WiFiデジカメ LUMIX TZ-50レビュー 〜外出先のAPからUPするには最適なカメラかも〜

102_0346さて、先日からはじめた"キャズムを超えろ!ガジェットレビュー"第2弾はPIE会場で触ってきたLUMIX DMC-TZ50だ。ニコンに続いてパナソニックWiFiを搭載してWebサービスと連携するデジタルカメラを発売することになったわけだが、ニコンからは1年半近くも遅れての登場となった*1。遅れたぶんだけよぅできとるんやろうなぁ? というわけでPIE会場でじっくりと触らせてもらった。

WiFi機能一覧

  • WiFiでWebアルバム"PicMate"に繋いで写真UPが可能
  • Webにアップした写真をカメラ(TZ-50)から確認(閲覧)可能
  • Webにアップした写真をカメラ(TZ-50)から削除可能
  • アップした写真URLを(TZ-50から)メールで通知可能
  • アップ先アルバムを5つの中から選択可能
  • 接続先WiFi-APは自宅等のルータを手動登録
    • AOSS等ワンボタン接続には非対応
    • WEPキー等の入力はカメラからのみ(使いにくい!!)
    • ID認証が必要な公衆無線LANにも一部対応(ソフトバンク)

外出先のAPからUPするには最適なカメラ

PCもケータイも持っていない状態で、外出先のAPから写真をUPすることにかけてはNikonなどのWiFi搭載機に比べて大きな機能的アドバンテージを持ったカメラであることは間違いない。やっぱりアップした写真を確認できることと、間違ってアップした写真を削除できることは大きい。

説明員によるとPicMateサイトにアップロードされた写真はTZ50用のサムネイル画像を生成して専用のAPI経由でダウンロードするらしい。TZ-50の液晶にDotByDotでマッチングする綺麗な画像が、ストレスのない時間でダウンロード、表示される。

ただ、アップ先のPicMateサイトはモバイルでの閲覧に対応しており、当然だがモバイルからの写真削除も可能だ。わざわざカメラの複雑な操作体系でWiFi経由で写真閲覧・削除をやらせるべきなのかどうかについては疑問が残るが、少なくともカメラからケータイに持ち替えるなどせずに確認・削除ができるメリットは無視できない。実際使ってみるとさくさくUPできてさくさく確認でき、なかなかに便利なデバイスに仕上がっていた。

細かいところではWiFi-AP探索時間が思ったより短い点や、勝手にUPされるわけじゃないので安心感がある(EyeFiなどと比べて)点が好印象。アップ先のアルバムを複数選択できる機能については使い込めなかったが、恐らくPicMate側で当該アルバムの公開・非公開・仲間内公開設定を予め設定しておくことで、この写真は公開に、これは仲間内公開に、といったアップロード仕分けができるのだろう。このあたりもリアルなユースケースを考慮しており評価できる。


