家電メーカーよ、今すぐその時代遅れのUIから脱却せよ
TVのリモコンやデジタルカメラの操作ボタン類は、なんでああも使いにくいものなのか。PCやケータイを使い慣れた層にとっては苦痛以外の何者でもない。商品企画を仕切っているコンサバティブなオヤジどもを今すぐシルバー層向け商品の担当に転向させ、PCやケータイに慣れたユーザにメインストリーム商品のUI設計,リモコン設計を任せるべきだ。
リモコンと画面を行ったり来たり...
家電のUI設計の基本は、もとが1ボタン1機能である。とはいえ多機能化するデジタルTVやDVDレコーダー、デジタルカメラといった機器をこの思想で設計すると、100個はくだらないボタンを備えたリモコンが必要になる。これらの機器は全てディスプレイを備えているため、カーソルキーと決定キーを用意し、PCライクなGUIによる操作体系を加えた。が、ここでどっかの誰かがぶっとんだ間違いを犯した。
『操作回数が少ないことは何を差し置いてもいいことだ』
なんてルールを決めた大馬鹿野郎が居たんだろう*1。いや、決めた当時は非常にスマートな判断だったのかもしれない。ただ一つ言えることは、この2007年においてもまだそんなことを言ってる連中が家電メーカー内にごろごろ居そうである、ということだ。結局どのデジタル家電も、画面に機能名とリモコンのどこを押せばいいかの対応表が並び、リモコン上の正しいボタンを押すことで当該機能が実行される、という使い辛いお作法が出来上がってしまった。
これのどこがマズいのか、なぜ改善すべきなのか。東芝のテレビを題材にして具体例を挙げよう。
EPG画面にて「リモコンの緑ボタン」を押すと表示時間が切り替わるらしい。一見「ワンクリックで切り替わるなら便利じゃん」と思ってしまいそうだが、この操作が恐ろしく使いづらいのである。まずEPG画面を見て、日本語で書かれた機能名(2時間モード)の読解&ボタン名(緑)を記憶し、次に手元のリモコンに視線を落として緑ボタンを探す。最後に緑ボタンに指を置いた状態で画面に視線を戻し、やっとこさボタン操作できる状態になるのだ。
人間の目は上下左右への視線移動は高速に行えるが、前後方向の焦点調整が大の苦手である。リモコンと画面を視線が行ったり来たりすると操作に時間がかかるだけでなく、目も疲れる。人間工学的にもこんな仕様は絶対に避けるべきなのだ。解決策はいくらでもある。先の東芝TVの例であれば、メニューボタンを押すことで「今の時間へ」「日時切り替え」「2時間モード」「番組検索」の4択メニューが表示されてくれれば、リモコンに視線を戻す必要がなくなる。あるいは緑ボタンを探し当てる必要がないぐらい、覚えやすい、わかりやすい場所に置いておくのも一つの手だ。マウスの右クリックボタンがどこにあるか,スクロールホイールがどこにあるかいちいちマウスを見て確認する人はいないだろう。
そもそもキーが多すぎる。カーソル+3つぐらいのボタンで十分!?
