、FAQ作成には必ずエンジニアを入れる。ものすごーくテクニカルな内容もFAQへと入れましょう。かなり専門的な記者さんもいるので、答えられないと気まずい。HDMIのバージョンは? 対応している無線周波数は? 内部メモリ容量は? LCDはIPSか、VAか? タッチパネルの最大同時反応数は? 感圧ペンの分解能は? エンジニアも楽しくFAQを作ってくれると思うので、やるべし。

事前取材のプレゼンは3〜5枚で10分以内

飢餓モデル、と勝手に名づけているのだけれど3枚から5枚ぐらいのかるーいプレゼン資料にとどめてしまうのがおすすめ。ほんとに概要と、どーーーしても伝えたい重要要素ぐらいしか話をしない。そうすると目の前に座っている記者さんから沢山質問が飛んでくる。A機能はあるのか? 解像度はいくらか? 開発に何ヶ月かかったのか? などなど。それをメモしておいて、本番の発表会までに資料を修正する。そうかー、やっぱみんなA機能気になるかー、って感じで。

本番のプレゼンは15から20分

本番プレゼンとその資料作成については長くなってきたので別エントリーでまとめることにしたいと思う。が、長いプレゼンは要点が見えづらいので15-20分でまとめたい。

さいごに

ホントはもっとたくさん気をつけなきゃいけないことがあるのだが、冗長になってきたのでシリーズ化(?) することにして本稿はここまてとしたい。一度の発表会にあまり多くのネタをつめこみすぎてはいけない、という話し的なww

まぁでもほんと、二回のリリースに分ければよかったのにーって案件は、よく目にするので気をつけたい。