全世界の家電メーカーが力を合わせてもApple1社に勝てなかった日

ラスベガスで開催されている世界最大の家電ショーであるCES。このレポートを綴ろうと考えていたのだが、完全にやる気を失った。世界中の家電メーカーが集まり、新製品やコンセプトモデル展示で話題性を競い合ったこの日、数百キロ離れたサンフランシスコでAppleたった1社が主催するMacWorld2007にて発表された、たった2つのデバイスによって*1、CESは話題を完全に掻っ攫われてしまった格好だ。

言葉がない、というかグゥの音もでない。誰が何といおうと、完敗である。家電メーカーの中の人達が一番良くわかっていることだろう。ポータブルの動画・音楽プレイヤー、デジカメ、ビデオカメラ、携帯電話、PDA、カーマルチメディア、これら全ての機器群*2を担当する家電メーカー社員にとって、今日は眠れない夜になるはずだ。当分の間「今君たちが開発してる機器、それってiPhoneが普及しても売れるの?」という上層部からの責めを嬉しく思うMっ気のある人を除いては。


iTV改めApple TVはそれほど目新しいデバイスではない。数日前にMicrosoftが発表したXBOX360 HDTV-STBなどと基本的に出来ることは同じだし、AvelLinkPlayerなど近いコンセプトの機器はPCユーザの間では数年前からそれなりに知られ、売られつづけてきたものだからだ。

だがiPhoneは違う。目新しいデバイスを何一つ使うことなく、「こんなのあったらいいよね」と誰もが思う機器を如実に実現させたトータル・マネジメント能力は驚愕に値する。

PCとWebの世界は驚くほど進化が早い。その世界で叩きのめされながらも必死に生き延びてきたAppleが、コンピューターメーカーとしての発想で作ったポータブルAVC*3バイス。対する進化の遅い家電の世界を生きてきた家電メーカーにとっては、とてもじゃないがAppleのようなデバイスを作ることはできないだろう。勿論、家電の世界には家電の世界の難しさがあり、Appleが冷蔵庫を作れるかというと、作れない。

だが、AVC系デバイスについてはもう、世界を隔てる壁など存在しないのだ。家電メーカー社員ってのが、何となく江戸時代末期の武士のように思えてきた。

  1. 宣教師ゲイツ来訪
  2. 鎖国強化(MSのCodecを使わないなど)
  3. 産業革命を知らずに過ごす
  4. 黒船来航(1回目 iPOD)
  5. 黒船来航(2回目 iPhone) ←いまここ
  6. 開国調印
  7. 大政奉還
  8. 武士失業 ←予想される未来


今世界中の個人向け家電市場で絶対的な力を持っている企業は、奇しくも「白い筐体を作っている2つのメーカー」のように思う。旧来の家電メーカーは、エンターテインメント分野からは手を引くべきタイミングなのかもしれない。手を引きたくないメーカーは、PC&Webワールドのスピードに追従できるような体制を作るか、Apple任天堂が取りに行かない(捨てている)セグメンテーションのユーザに特化したニッチ家電を作るしかないのかもしれない。具体的にはシルバー層向けAV機器であったり、安さで勝負するチープ・モデル群などだ。

勿論私は「Web家電」なるものの実現に向けてポジティブに進んで行く。が....今日はもうリクナビNEXTでも見ながら寝るかね(www

※草木も眠る何とやら、LasVegasはAM3:00 now...

*1:まぁ実際は色々と色々発表されているのだが

*2:及びこれらの機器群との連携を担当しているその他機器群に関係する部門も含まれるだろう

*3:Audio, Video, Communication