就職活動ではみんな「商品企画」希望っていうけど企画職能はツブシが効かねぇぞ!

就職活動はそろそろ内定なんか出ちゃったりして落ち着いてくる頃である。その次は具体的にやりたい仕事を決めていくフェーズに入る企業なんかもあったりするんで(秋頃とかかな?)、そのへんの予備知識にでもなればと今回は家電メーカーにおける企画職能について述べてみる。前回の就職活動ネタがわりと好評だったのと、UIEJapan社の人員追加募集があったようなのでそのへんを絡めつつお送りする。
職能ってのは区切りが難しい。会社によっては「技術」と「事務」しかなかったりもするらしい。実際には「開発」「研究」「企画」「デザイン」「マーケティング」「営業・販売」「その他諸々の本社機能(人事,経理,財務,知財,広報etc)」あたりがメジャーどころだ。業種によっては「SE」「SI」「ITアーキテクト」みたいなIT系職種が細かくわかれている会社もあれば、「営業技術」とか「エバンジェリスト」みたいな学生さんには理解不能な職種が並んでいる会社もある。

私の就職活動時はみーーーんな揃ってこう言ってた。「商品企画希望です。でも入社後すぐには担当できる仕事でないのはわかっています。ですが、何年か後にはぜひとも...」

で、まわりの人間がそういう就職活動をしているのを聞いていたので一発勝負に出た。『いいから企画やらせろ、でなきゃおまえの会社にはいかねぇ。どうせ若者とかネットのことは調査会社の結果ぐらいしか知らねーんだろ?雇ってくれりゃぁ俺がすげー企画をブチ立ててやるぜ』てな意図の内容を精一杯の謙譲語で伝えてみたのである。結果、入社1年目から商品企画をごりごり書いて今日に至る。

思い起こすと学生時代、「開発」は企画の命令でただモノを作る作業者、「営業」はお客にへこへこして契約を取ってまわる作業者で、「研究」と「マーケティング」は何やってるかよくわからなくて、クリエイティブな仕事をしていそうな職能は「企画」と「デザイン」だけのイメージがあった。デザイン職能は経験者のみ、芸大卒のみ、といった特殊な採用形態であることがほとんどであり、そもそもゲイジュツってなにそれ、食えるの?状態な私からは無縁のものであった。多くのほかの就職活動者にとっても同様だったろう。結果、クリエイティブ=企画、それ以外=誰かの下僕の労働者,冴えないサラリーマン....そんな固定概念を持ってしまっていた。

また、よくわからないデマが出回るのも就職活動時期の特徴。「うちの大学(3流(笑))からは企画職能は希望しても通らない」「東大京大には企画職能限定での募集が来ている」「会社にはいったら東大京大出の企画職能者からこきつかわれるんだ」なんて話もあった。OB懇談会などで話をしにくるOBが皆して開発職能だったことなどから、想像ででっちあげた話なのだろうけれども。

閑話休題。本題は「そんなに企画っていいものか?」ってことと「企画にだって悩みはあるんだぜ」ということだ。

まず、「営業」や「開発」を何年も経験して下積みを重ねて企画へ、というルートが基本である。で、私のようにそれをすっ飛ばした人間に何が待っているかというと、沢山の下積み開発者の中から選び抜かれたえりぃとオジサマ達のなかにぽんと放り込まれて、揉まれる。真っ向勝負を挑む事はそもそも求められていないのだが、彼らを論破できるだけの頭の回転速度を身に付けること、そして彼らにはない「何か」を自分の中に見つけて1年以内に磨き上げる努力が必要とされる。これって結構大変。あと、細かいことだが後輩が入って来る率も低いので、いつまでも下っ端でいつづけなければいけない可能性もある。

それから、誤解されやすい最大の問題は「企画ってデスクに向かって一人で黙々とアイディア練る仕事なんじゃないの?」って幻想だ。実際は80%会議をしてる。感覚的には、新入社員がなれる全職能のなかで、一番会議時間が長いんではなかろうかと思うほど。前日の夜作った資料を朝9時から手直しして10時-12時の会議に臨み、昼飯食って13時-14時で別件会議、15時までの間でまた別の資料を作って16時から17時半まで会議、その後先輩上司とディスカッションしつつ翌日の会議資料を作って.....みたいなスケジュールは日常茶飯事である。思うに、リクナビは企画職能を今日から「会議職能」とか「調整職能」って書き換えたほうがいいかもしれない


勿論、一日ひたすらネットで調べ物をしながら企画を練る日だってある。だが大半はその練ったアイディアを具現化するために社内外各所と調整し、会議を繰り返して案を現実のモノへと変えていくのだ。そんなわけで、先日書いたコミュニケーション能力がない、あるいはコミュニケーションを得意としないと思っている人には向かない、っていうか無理。さらに追い討ちをかけるように、面白い企画であればあるほど、誰も理解してくれない世界が待っている。高校のクラブ活動とは違うのだ。一人が良いと思っただけでは企画が実現することはない。何十人という関係者を説得してまわり、あの手この手で実現にこぎつける努力が必要だ。はっきり言ってめちゃくちゃ泥臭い仕事である。

ただ、ここでうまくいけば、何十人何百人という開発者をコントロールして、自分の脳内に浮かんだ何かを形にしてゆけるやりがいがでてくる。「開発」は企画の命令でただモノを作る、という意見を以前持っていたと言ったが、自分の手のひらの上で全てを動かしている感覚が持てないといったら嘘になる。現実は作曲者であって演奏者ではなく、有能なミュージシャン(開発者)との協力関係があってこそ、いい演奏(製品)が出来上がるのだが。

さて、こう書くと「なんだかんだいっても企画希望かなぁ俺」ってな人も出てくると思うので最後に痛ぁーーーーい一言を。

企画職能って、ツブシが効かなくて転職ムズいよ?

昨今のWeb2.0流行は企画者には世知辛い。コードが書けなきゃ話にならんと来たもんだ。Googleの求人案内を見てもエンジニア、エンジニア、エンジニア。ぽつりとあった企画系求人は「プロジェクトマネージャーとしてXX年以上の経験があること」なんて条件付き。Life is beautifulの中島さんが新規求人( @ UIEJapan)を出されたとのことで見に行ってみても、職種はやっぱりエンジニアだ。転職サイトなんかを眺めてみても、企画職能で求められているのはアイディアを出すことではなくてプロジェクトマネジメントをすることのようなもので、実質上PM経験がない30歳前後での転職は非常に難しいのが現状だ。入社のときから転職のことを考える学生さんはいないかもしれないが、企画職能ってのはツブシが効かない仕事なんだってことを頭の片隅にでも入れておくとよいだろう。


ま、そうは言っても今の仕事は最高にエキサイティングで楽しいわけなんだが。



で、話ついでにWebベンチャー系求人をぽつぽつ見ていたら、はてなでは「サービスディレクター」なる職種を募集しているらしい。これはもしかするともしかして企画系職能でも応募可能かもしれない。増資して、バイデザインあたりとアライアンスを組んでUIEngineを搭載したネット通販限定のGeek家電みたいなのを売る、なんて展開でもするなら「はてな入りたい」なんてことになるかも知れず。求められている人材かどうかは別にして(笑

まーそれは冗談としても、誰かGeekによるネット依存症人間のための家電を作るようなトライアルをしないものだろうか。大手家電メーカーに求めて出てくるモノではないと思うので、ここは一つ勢いのあるITサービス系企業さん辺りで一つ。