機能やボタンが多すぎ!! 使いにくいUIのデジタル家電が発売されてしまう本当の理由

一昨日メディアの方とランチしながらふと話題になったのが「今の家電メーカー製デジタル家電って機能ありすぎてわかんないよね」という話で、先に書いたRSSリーダーの話にも通じる。

まったくもってその通りなんだが、じゃぁ「なぜ・どうしてそうなっちゃったの?」を紐解くと、わりとシュールな要因が浮かんでくる。

ズバリ言ってしまうと既存機能に上乗せする企画は通すのが簡単だし、リスクが少ないからだ。多少使いにくくてもそれが売れない決定的理由にはなりづらいことから、(売れなかったときの)責任を問われる立案者・決裁者ともに「多少複雑になってもかまわず機能を上積みしていくこと」は保身のためを考えるとリスクが少ない手法というわけだ。逆に削ることは、安定した大企業の会社員としてはものすごい勇気がいる。下手すりゃ前モデルで20%あったシェアが5%とかに落ちてしまう可能性も高いわけで、そんな企画を立案した者(担当者)・通した者(決裁者)への風当たりが強くなることは避けられない。

結果、煮ても焼いても食えないUIのデジタル家電が出来上がってしまうのである。その昔のmixiデザイン変更事件は記憶に新しいが、ある程度の血を流さなければイノベーションは起こせないという前提で挑める組織を作っていかないと、進歩が止まってしまう。Appleが「PC(しかもWinXP SP2以降!)がないと使えないオーディオ機器」という割り切りを持ち込んだときにも、国内家電販売の現場では相当な混乱があった。パソコンを持っていないと返品、OSがXPじゃないと返品、SP2にUpdateできないと返品、というものすごいリスクをはらんだ商品だったのだから。Apple社員じゃないので想像でしかないが、初期の返品率は相当なものだったのだろうと想像する。それでも割り切って商品化したからこそ、iTunesを組み合わせた使い方を訴求することができ、結果的に今のシェアを築けたのだろう。


家電量販店に並ぶDVDレコーダーにはいまだにアナログTVチューナーが載っているし、RCA入力(俗に言う赤白黄ピン入力)やらS端子入力なんてものも残っている。別にこれらの機能がいらないと言っているのではなく、思い切ってあまり使わない機能を省いてシンプル化する、或いは新機能を搭載して旧機能をばっさり切るような企画をしていかないとデジタル家電がどんどん使いにくくなっちゃうよね、という話である。DVDレコーダーの例を具体化してみよう。高度な番組検索機能を搭載することで、新聞のラテ欄時代から引きずっているあの忌まわしく使いにくい旧態然とした番組表機能を削ってしまうとか、そういう割り切り&コンセプト作りのできる家電メーカーが現れてほしいのだ*1。大手家電メーカーができないのであれば、中小の家電メーカーがこういった取り組みをしていかないと、進歩のスピードが遅くなってしまい、結果的にエンドユーザーの生活がなかなか便利にならないのじゃないだろうかと危惧している。


家電ベンチャーを立ち上げた身としては、「機能を増やす」ことではなく「機能を減らす」ことでの使い勝手向上を目指すことで、大手メーカーにできないイノベーションを創出して行きたいと思う次第である。そんな製品作りに共感して、是非一緒にやりたいと思う猛者は今すぐメールを! 人材鋭意募集中です(マジ



※今日、家電ベンチャーの先輩であるPTP社の有吉社長にお会いしたが、まったく同じ意見を持っておられ、課題認識は共通しているなぁと感じた次第。実際大手家電メーカーの中の人に聞いても同じ課題認識を持っているけど、変えられないんだよねぇ....

*1:実際にはSONY CoCoonやNEX AXシリーズなどラテ欄形式番組表を切り捨てたレコーダーは過去に存在した