Macはたった1つのマウス・ボタンとスクロールホイール。Windowsでも2ボタン&ホイール。ケータイはカーソルキー+3ボタン(決定とファンクションキー2つ)で無数の数の操作をこなすことができる。ガンダム風にいえば『ボタンの数が戦力の決定的な差でないことを教えてやる!*2』てなもんで、ボタンの数を増やせばいいってもんではない。松下のDVDレコーダーなどはボタン数を減らしたことを売りにしているようだが、「見たときに迷いません」ってそういう次元の問題じゃぁない。折角画面があるんだから「リモコンは見ずに操作できます」を売りにすべきなのだ。リモコンは見ずに画面だけ見ていれば操作できる数までボタン数を絞り、如何に軽快に画面側のGUIを描画・選択できるかを突き詰めていってほしいものである。
例えばこんな感じのリモコンとか。下手絵で申し訳ない、美術はいつも2だった....orz わかりにくいけど右側面のくぼみがボタンだ。カーソルキーはipodやDIGAみたいにぐるぐる回ってくれてもいい。手がいびつな形なのは気にしないでほしい、美術スキル2ってのはそういうもんだ。
そんなリモコン使いにくい! と声を上げる人も出てくるだろう。実際にソニーが似たようなコンセプトのリモコンを出して成功しなかった事例などを挙げて。コメント欄に異議ありとのコメントをいただくこともあるだろう。だがソニー(BRAVIA)の事例は既存TVの操作体系に、シンプルリモコンを後付けで投入したがゆえの失敗だと考える。リモコンを画面に向けるだけでLightbox.js風にふわりと操作メニューが浮かび上がり、カーソルキーだけでボタン式と同等のレスポンスタイムを実現できることを証明するDEMOを作ってみれば、固定概念も変わるかもしれない。
リモコンを向けた際に表示されるイメージだが、こんな感じ。ショボーーーい絵だがそこの突っ込みはなしで。美術2の限界だ。
絵1
絵2
テレビの絵をバックに半透明のこんなナビゲーションがオーバーレイ表示される感じだ。リモコンを向けると絵1が表示され、カーソルキー左を入力するとデータ放送に。カーソルキー上を入力すると絵2の画面に瞬時に遷移。左右カーソルキーで音量調整ができる。上カーソルキーを2連打入れるとミュート(消音)がONになるというわけだ。
前回の操作をこれっぽっちも記憶しない
リモコン&GUIの問題に加えてデジタル家電のUI共通のダメダメポイントをもう一つ。
「モードを記憶する」ってことをしない
つまり、家電メーカーが決めたデフォルトの表示方式を変更できない。具体例には事欠かない。テレビのEPGにおいて、ジャンル表示を愛用しているにも関わらず、いつもEPGボタンを押して表示されるのは時系列順表示だ。デジカメの撮影済み画像確認は常に「最後の1枚を全画面で表示」である。お陰で4枚サムネイル表示が好きな私は毎回ズームダウンボタンを押さなくてはならない。DVDレコーダーの録画済番組リストなんかもソート条件を保存してくれない。俺は時系列順じゃなくてジャンル順にしか見ねぇんだって!!
想像してみてほしい、あなたのiPODがいつ起動しても「VIDEO」「MUSIC」の選択画面に戻されてしまう状態を...。悲しいかな、これがデジタル家電の常識なのである。
まとめ
おっと、家電UI愚痴大会状態になってしまった。如何にデジタル家電のUIってのは練られてないかおわかりいただけただろうか。PC,ケータイ文化に精通し、ゲームを含めて多種多様なアプリケーションを使い込んだ若い人間が陣頭指揮を取ったデジタル家電が発売されることを切に希望したい。できれば今勤めてる会社から(笑)
とはいえ、お偉方はUI、UIと叫ぶものの現場ではリモコンやUI(を描画するソフトウェア)に根本的に手をいれる暇も金もない、という状態で突っ走っているのが現状だ。新しい機能が付きました、じゃぁリモコンに1個ボタンつけといて...ってなればまだいいほう。先の東芝TVの例に出したように、どこかの画面にちょこっと「緑を押すと○○機能が使えます」とだけ文字を入れて終了、てなパターンがほとんどである。
現実問題として、AppleみたいなUI重視の新参メーカーがぶっとんだUIの商品を引っさげて参入でもしてこない限り、現場のコリ固まった頭をほぐすのは難しいのかもしれない。私にできることはこういった場で警鐘を鳴らし続け、ニッポンのBlogosphereから少しでも賛同の声を集めて現場の人間を振り向かせることぐらいなのである。
※実際はTVのリモコンから数字キーを省いてしまうと目の不自由な方が操作できないなどの問題がある