使いにくいところ

  • PicMateにしかUPできないこと
    • これはNikonしかり家電メーカー共通の課題であり、挙げないわけにはいかない。Flickr,フォト蔵などに対応してほしい。とはいえPanasonicが運営するPicMateに集客したいなどの思惑もあり、一筋縄ではいかないのだろうけれども。
  • アップ先のアルバム名を指定できないこと
    • PicMateサイト上にあるLUMIX ALBUM1〜5という名前のアルバムにしかUPできない。PicMateサイトにログインしてこの名前を変更したらOK?と説明員に聞いたところ答えは「No」。LUMIX ALBUM2を「キャズム旅行記」に変更したら、カメラ側にキャズム旅行記という選択肢は表示されず、新しくLUMIX ALBUM2が作成されてそれが選択肢として表示されるのみらしい。むぅ
  • PicMateのユーザーIDなどをカメラ側で入力しないといけないこと
    • カメラのシリアル番号をネット側(PicMateサイト)で入力するだけでOKとかそういう仕組みを入れるべきだったのでは
  • WiFi電波の入らないところでアップの予約操作ができないこと
    • WiFi電波が入るところに長時間居れるとは限らないし、どれをアップしたいか決めたい時にWiFi電波が来ているかどうかはわからない。DPOF指定のように気が向いたときに「これとこれ、あとこれをUPしよう」と選択しておいて、WiFi繋いだらあとはもう自動UP、てな機能を実装してほしかった。
  • 「撮ったもの全部アップ」機能がない
    • こういうものをうまく付けて、UIをシンプルに見せることが重要なのに何故ないか。「誤って操作してUPしたくないものまでUPしてしまったユーザーからのクレームが怖くて」なんて理由だったらひっぱたいてお仕置きしてやりたい!きぃぃぃぃ〜。 ダイヤルをWiFiモードにしたら最初の画面は「全部UP」か「その他WiFi操作」の2択しかでない、ぐらいの割り切りがほしかった。アルバム選択なんてLUMIX ALBUM1に決め打ちでいいじゃないのさ。
  • フォントとアイコン、GUI描画方法などがしょぼい
    • アイコンはいくらなんでも適当すぎじゃなかろうか。フォントがダサいのはまぁいいとして、無闇に文字が大きく文字間が詰まっていたりと、シルバー層向けの機械かと思うようなデザインセンス。GUIの描画もMS−DOS時代のフリーソフトレベル。潤沢なハードウェアリソースがないことは理解できるが、せめてもうちょっと作りこんでほしかった。下記写真の「スクロール W-T」は本気で何かわからんかったよ...。
  • UIが超適当。「左カーソル」で「戻る」画面もあれば「削除ボタン」で「戻る」画面もある。メニューの階層についても同様で、「決定キー」で「階層が進む」ケースもあれば「右カーソル」で「階層が進む」ケースも。特にWiFi設定がらみの画面でUI破綻の傾向があったことから、WiFi機能の実装で手一杯でそこまで調整の手が回らなかったのかなぁ...。などと推測
  • なんでFXじゃなくてTZ
    • WiFi積むなら大型のTZシリーズじゃなくって小型軽量のFXシリーズでしょう、ターゲット層を考えても。
  • 高けぇよ!
    • WiFiなしのベースモデルTZ5が35,000円で買えるのにTZ-50が49,800円てのはさすがにないでしょ....。WiFiチップ&アンテナの原価なんて$15もしませんぜ(たぶんPanasonicクラスだと$10もしないかも!?)
  • メーカー直営オンラインショップ販売のみとか弱すぎ
    • 売る気ゼロ?かなり実験的ハードの色合いが濃いように見えてしまって手を出しづらい。これで「WiFiカメラは普及しなかった!」なんてレッテル張りをしないようにメディア、家電メーカー企画部門等には注意してもらいたいものである。


あと、これは大手家電メーカーの宿命ともいうものだけど『ネット接続型(WiFiでも3Gでも何でもいいけど)時代の新しいデジカメ』というゼロベース思考がやっぱりできてない。iPodがでてきたときに『PC持ってる人専用の新しいオーディオデバイス』を再定義したように、従来ある機能の有無をWiFi搭載にあわせて再定義するほどの勇気は(オンライン直販ショップ限定という弱さを見ても)なかったんだろうなぁというのが悲しいところ。当たり前だけれどそういう割り切りをした1stモデルってのは相当リスキー。本来なら何十億円何百億円という売りが立つ可能性があるカメラなのに、たった数千万円の売りしか立たない失敗作となる可能性があるからだ。

でも、WiFiで静止画しかUPLOADできないならそもそも動画撮影機能は不要だし、アップ後に印刷するんだから「ルミックスプリンター対応(PictBridge)」はなくてもいいし、PicMateサイトにプリント機能があれば「DPOF指定」機能も不要かもしれない。文字焼きこみ機能なんてPCから入れたほうがよっぽどラクだよね。PCと併用して使うようなこのカメラのユーザー層にとって、カメラ内スライドショー機能(音楽再生付)なんて要るの?? 極論を言えばSDカードだって不要かも!? という風に割り切って、もっとシンプルなカメラにならなかったのかなぁというのは欲を言いすぎか...。

終わりに

ちなみにこのカメラの無線機能部分はまさに私の全色で企画していた部分なので色々と言いたいことはあるのだが、さすがに退職後に暴露するわけにはいかないので(笑) あくまでPIEで展示されていたプロトタイプTZ50を触った第三者視点でのレビューとしている。

写真集

102_0354アップ済み写真の閲覧は液晶とドットバイドットで美しい。次の写真へ移る際のレスポンスも1秒程度とわりとさくさく。

102_0352通信中のアイコンがなんともクラシカル。アップ済み写真を閲覧する際に10枚ぶんぐらいまとめてDLするなどしてほしいところだが、残念ながらシーケンシャル。

102_0353アップ先を選べる。5種類

戻るが「ごみ箱」ボタンだったり...

102_0362左カーソルで戻るだったり...

102_0359左カーソルとごみ箱の両方を使う画面なども。ここまでくると記憶不可能。

102_0363このSSID&WEPキー入力は幾らなんでも辛すぎる...。ついにはW-Tボタンまで登場(ズームスイッチ)

※その他の写真はFlickrにUPしておきました
 http://flickr.com/photos/44086034@N00/sets/72157604235692766/

*1:Web連携しないWiFiカメラはニコンとしても2005年に発売しているし、ソニーなども製品を出しているが、ここではWebアルバムとの連携機能を持った製品に限定する